コラム Column

家賃の供託の仕組み。貸主が賃料を受け取らないときの対処法


【相談】貸主が賃料の受け取りを拒むときでも、賃料不払い解除されますか。

物件を賃借しているのですが、貸主が理由もなく一方的に賃料増額請求をしてきました。増額については協議中ですが、賃料増額請求をされても裁判で認められるまでは従前と同額の賃料を支払えばよいはずですので、そのようにしたいと思っています。

しかし、貸主は、増額した金額でなければ賃料を受け取らないと言ってきています。これまでと同額の賃料を準備して貸主に支払うと伝えても、増額した金額でなければ受け取らないの一点張りです。振込先の口座も変更したようで、振り込むこむこともできません。

賃料未払いによる解除をされないためには、納得できなくても増額した賃料を支払わなければいけないのでしょうか。

【回答】弁済の提供をすれば、賃料を支払えていなくても契約は解除されません。

貸主が賃料の支払いを拒んでおり、賃料相当の金銭を準備して支払いが可能だと連絡していますので、弁済の提供により債務不履行とはなりません。よって、賃料不払いにより解除されることはありません。

弁済の提供をしただけでは賃料支払債務は残ってしまいますが、法務局に弁済供託をすれば、賃料支払債務自体も消滅させることができます。

賃料増額請求については「賃料増額請求の法的根拠と判例を弁護士が解説」で解説されていますので、気になる方は是非ご参考ください。

貸主が賃料を受け取らないときでも賃料不払により解除される?

貸主から賃料増額請求された場合、貸主と借主の間で協議が調わなければ、貸主が賃料増額請求訴訟を提起して増額を認める判決が出るまでは、従前の賃料を支払えば足ります(借地借家法32条2項)。

しかし、賃料を支払いたくても、貸主が受け取ってくれなければ、借主の賃料支払い義務は消滅しません。

この場合でも、「弁済の提供」(民法492条)により、賃貸借契約を賃料不払い解除されないようにすることができます。

弁済の提供とは?

弁済がなくとも、弁済の提供があれば、債務者は債務を履行しないことによって生ずるべき責任を免れることができます(民法492条)。つまり、債務不履行によって生ずる損害賠償や遅延利息等の請求を受けなくなり、債務不履行による契約解除権も発生しません。

賃料の支払いに即していえば、弁済の提供があれば、実際に貸主が賃料を受け取らなくても、賃料不払いにより賃貸借契約が解除されることはないということです。

弁済の提供には、現実の提供及び口頭の提供という2つの方法があります。このうち、現実の提供とは、例えば、支払いのために賃料を準備して実際に貸主の住所に行くというような方法であり、現実の提供が原則的な方法です(民法493条本文)。

口頭の提供は、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要する場合にすることが可能です。口頭の提供とは、弁済の準備ができてから受領するように債権者に通知することです。

債権者において弁済を受領しない意思が明確な場合には、債務者は口頭の提供をしなくても債務不履行責任を免れます(最判昭和32年6月5日民集11巻915頁)。

本件では、従前どおりの賃料を支払えば足りるにもかかわらず、貸主は従前の金額の賃料の支払いを拒否していますので、口頭の提供により弁済を提供することが可能です。そして、借主は実際に従前と同額の賃料を準備し、貸主に支払うと伝えていますので、口頭の提供により弁済の提供がなされたといえます。

よって、貸主に賃料を支払えていなくても、賃料不払いにより賃貸借契約が解除されることはありません。

弁済供託とはどのような制度?

弁済の提供をすれば、債務不履行により賃貸借契約を解除されることはありませんが、賃料支払債務自体は残ってしまいます。

この場合、弁済供託をすれば、賃料支払債務を消滅させることができます(民法494条)。弁済供託とは、債務者が債権者に対して支払うべき賃料等を法務局に寄託することにより債務を消滅させる制度です。

供託は、法令により供託することができる場合(供託原因)が決められており、供託原因がなれば供託を利用することができません。

弁済供託では、①受領拒絶、②受領不能、③債権者不確知という3つの供託原因が定められています。

まず、①受領拒絶とは、債務者が弁済の提供をしたものの、債権者が受け取りを拒んだ場合です(494条1項1号)。賃料を貸主の住所に持参したにもかかわらず、受け取ってもらえなかったような場合が典型です。

続いて、②受領不能とは、債権者が弁済を受け取ることができない場合です(民法494条1項2号)。債権者が所在不明でそもそも受け取りができないケース等がこの場合に当たります。

そして、③債権者不確知とは、債権者が誰か分からず、そのことについて債務者の過失がない場合です(494条2項)。例えば、貸主が亡くなって相続人を名乗る者が現れたが、その者が本当に相続人なのか分からない場合や、建物のオーナーチェンジに際して争いが発生し、旧所有者と新所有者のどちらに賃料を支払えばいいか分からないような場合等が挙げられます。

本件では、上記のように口頭の提供により弁済の提供がされ、それでも賃料の受け取りを拒否されていますので、①受領拒絶を原因として弁済供託をすれば、賃料支払債務自体も消滅させることが可能です。

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