コラム Column

賃貸借契約が終了したら、保証金は返還される?


【相談】私は、店舗を借りる際、保証金として300万円を差し入れました。賃貸借契約が終了したとき、その保証金は返還してもらえるのでしょうか。

私は、店舗を経営するために、商業ビルのワンフロアを借りています。

賃貸借契約を締結する際、私は賃貸人に対し、保証金として300万円を差し入れています。

この度、店舗を移転することになったため、賃貸借契約を解除し、保証金の返還を賃貸人に求めました。

すると、300万円のうち50万円については権利金として受領しているため、返還する必要はなく、また、残額の250万円については敷金として受領しているため、私の債務を控除した金額を明渡し後に返還すると言われてしまいました。

そもそも、権利金であれば、返還されないのでしょうか。

また、残額について返還される時期は、明渡し後になるのでしょうか。

【回答】名目が何であれ、その金銭がどのような意味で交付されたかを解釈する必要があります。たとえば、権利金の意味で交付された場合には、返還は予定されていません。

権利金は、賃借人に返還されることが予定されていない金銭であるため、賃貸借契約書の文言等から、権利金として授受されたことが明らかであれば、返還されません。

また、残額については、名目は何であれ、敷金の性格を持つことが、賃貸借契約書の文言から明らかであれば、明渡し後でなければ、返還を受けることはできません。

賃料以外の預託金の扱いについて

建物賃貸借契約を締結する際、名目は何であれ、賃料以外の預託金が授受されるのが通例です。

敷金、建設協力金、保証金、礼金、権利金等の名目で差し入れられます。

しかし、その金銭がどのような意味で交付されたかにより、そもそも賃借人に返還される金銭なのか、返還されない金銭なのかが別れます。

そして、賃借人に返還される金銭である場合でも、その返還時期が問題になります。

以下、各預託金について、簡単にご説明いたします。

(1)敷金

敷金は、令和2年4月に施行された改正民法において、定義が規定されました。

敷金とは、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」になります(民法622条の2)。

そして、敷金の返還時期については、次のとおり定められました(民法622条の2)。

ア 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。

イ 賃借人が適用に賃借権を譲り受けたとき。

(2)建設協力金

建設協力金は、ビルやマンションの賃貸借契約に際して、建物建築資金に利用する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭です。

建築協力金は、貸付金の性格があります。

月々の賃料の中から相殺する形で、契約期間内に賃貸人から賃借人へ全額償却を行う等の方法が採られます。

(3)保証金

ア 保証金とは

保証金に法的な定義はありません。保証金にどのような性格を持たせるかは、当事者の意思しだいです。

仮に、当事者の意思が明確ではない場合には、①保証金の額、②保証金以外の預託金(敷金)授受の有無、③担保としての性格づけの取決めの有無、④返還時期等により、判断することになります。

上記の事情に照らして、保証金の名目で交付された金銭を建設協力金や貸金であると判断した裁判例もあれば、保証金のうち一部が敷金で、一部が建設協力金である等と判断した裁判例もあります。

また、保証金の額が、月額賃料に比べて著しく高額である場合には、敷金とは別の目的が差し入れられたと判断される傾向にあります。

イ 保証金の返還時期

保証金の返還時期についても、当事者の合意によって決められます。

契約書の定めがない場合には、たとえば、敷金の性格を持つものは、賃貸借が終了して明渡しを受けたときに返済されます。

(4)礼金

礼金は、賃貸借契約を締結した時に、賃借人から賃貸人に支払われる金銭ですが、返還されない一時金として支払われます。

返還されない預託金という意味で、敷金や保証金とは異なります。

(5)権利金

権利金も、礼金と同じく、返還されない一時金として、賃貸借契約の締結時に賃借人から賃貸人に支払われます。

居住用の賃貸借では礼金、事業用の賃貸借では権利金の言葉が使われることが多いようです。

本件について保証金は返還されるのか?

(1)50万円について

ご相談者は、「保証金」という名目で300万円を交付されたとのことです。

仮に、賃貸借契約書において、50万円については「権利金」としての意味を持つと記載されていなくても、たとえば、「償却される」等と規定されていた場合には、その償却分については、「権利金」としての性質を持つと判断され得ます。

その場合、ご相談者は、50万円の返還を受けることはできません。

(2)残額250万円について

上述のとおり、「保証金」として差し入れた場合において、当事者の意思が明確ではない場合には、①保証金の額、②保証金以外の預託金(敷金)授受の有無、③担保としての性格づけの取決めの有無、④返還時期等により、その金銭の性質を判断することになります。

本件で、保証金以外に「敷金」の名目で金銭の授受がなされた事実がないこと、保証金が賃借人の債務に充てられることが賃貸借契約書において規定されていること、保証金の返還時期が「敷金」と同じく明渡し後となっていること等の事情がある場合には、250万円は「敷金」の趣旨で授受されたと判断され得ます。

その場合には、ご相談者は、明渡しが完了した後でなければ、残額について返還を受けることはできません。

そして、250万円からご相談者の債務(未払賃料、原状回復費用等)が控除された残額のみが返還されることになります。

賃貸借契約書の確認が大切

保証金が変換されるのかどうかについては、賃貸借契約書で保証金についてどのように規定されているのかが非常に重要です。

トラブルを未然に防ぐためにも、賃貸借契約書での保証金の扱いを確認しましょう。

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