コラム Column

居住用賃貸物件を自宅兼事務所(SOHO)としたらいけない?


 【相談】自宅である居住用の賃貸物件を自宅兼事務所(SOHO)としても使用することはできますか。

インターネットビジネスを始めようと思っているのですが、まだ事務所を借りるほどではないので、自宅で開業し、自宅兼事務所にしようと思っています。

ただ、自宅は住居専用の賃貸物件であり、自宅兼事務所として使うと問題になるのか気になっています。

部屋の一部のスペースを事業用のスペースとして作業用のデスクとパソコンを置いて使用する予定ですが、ほかに従業員がいるわけでもなく、自分一人で使用します。お客さんとのやり取りもほとんどはネット上のやり取りになるため、誰かが訪問してくることもありません。

このような使い方であれば住居としての利用とほぼ変わらないと思うのですが、それでも自宅兼事務所とすることはいけないのでしょうか。

【回答】使用目的違反として契約が解除されるおそれがありますが、実際の使用態様によってはあまり問題とならないこともあります。

借主が住居専用という用法に反して物件を使用し、それが貸主との間の信頼関係を破壊する程度のものであれば賃貸借契約が解除されてしまうおそれがあります。

もっとも、本件のような使い方であれば、信頼関係を破壊したとまではいえず、解除される可能性は低いと思われます。

賃貸契約書における用法遵守義務を守る必要がある

賃貸借契約における借主の義務として、用法遵守(ようほうじゅんしゅ)義務という義務があります。

これは、契約で定めた使い方を守らなければいけないという義務です。賃貸借契約では、住居、店舗、事務所等の使用目的が定められますので、その使用目的を守らなければならないとうことです。

借主が用法遵守義務に違反すると、貸主から賃貸借契約が解除されてしまうおそれがあります。もっとも、用法遵守義務違反があると直ちに契約が解除されてしまうわけではなく、貸主との信頼関係が破壊されたといえる程度になったときに解除が可能となります。

信頼関係が破壊されたといえる程度かどうかは、具体的な物件の使用態様や物件の損壊の程度、人の出入りの頻度等が考慮されます。

用法遵守義務違反の参考となる裁判例は?

用法遵守義務違反が争われた例として以下のような裁判例が挙げられます。

①東京高判昭和50年7月24日東高民時報26巻7号136頁

この裁判例の事案では、比較的小人数の家族が通常の用法に従って使用することが予定されていた賃貸物件において、借主がその一部を学習塾に使用していました。

しかし、判決では、生徒数はわずか6名だけであること、塾として使用した六畳間には絨毯を引いて毀損しないよう配慮しており、実際に学習塾を開設してから解除されるまでの2か月の間に物件に格別の毀損も認められないこと、その他に特段の事情も見当たらないことなどから、用法遵守義務違反による賃貸借契約の解除を否定しました。

②東京地判平成15年7月25日(事件番号:平成14年(ワ)第3281号)

この裁判例の事案では、借主が建物をパッチワークキルトの作品製作のためのアトリエとして使用しているほか、パッチワークスクールの「東京本校」として、毎週水曜日の午後に数名の幹部が会議のために物件を使用していました。

判決では、借主の使用状況は賃貸借契約における使用目的に反するものであることは明らかであるとしたものの、アトリエとしての使用の場合と、住居としての使用の場合とではその使用形態に大きな差異は認められないことなどから、賃貸借契約の解除を否定しました。

上記の裁判例では、いずれも借主以外の者の立ち入りがあるにもかかわらず、解除が否定されています。本件の事案では、むしろ借主のみが物件を使用し、使用態様もパソコンで作業するだけであり、特段物件を棄損することもありません。

解除が否定された裁判例と比しても、むしろ本件の方が住居のみとしての使用の場合に近いですから、本件で賃貸借契約の解除が認められる可能性は低いでしょう。

貸主の承諾を得ましょう!

ただ、解除が認められる可能性が低いからとって、貸主に黙って事務所使用することは契約違反としてトラブルに発展するおそれがありますので、おすすめできません。

住居のみの使用の場合と使用態様がほぼ変わらないことを説明し、貸主からの承諾を得てから使用するべきです。

また、自宅を仕事場とするSOHO物件(Small Office Home Office)も増えてきていますので、そのような物件への転居も検討できるでしょう。

もし不動産に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします。

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