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賃貸借契約書におけるチェンジオブコントロール条項の例を弁護士が解説


 【相談】借主である会社の経営者が変わってしまう場合に賃貸借契約を解除することはできますか。

雑居ビルを所有しているのですが、知人に頼まれて所有するビルの一室を知人が経営する株式会社に事務所として賃貸しました。本来親族だけでこのビルを使用しており、他人に貸すつもりはなかったのですが、知り合いのよしみで貸すことにしたのです。この会社の株主はその知人一人だけで、従業員数名を雇って事業を行っているようでした。

しばらくしてから知人に貸した部屋を訪ねると、知人は不在でした。従業員の方に話を聞くと、株主が知人から第三者に変わり、新しい株主が代表として会社を経営しているとのことでした。

私は知人との信頼関係から物件を貸したのですから、同じ会社といえども経営者が異なるのであれば賃貸借契約を解除したいと思っています。 

【回答】賃貸借契約のなかで借主の役員や株主等の実質的な経営者の変更があれば解除することができる旨の特約がなければ解除することは難しいでしょう。

借主である会社の役員や株主が変わってしまった場合でも、法人としては同一の会社ですので、賃借権の無断譲渡又は無断転貸として賃貸借契約を解除することはできません。

このような場合の対策としては、貸主と借主の会社の株主や役員との信頼関係から物件を賃貸するとき、賃貸借契約書中に、会社の株主や役員等の変更によって経営者が変わった場合には、貸主からの解除を認める特約(チェンジオブコントロール条項)を設けておくことが考えられます。

会社の経営者が変わっても賃貸借契約書は有効である判例

借主が株式会社等の法人である場合、代表者や株主等の経営者は変動することがあります。貸主とその経営者との個人的な関係から物件を貸すこともあると思いますが、その場合、信頼関係のある経営者の方がいるからこそ賃貸するのであって、その方がいないのであれば賃貸したくないと考える方も多いでしょう。

賃借権の無断譲渡や無断転貸は原則として賃貸借契約の解除事由となるところ、法人の経営者が変わってしまった場合、当初の借主とは実質的に異なる者に賃借権が譲渡されたと考えることはできないか、ということが問題となります。

会社の代表が変わった場合の賃貸借契約書の判例

この点について判断した最高裁判所の判例として、最判平成8年10月14日民集50巻9号2431頁(以下「平成8年最判」といいます。)があります。同判例は、借主が会社等の法人である場合において、株主や代表者、役員に変動が生じても、あくまで法人としては同一であるとして、賃借権の譲渡にはあたらないとしました。そして、この考え方は特定個人が経営の実権を握り、役員等が家族や知人等で占められている小規模で閉鎖的な会社で実質的な経営者が交替した場合であっても基本的に変わらないと判断しています。ただし、借主に会社としての活動実体がなく、その法人格が全く形骸化しているような場合はこの限りではありません。

ですので、法人が形骸化しているような場合を除き、会社の株主や役員が変更しても、それのみで賃借権の無断譲渡だとして賃貸借契約を解除することはできないのです。

チェンジオブコントロール条項を入れることで対策が可能

このような場合に、貸主としては、賃貸借契約書に貸主の承諾なく株主や役員等の変更によって経営者が変わった場合に、貸主からの解除を認める特約(これを「チェンジオブコントロール条項」といます。)を設けておくことで、経営者が変更された借主との間の賃貸借契約を終了させることが可能になります。

上記平成8年最判も、貸主としては、会社の経営者である個人の資力、信用や同人との信頼関係を重視する場合には、会社ではなく個人を相手方として賃貸借契約を締結したり、あるいは、会社との間で賃貸借契約を締結する際に借主が貸主の承諾を得ずに役員や資本構成を変動させたときは契約を解除することができる旨の特約をするなどの措置を講ずることができるとしており、上記特約が有効であること前提としています。

チェンジオブコントロール条項の例 

特約の条項例としては以下のようなものが考えられます。

第●条(賃借権の譲渡の禁止)

賃借人は、賃貸人の事前の書面による承諾の無い限り、第三者に賃借権の一部又は全部を譲渡してはならない。なお、賃借人が法人である場合、法人の代表者や役員の変更、株主構成の変更等によって実質的な経営主体の変更があった場合は、賃借権の譲渡があったものとみなす。

そのうえで、解除事由の条項のなかで「賃借権の一部又は全部を譲渡したとき」も列挙しておくとよいでしょう。

もっとも、賃借権の無断譲渡があっても、借主側で背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除が認められませんので、必ず契約を解除できるわけではないことには注意が必要です。

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