コラム Column

親族が土地を生前贈与していたら遺留分はいくら請求できるか


【相談】遺留分の算定において、生前に贈与された土地の評価を行う場合、評価基準時はいつになるのでしょうか。また、その評価方法はどうなるのでしょうか。

私の母が先日亡くなりました。相続人は、長女である私と長男である私の兄の2人です。

母は、約10年前に亡くなった父より、自宅周辺の複数の土地を相続していましたが、5年前に、ほとんど全ての土地を私の兄に贈与していたことが分かりました。母には、それらの土地の他には、見るべき財産はありません。

そのため、私は兄に対し、せめて遺留分侵害額を支払うよう求めています。

兄は、私に対し、遺留分侵害額を支払うことについては、仕方がないと考えているようですが、生前贈与された土地の評価額について揉めています。

約3年前から自宅周辺を含む地域で大規模な開発工事が行われており、自宅周辺の土地の評価額は、5年前と比べて跳ね上がっています。

兄は、土地の評価額について、贈与があった5年前の評価額によるべきだと主張していますが、私は、現在の評価額によるべきだと主張しています。

私と兄の間で合意できなければ、裁判所の判断を仰ぐことになると思いますが、その場合、土地の評価額について、どのように判断されるのでしょうか。

【回答】生前贈与された土地の評価基準時は、「相続開始時」になります。評価方法については、公示価格、固定資産税評価額、路線価、複数の不動産業者に不動産の査定を依頼してその中間値を採る等の方法が考えられます。

生前贈与された財産の評価基準時は、贈与があった時ではなく、「相続開始時」になります

土地の評価方法については、公示価格、固定資産税評価額、路線価などの客観性の高い資料に基づく方法、複数の不動産業者に不動産の査定を依頼してその中間値を採る方法、不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法などが考えられます。

遺留分侵害額請求において不動産評価はどう算出できるか

そもそも遺留分制度とは何か

遺留分制度とは、被相続人が有していた相続財産について、その一定割合の承継を一定の法定相続人に保証する制度です。

本来、被相続人は自己の財産を自由に処分することができるはずです。

しかし、相続制度は、遺族の生活を保障するためにも存在していると考えられており、そのため、遺言などによっても奪うことのできない最低限の遺産を取得する権利が、一定の法定相続人に認められています

この一定の法定相続人に保障されている、一定割合の遺産を取得できる権利のことを遺留分といいます。

なお不動産の評価方法については、「遺産分割協議における不動産の評価方法」をご参考ください。

遺留分として得られる額の算定方法

遺留分算定の基礎となる財産額は、以下のとおり算定されます。

遺留分算定の基礎となる財産額

=(被相続人が相続開始時に有していた財産の価額)+(贈与財産の価額 ※1)

-(相続債務の全額)

※1 被相続人の生前に贈与を受けたこと等は、「特別受益」にあたり、原則として、遺留分算定の基礎の財産額においてしん酌されることになります。

そして、遺留分権利者の遺留分の額は、次のとおり算定されます。

遺留分の額=遺留分算定の基礎となる財産額×個別的遺留分の割合(※2)

※2 個別的遺留分の割合は、次のとおり算定されます。

個別的遺留分の割合=民法1042条所定の遺留分の割合×法定相続分の割合

たとえば、本件で、遺留分算定の基礎となる財産額を2億円とした場合、ご相談者の遺留分の額は、以下のとおり算定され、受け取ることのできる遺留分は5000万となります

2億円×2分の1×2分の1

=5000万円

生前贈与の遺留分算定における贈与財産の評価方法

生前贈与された財産は「相続開始時」が評価基準時になります

生前贈与された財産の評価基準時は、贈与があった時ではなく、「相続開始時」になります(民法1044条、904条)。

その理由としては、一般的に以下のような点が挙げられます。

  • 遺留分権が具体的に発生するのは相続開始時点である。
  • 算定の基礎となる財産の有無と所在を、最もよく知ることができるのは、相続開始時点である。

生前贈与の遺留分を評価する方法

上述のとおり、評価時期については「相続開始時」になりますが、どのような資料に基づき「相続開始時」の価額を評価するかが問題になります。

まず、公示価格、固定資産税評価額、路線価などの客観性の高い資料に基づき価値を算定することが考えられます。

また、実務上は、複数の不動産業者に不動産の査定を依頼して、その中間値を採るという方法も採られています。

上記のいずれの方法によるかについて、当事者間において合意に至ることができればよいですが、調停や審判においても、合意に至ることができない場合にはどのように判断されるのでしょうか。

調停や審判においても、当事者間で合意できない場合には、裁判所の選任する不動産鑑定士の鑑定評価を基に裁判所が審判することになります。

不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法は、他の方法と比べて、高額な鑑定費用を要するというデメリットが挙げられます。

なお、評価方法の詳細については、従前のコラム「遺産分割協議における不動産の評価方法」をご参照ください。

「相続開始時」が生前贈与における遺留分算出の評価基準時となる

ご相談者の母から長男へ生前贈与された財産の評価基準時は、贈与があった時ではなく、「相続開始時」になります

そのため、調停や審判となった場合には、評価基準時は「相続開始時」として進められます(もちろん、当事者がこれと異なる合意をすることは可能です。)。

しかし、調停や審判において、公示価格、固定資産税評価額、路線価、不動産業者の査定結果などのいずれの資料によるかについて、当事者間で合意に至ることができなければ、不動産鑑定士による鑑定を行って、鑑定評価に基づき裁判所が審判することになります。

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