コラム Column
弁護士歴12年。不動産問題、相続、インターネット問題などを取り扱う。
28歳のときに家業の不動産賃貸業を継ぎ、現在は名古屋市内に9棟を持つ。
2019年よりYouTuberとしても活躍中。
父の相続税を支払うのに先祖代々の土地を売ったり物納したりといったドタバタも落ち着いた2001年の冬ころ…「遊休土地にアパートを建てませんか」という1本の営業の電話から全ては始まりました。
これまで、次から次にアパートやマンションを建てないかとやってくる業者を、見積もりを取っては断り取っては断りを続け、8社。そして一人の建築士さんにご無礼を繰り返した恥の多い人生を送ってきた加藤でございます。この頃の加藤は、「外断熱」の重力に魂が惹かれておりました。
きっかけは今はなき日本省エネ建築物理総研さんの会員ページ。
当時名古屋でEV外断熱会員だったのはNT社さんだけでした。
早速NT社に電話をかける・・・
加藤:「外断熱について伺いたいのですが・・・」
NT社:「今日は担当者が休みなのでわかりません。」
と、けんもほろろに電話を切られてしまったので、
「折り返し連絡をとるため、こちらの電話番号を聞くのが普通だろ!」
と心の中でツッコミを入れました。
NT社クォリティに出鼻をくじかれた加藤。
それでも挫けずに日を改めて連絡を取ると、「是非来社下さい」とのこと。
当時の加藤はまだ若かったので、ノコノコと出かけていったのだが、よくよく考えて見ると、そんな業者を聞いたことがありませんでした。
「家まで来るやろ、速攻で!」
※ここで解説しよう!
地主系大家は業者に徹底的に甘やかされている。
打ち合わせは地主の家もしくは近所まで来るのが通常であるし、内覧会があれば迎えの車が来る。
大手住宅メーカーは特に「研究開発・広報・営業」がお仕事なので、営業の徹底した接待攻勢をかけて来るのだ。
(本当に大切なのは営業じゃないのに、それにほだされてしまう人のなんと多いことか…)
そして、とにかくまず契約書に印鑑をもらおうとする。
これと比較して、NT社の営業さんはガッつかない。
契約書もかなり後になってから登場する。
このようなNT社営業マンの振る舞いを見て、
「なんと自信に満ちた営業態度だ。余程物件に自信があるのだろう…」
と思ったあの夏の日……。
その後実際にNT社の建設した2軒の外断熱建物(戸建)を見せてもらいました。
さらには、建築途中の外断熱建物を見学するために、東京の「康和地所」さんの現場までお邪魔しました。
その際には、EV外断熱工法の「日本省エネ建築物理総研」さんにも同行していただき説明を受けました。
そんなこんなでようやく「外断熱」というものがわかってきた気がしました。
そして、NT社が提案してきた外断熱の物件が、下のパースでした。
私は一目でこのデザインが気に入りました。
一般的に外断熱の建物は「施工が難しく、デザインが制限される」、言われていました。
つまり、建物に凹凸があると施工が困難になり、熱橋(熱を伝える橋の意味で、断熱材の内と外を貫いて熱を伝達する部位のこと)が生じ易くなるため、外断熱建物では出来る限り凸凹のない長方形(正方形)が好まれデザイン性で劣る、と言うのです。
特にベランダや共用廊下部分を如何にデザインするかが問題でした。
例えば金属製のベランダを後付けにしたり、共用廊下まで断熱してしまうという処置がとられているようです。
これに対して、NT社が提案してきたデザインは、凹凸だらけで外断熱には不向きのように見えます。
しかし、次の建物配置図をご覧下さい。
この建物は長方形の居室部分のみで断熱ラインを保ち(赤い線)、ベランダやエントランス・共用廊下は別の構造体として建築し、熱の伝導率が低いステンレスで建物本体と接続する、という構造をとっています。
(したがって、今見てもわかりませんが、建物と廊下の間には若干の隙間が空けられています)。
そのため、一見凹凸の多い建物に見えながら、熱橋が出来にくいデザインが実現出来ました。
そんなこんなで計画実行を決定したのが、2003年1月。
2001年の冬から始まった新築マンション計画も、これにてようやく業者が決まりました。
終劇
次回からは、外断熱をご紹介していこうと思っております。
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