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相続トラブルにならない遺言書の書き方【弁護士の例文あり】


相続トラブルで重要になるのが遺言書の存在です。

遺言書によって相続トラブルを防ぐことができますが、遺言書の内容によってはむしろ無用なトラブルを招いてしまう場合もあります。

また、遺言書が正しく作成されていないと、遺言書の効力が無効になってしまうこともあります。ご自身が亡くなったあとの出来事なので、遺言書が無効になってしまう事態は絶対に避けたいところです。

つまり遺言書は、希望通りの相続がスムーズにできるように、正しく作成することが重要になります。

当記事では現役の弁護士が

  • 遺言書の種類
  • 遺言書の正しい書き方
  • 遺言書の例文

などについて詳しく解説いたします。

遺言書とは?

遺言書とは、自分の死後に、誰にどの程度の財産を相続させるか、ということを明確に記した文書のことです。遺言書は民法でさまざまな書き方などが定められており、民法の定めが守られていない遺言書は無効となりかねません。法律的に有効な遺言書を作成するために、その決まりをしっかりと学びましょう。

遺言書には3つの種類がある

遺言書の書き方には、普通方式と特別方式があります。

ここでは普通方式の自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類について、それぞれ解説します。

特別方式は災害などで生命の危機に瀕した際に使われる方式です。極めて例外的な方式ですので、本記事では扱いません。

遺言書作成時の注意点(遺留分)

以下では、公正証書遺言等の普通方式の遺言書の書き方を解説しますが、その前提として、遺言者は遺言の内容を決める必要があります。

遺言書では、誰にどの財産を相続させるのかということを書くことになり、その内容は、遺言者が自由に決められます。ただ、ご自身の法定相続人の「遺留分」に注意する必要があります。

遺留分とは、法定相続人の相続への期待を最低限保護するための制度です。兄弟姉妹以外の法定相続人に認められます(民法1042条)。遺言者の直系尊属のみが法定相続人である場合は法定相続分の3分の1、それ以外の場合には法定相続分の2分の1が遺留分として認められます。

したがって、例えば、遺言で「法定相続人ではない第三者に全財産を相続させる」というような内容の遺言を作成してしまうと、法定相続人がその第三者(受遺者といいます)に対して、遺留分侵害額請求を行う可能性があります。つまり、遺留分を侵害する内容の遺言を作成してしまうと、無用のトラブルにつながりかねないというリスクがあります。

遺言を作成する際には、遺留分に配慮しましょう。法定相続人の中にどうしても相続させたくない人がいるなどの事情があるときは、遺言の中で付言事項として、なぜ相続させたくないのかを記しておきましょう。ただし、付言事項には法律的な効力はなく、遺留分を有する法定相続人の遺留分侵害請求を止めさせることはできません。

公正証書遺言とは

法律的に一番安全であり、無効になるリスクが低いのが公正証書遺言です。

法律の専門家である公証人が遺言者から遺言の内容を聞き取りして、その内容通りの遺言書を公正証書として作成してくれます(民法969条)。そのため、不備などで無効になるリスクがほとんどないと言えます。

公正証書遺言の作成手続きにおいては、遺言者以外に2人の証人が必要になります。ただし、次の方は証人にはなれません。①未成年者、②推定相続人及び受遺者(注:その遺言によって遺産を譲り受ける予定の方のことです)並びにこれらの配偶者及び直系血族、③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人です(民法974条)。特に注意すべきは②です。公正証書遺言の証人は、相続する予定の方やその親族の方にお願いするのは避けましょう。証人として適当な人がいない場合には公証役場にお願いして手配してもらうことも可能です。

また、公正証書遺言は基本的には公証役場で作成することになります(例外的に遺言者が入院している病院などの施設に公証人が出張して作成する場合もあります)。

公正証書遺言は、遺言書を確実に残したい場合には、一番おすすめです。

手続きが不安な方は弁護士に依頼して進めることも可能です。依頼した弁護士は証人の1人にもなってもらえます。

公正証書遺言の手続きの流れ

手続きは概ね以下の通りです。

  1. 相続の方法(遺言の内容)についてまとめる
  2. 公証役場へ電話して予約し、公証人に相続(遺言の内容)の希望を伝える
  3. 公証人から必要書類を伝えられるので、予約日までに用意しておく
  4. 予約日に2人の証人と公証役場へ向かい、公証人に遺言書を作成してもらう

公正証書遺言の必要書類

必要書類は遺言内容によって変わります。

公証役場によって変わることがあるので、事前に連絡をして確認することをお勧めします。

<想定される必要書類>

  • 本人確認資料(遺言者本人の印鑑登録証明書、運転免許証・マイナンバーカード等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ)
  • 遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本。
  • 受遺者(遺言者の財産の遺贈を受ける者)の住民票、受遺者が法人の場合はその法人の登記簿謄本をお持ちください
  • 遺言者の財産に不動産がある場合にはその不動産の固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書、不動産の登記簿謄本
  • 遺言者の財産の中に株式等の有価証券や預貯金がある場合には、その種別とだいたいの金額を書いたメモ
  • 証人の確認資料(証人の住所、職業、氏名、生年月日のわかる資料)
  • 遺言執行者の特定資料(相続人又は受遺者以外の方を遺言執行者とする場合に、その方の住所、職業、氏名、生年月日が確認できる資料)

