コラム Column
2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立。契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っている。
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【相談】私道の所有者が通行を認めない場合はどうすればいいか。
戸建て不動産の購入を検討しています。
しかし隣接する私道の所有者が通行を認めてくれないという情報を耳にしました。
なぜ私道を通ることができないのか、通れるようにする方法はないのか教えてください。
【回答】私道は許可がなければ通ることはできませんが、通行権が認められれば通ることができます。
原則として、私道は個人が所有しているため通るには許可が必要です。ただし、私道であっても法律により道路とみなされていたり、地役権などの法律上の通行権が発生している場合などでは、通行権が認められます。購入前に通行権が認められているかどうかを確認するようにしましょう。
当記事では現役の弁護士が
について詳しく解説いたします。
公道は一般交通の用に供されている道路のことであり、その多くは、国や地方公共団体が所有する土地上に設けられています。当然ながら、公道は誰でも通ることができます。
しかし私道は、許可もしくは権利がなければ通ることができません。
なぜ通ることができないのかというと、私道は個人が所有地上にあるからです。個人の所有地は、その所有者が自由に管理できます。所有地内に誰を入れるか、通ってよいかも、所有者が自由に決められるのです。そのため、個人所有地上に設けられた私道については、第三者である他人が勝手に通ることはできないのです。例えば、教習所内の練習コースは私道なので、部外者が勝手に走ることはできません。
所有者以外の第三者が私道を通るためには、所有者の許可もしくは通行する権利が必要になります。
以下で私道を通行する権利について解説します。
上記の通り、私道は個人所有地に設けられるものであり、原則として第三者に通行権はありません。ただし、私道によっては、建築基準法などの法律により道路(公道)とみなすものとされている場合があります。道路は、一般の往来や緊急車両等の通行のために欠かせないものです。建築基準法では、一般の往来や緊急車両等の通行を確保するために私道等の個人所有地であっても道路とみなす場合があることが定められています。
こうした法律によって道路とみなされている私道については、所有者の許可を得なくても自由に通行することができます。
位置指定道路とは、建築基準法42条1項により、行政庁が道路として指定した道路のことを指します。行政庁が同条により道路と指定した場合には、私道であっても「道路」となり、私道の所有者でなくとも自由に通行することができます。
位置指定道路と同様に、建築基準法42条2項では、行政庁が道路として指定した部分を道路とみなすと定められています。これは、いわゆる「セットバック」を指します。建築基準法において、「道路」とは幅員4メートル以上の必要があると定められており、幅4メートル以内の道路に接道している土地について、行政庁が道路として指定して道路とみなすことができると定めているのです。このセットバック部分の土地は道路とみなされますので、個人の所有地(私道)ですが、第三者も自由に通行できます。
上記の通り、私道であっても位置指定道路やみなし道路など、建築基準法等の法令により道路とみなされており、第三者でも自由に通行できる場合があります。私道の所有者が通行させないと言っても、法令により道路とみなされていれば、自由に通行できます。
私道が、こうした位置指定道路等の法令により道路と指定されているか否かは、その私道の所在地を管轄する役所に問い合わせることで確認できます。
上記の建築基準法等の法令によって道路と指定されている場合のほかに、私道の所有者と契約を交わしたり、私道を使うことが必要不可欠である場合などにおいて、法律上の通行権が認められるケースがあります。
以下で通行権の種類について解説していきます。
他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地といいます)の所有者は、その袋地を囲んでいる土地(囲繞地(いにょうち)といいます)を通ることが民法210条で認められています。かつては、これを囲繞地通行権と表現されていましたが、現在の民法下では、「公道に至るための土地の通行権」といいます。
この通行権は袋地の所有者にしか認められません。また、その通行権の内容としては、「必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」とされていますし、その通行する所有者に対して償金を支払う必要があるという制約もあります(民法211、212条)。
公道に至るための土地の通行権が認められるかどうかは、その土地の位置によりますので、購入しようとする不動産の位置関係を地図によって確認するようにしましょう。
囲繞地通行権については、コラム「囲繞地通行権とは何か。自動車の通行が認められるポイントを解説」をご参照ください。
地役権とは、他人の土地を自己の土地の便益の供する権利のことを言います(民法280条)。地役権の目的を通行と設定した場合には「通行地役権」と称されます。
通行地役権は、通路敷地(要役地)の所有者と、その通路を自己の土地(承役地)のために使用する所有者(通行者)との間の合意により設定することができます。
通行地役権は物権であり、所有権や抵当権と同様に登記することができます。登記された場合には、地役権を有する人(承役地所有者)から当該土地を譲り受けた第三者は、要役地の所有者(私道の所有者)に対して、通行地役権があることを主張することができます。
したがって、通行地役権が設定されている場合には、私道所有者の許可がなくても指導を通行できることになります。
通行地役権が設定されているかどうかは、不動産登記簿を見れば確認できます。また、長年にわたって道路として使用されている場合などでは、地役権の時効取得も考えられますので、登記されていない場合には現地の状況も確認するようにしましょう。
通行地役権に関連したトラブル事例については、コラム「【私道トラブルの判例を紹介】妨害排除請求について弁護士が解説」をご参考ください。
債権契約上の通行権とは、私道の所有者と賃貸借契約や使用貸借契約を結ぶことで、私道の通行が認められる権利です。これは、契約上の権利ですので、他の第三者には効力がありません。
したがって、通行権を有していた所有者(契約当事者)から、その土地を譲り受けたとしても、当然に通行権を主張することはできません。この場合には、改めて私道の所有者と交渉し、通行権を認めてもらう必要があります。
私道は基本的に所有者の許可がなければ通行することはできません。
しかし本記事でご紹介したように、建築基準法等により私道であっても道路と指定されている場合や、通行地役権が設定されていたりするなどして、通行が認められることもあります。
しかし相談者様のご事情によって得られる通行権はどれか、私道の所有者と何を交渉すべきか、民事調停や訴訟は必要なケースであるかなど、多くの専門知識が必要となります。
もし私道のトラブルに遭ってしまったら、まずは弁護士などの専門家に相談してトラブル解決を図ることをおすすめします。
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