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相続した空き家を放置した場合の問題点を弁護士が解説【相続放棄】


【相談】相続した空家を放置することに問題はありますか。また、相続放棄すれば空家の負担はなくなりますか。

先月父が亡くなり、田舎にある実家の土地建物を相続しました。母もすでに亡くなっており、私は東京で所帯を持っているため、実家は空き家状態です。

実家に戻るつもりもないですし、建物はかなり古く賃貸にだすのも難しそうです。このまま放置してしまっても問題ないでしょうか。また、相続人になりうるのは私だけなので、私が相続放棄すれば空家の負担は全てなくなるのでしょうか。

【回答】空家を放置することは防災、衛生、景観等の観点から問題があります。また、相続放棄しただけでは管理義務はなくなりません。

空家は、適切な管理がなされずに放置されると、どんどん劣化し、防災、衛生、景観等の様々な点で問題が生じます。放置が不適切な空家として空家等対策特別措置法上の「特定空家等」になれば、市町村長から助言や指導、勧告、命令を受ける可能性があります。勧告まで受けてしまうと、住宅用地の固定資産税の優遇が受けられなくなり、支払う固定資産税が増えるリスクもあります。

相続放棄すれば空家の所有者にはなりませんので、固定資産税の支払いは不要になりますが、相続放棄しただけでは管理義務はなくなりません。本件では、相談者のほかに相続人となりうる方がいらっしゃらないので、相続放棄後に相続財産管理人が選任され、相続財産である空家を相続財産管理人に引き渡すまで、管理義務を負うことになります。

遺品・遺産の整理について気になる方は「不動産相続にも関係する「遺品整理」と「遺産整理」の違いとは?」で詳しく解説していますので是非ご参考ください。

相続した空き家を放置してしまうと多くのリスクが発生します

相続した空き家を放置した場合、老朽化などにより倒壊のリスクが発生します。さらには、景観を損ねたり、ホームレスや不良がのたまり場になってしまったり、火災の原因になってしまうなど、防犯上のリスクが発生します。

このように空き家の放置にはさまざまなリスクがあるため、市町村長から「特定空家等」に認定されてしまう可能性があります。「特定空家等」に認定されてしまうと、固定資産税の増加修繕の指導などを受ける場合があります。

また、相続放棄しても不動産の管理義務はなくなりません

以下で詳しく解説していきます。

空き家を放置すると建物は劣化!景観や防犯上の問題も……

近年空家が増加しており、全国的にその対策が問題となっています。空家の増加は、人口減少や新築物件が多いこと、日本では中古物件より新築物件が人気であることなどが原因であると言われています。

人の住んでいない空家は換気が行われないため湿気がたまり、建物の木材は傷みやすくなります。カビが生えたり、腐食したりすると、どんどん劣化が進んでいきます。外壁等についても、メンテナンスがされなければ老朽化する一方です。

このような空家について適切な管理が行われず長期間放置されてしまうと、劣化した建物が地震や台風で倒壊する危険があります。また、ホームレスや不良のたまり場となったり、老朽化した建物や伸び放題な草木によって景観も損ねてしまいます。

周辺住民への影響が大きいものとしては、火災のおそれもあげられます。放置された空家は放火の危険もありますし、コンセントにほこりがたまることで漏電して火災になることも考えられます。

空家が解体されず放置される原因としては、通常の住宅用の土地では固定資産税が6分の1になるという特例が受けられるため更地にすることを避けていること[※1]、地方だと土地が安く、更地にして売却しても解体費用との関係で赤字になってしまうことなどが考えられます。

※1 固定資産税額は課税標準額×税率(原則1.4%)で求められるところ,住宅やアパート等の敷地の課税標準額は,住宅1戸につき200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は固定資産税評価額の6分の1に,200㎡を超える部分(一般住宅用地)については固定資産税評価額の3分の1に減額されます。アパートの場合だと「200㎡×住戸数」が小規模住宅用地として6分の1減額の対象となるため,大幅な減税が可能になります。これは住宅等の敷地についての特例ですので,土地上の建物を解体してしまうと特例を受けることができなくなります。

空き家を放置すると「特定空家等」になり、土地の固定資産税が高くなる!

空家問題対策のため、平成26年には「空家等対策の促進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)」が制定され、市町村長が「特定空家等」の所有者等に対し、除去、修繕や周辺の生活環境を守るために必要な措置をとるよう助言、指導できるとことになりました。

「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいいます。

特定空家等の所有者等が、市町村長からの助言、指導に従わない場合は、市町村長は必要な措置をとるよう勧告を行い、勧告に従わない場合は命令、命令にも従わない場合は最終的に市町村が代わりに必要な措置を行い、その費用を所有者等に請求する行政代執行まで行われます。

特定空家等は税務上も不利となり、上記勧告まで受けた場合は、住宅用地の固定資産税が安くなるという特例を受けられなくなります。つまり、従前の6倍の固定資産税を支払わなくてはいけないのです。

相続放棄だけでは不動産の管理義務はなくならない!

空家を相続した場合、相続放棄すれば空家について負担はなくなると思っている方もいるようです。通常被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内であれば、相続放棄をすることができ、相続放棄をした場合は初めから相続人とならなかったものとみなされます。

つまり、相続放棄すれば空家を相続しなくてよくなりますので、物件の所有者が負担する固定資産税を支払う必要はなくなります。

しかし、相続放棄をしただけでは、空家の管理義務はなくならないことに注意が必要です。

民法940条1項は、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と定めています。相続放棄により次順位の相続人がいる場合はその者が相続財産の管理を始めることができるまで管理義務を負います。

相続人全員が相続放棄した場合は、相続財産管理人に引き渡されるまで管理義務が継続します。

相続放棄したとしても、管理義務があればトラブルが生じた際に責任を問われる可能性があります。例えば、相続放棄した後相続財産管理人に空家を引き渡すこともなく放置し、空き家が倒壊して近隣住民に損害を負わせてしまえば、損害賠償を請求されてしまいます。

また、空家等対策特別措置法では、特定空家の所有者だけでなく、管理者も市町村長から必要な措置の助言・指導等を受けることになります。

空家の放置には上記のような問題がありますので、相続放棄を行ったとしても、放置をすることのないようにしましょう。

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