公正証書遺言の費用

公正証書遺言は費用がかかります。

必要な費用は遺産の総額によって異なりますが、概ね2~5万円程度です。遺産総額が1億円を超える場合の費用は5万円を超えます。詳しくは以下のページをご覧ください。

日本公証人連合会ホームページ

自筆証書遺言の書き方

自筆証書遺言は、すべて直筆で記載する形式の遺言書です(ただし、財産目録はパソコン等で作成して印刷したものでも構いません)。

作成後は自宅や銀行の貸金庫などで遺言者が自ら保管しておくことが多いです。2020年7月10日以降は法務局で保管してもらうことも可能になりました。

紙とペンと印鑑さえあれば誰でも簡単に作成できるため、この形式を利用する人は多いです。

自筆証書遺言では、遺言者が亡くなった後に、遺族が家庭裁判所に遺言書を提出し、検認(法定相続人立会いの下で家庭裁判所が遺言を開封する)という手続きを行うのが原則です。ただし、検認は遺言の有効・無効を判断する手続きではなく、検認をしたから必ず有効、検認をしなかったから必ず無効になるというものではありません。なお、法務局で保管してもらっている場合には検認の手続きは不要です。

自筆証書遺言は遺言者本人のみで作成されることが多く、不備があるなど法律上の要件を欠いてしまい無効になってしまうリスクがあります。

自筆証書遺言の要件

自筆証書遺言の一番のリスクは、法律上の要件を欠けてしまっていて、遺言書が無効になってしまうことです。

遺言書が無効であると気付くことができるのは、大体の場合、遺言者が亡くなった後になってしまいます。

遺言を作成する立場としては、遺言が無効になることは絶対に避けたいところです。

ここでは自筆証書遺言の要件及び、無効になってしまう例について記載させていただきます。

<自筆証書遺言の要件>

  • 遺言者本人が自筆で書く(財産目録は印字したものでも構いません)
  • 日付を正確に書く
  • 氏名を正確に書く
  • 自書による署名と押印(複数枚の場合は割印などがあったほうが良いです)
  • 訂正部分は訂正箇所を明記して訂正印を押印する必要があります。

<遺言が無効になってしまう例>

  • 代筆(過去の判例では添え手で記したもので有効とされた事例がありますが、基本的には避けたほうが良いでしょう)
  • パソコンでの作成(財産目録のみ可能です。財産目録以外は「自書」(自ら書く)が必要です。
  • 音声の録音を遺言として扱う(民法では録音、録画方式の遺言は認められていません)
  • 作成日を「吉日」など省略する(過去の判例で「吉日」と記していた遺言は日付の記載を欠くものとして無効と判断されたものがあります。)
  • 修正テープを使う(修正箇所には必ず修正した旨を記しと訂正印を押印しましょう)

自筆証書遺言の例文

遺言書の作成例を記載します。

遺言書

第1条

 遺言者は、妻○○○○に、別紙財産目録記載の財産の内、不動産を相続させる。

第2条

 遺言者は、長男○○○○に、別紙財産目録記載の財産の内、株式を相続させる。

第3条

 遺言者は、長女○○○○に、別紙財産目録記載の財産の内、預金を相続させる。

第4条

 遺言者は、別紙財産目録記載のない、その余の財産については、すべて妻○○○○に相続させる。

付言事項

 次男○○○〇については、遺言者の生前において、次男が20才のころに勝手に家出して以後、全く連絡が取れない状態が続いており、他方、妻、長男、長女は、遺言者が年老いてからも献身的に身の回りの世話をしてくれたりしていた。そこで、遺言者としては上記のとおりに妻、長男、長男に相続してもらいたいと考えており、次男には遺留分を行使しないでほしいと希望する。

令和〇年〇月〇日

○○○○ ㊞

(財産目録)

1、不動産

所   在 東京都○○○区○○○番地

家屋番号 ○○番○○

種   類 居宅

構   造 木造瓦葺2階建

床 面 積 1階○○平方メートル、2階20.00平方メートル

2、株式等

○○証券 ○○支店 口座番号○○○○○○

内訳

 ①株式会社○○ 普通株式 1000株

 ②○○株式会社 優先配当株式 2000株

3、預金

⑴○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○

⑵○○信用金庫 ○○支店 定期預金 口座番号○○○○○○○

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言書を封じて封印を押し、これを公証人と証人2人に提出し、公証人らに遺言書の存在を保証してもらう書き方です。

遺書の内容を絶対に秘密にしたいという方にお勧めの形式です。

しかし秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に方式不備で無効になるリスクがあるうえ、公証人の認証を得るのであれば公正証書遺言を選択する方が多いので、自筆証書遺言や公正証書遺言と比べてほとんど使われていません

秘密証書遺言は、基本的に内容を確認するのは遺言者本人だけであり、自筆証書遺言と同様に要件を欠いて無効となるリスクがありますので、法的に有効な遺言書を残したいのであれば、手間を掛けてでも公正証書遺言を選択することをお勧めします。

まとめ

ここまで相続トラブルにならない遺言書の書き方について解説してきましたがいかがだったでしょうか。

遺言書は遺族へ渡る財産を大きく左右するものですが、正しく作成しなければ効力を発揮しません。そして遺言書は自身が亡くなってから活用されるものなので、記載内容に誤りがあってもそれを修正することはできません。

遺言書の作成を検討されている方は、本記事を見て遺言書の書き方について学び、ご自身のために役立ててください。

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