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【弁護士解説】家賃滞納トラブル! 具体的な対処法を実例を元に解説

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導入&自己紹介

はじめまして。平成生まれの戦う弁護士、坪井僚哉です。

まず簡単な自己紹介ですが、私は元プロボクサーで、現在は東京の霞が関で弁護士をしています。

弁護士としては不動産を主に扱っており、特に「不動産を扱う中小企業の顧問業務」と「不動産会社・不動産投資家・大家さんの抱える問題解決業務」を中心業務としています。

詳しい取扱業務や経歴などはプロフィール欄をご覧いただければ幸いです。

今回の記事をご覧いただくと、実際のトラブル解決事例をモデルに、

・家賃を滞納されてしまった場合の時系列別の具体的な対処法

・必要な弁護士費用

・解決にかかる時間

など、建物明渡請求の基礎を学べます。

その他にも、滞納者を追い出す際のワンポイントアドバイスを解説していきます。そして記事の最後では建物明渡請求のポイントを3つに絞ってまとめます。

家賃滞納に苦しんでいる大家さんや、いつか苦しむかもしれない大家さん、これから不動産投資をしようと考えている方に是非最後まで見ていただきたい内容です。

家賃滞納入居者への建物明渡請求~実際のトラブル解決事例をモデルに~

※特定防止のため個人情報に関する部分に一部変更を加えてありますが、建物明渡請求につき参照していただく分には問題ありません。

段階その1 訴訟提起前

ことの顛末としてはこうです。

2020年の夏、私のもとに不動産投資家のAさんが相談にいらっしゃいました。Aさんは関東圏に1棟物件を持っている不動産投資家の方なのですが、保有アパートの一室で家賃滞納が発生してしまったというのです。

詳しく話を聞くと、賃借人のBさん、なんとすでに半年以上も滞納しているとのこと。家賃保証会社の保証にも入っていないようで、大変困ったご様子でした。

ここで少し解説をすると、よく契約書に「2か月滞納したら即賃貸借契約解除」などと規定されているのですが、1,2ヶ月程度の滞納だと後で解除の効力を争われたときに解除が認められない可能性が高いです。解除が認められる明確な基準があるわけではありませんが、ざっくり3,4カ月程度の滞納が必要です。Aさんはこういった理由から半年以上も待っていたのですね。

ただ、私は顧問先の不動産会社には、「2か月滞納したら相談してください」とお伝えしています。

そうすれば滞納家賃の請求書兼解除通知を送って、振込を待っているうちに3,4カ月滞納となって解除が有効となるために十分な期間が経過します。

もちろんその時点で滞納家賃が支払われればそれはそれでよいのです。滞納家賃は入ってきますし、「滞納したら弁護士が出てくるから滞納しないようにしよう」という将来の滞納に対する抑止力になります。

2か月滞納したら弁護士に相談してください、というのは、不動産投資家の方や大家さんの損失を拡大させないためです。普通、家賃すら払えない人は、資産がなく、滞納賃料の回収の見込みは低いのです。

後述しますが、訴訟となった場合、明渡請求には平均9か月程度かかります。敷金があっても赤字になることは必須なので、できるだけ損失が拡大しないようにするためには早めに動き出すべきです。特にインカムゲイン狙いで不動産投資をするなら家賃が入るのが前提です。家賃が入ってこなければ利回りが落ちてしまいます。放っておけばそれだけ損失が拡大していくことになるため、利回り保護のために早急に弁護士に依頼することが重要になります。

さて、私はAさんから「Bさんを追い出してくれ。可能だったらでいいから滞納家賃も回収してくれ」という依頼を受けました。ここからが弁護士の腕の見せ所です。家賃滞納に対する弁護士の仕事として、最初に実施する手段として最もポピュラーなのは請求書兼解除通知です。これは、滞納家賃をいくら支払ってください、いついつまでに支払わなければ、本書をもって解除します、という内容が記載されています。

Bさんにこれを送付したのですが、残念ながら無視されてしまいました。

ただ、実はこれはよくあるケースです。任意で退去してくれれば話がスムーズなのですが、滞納する方の多くはそこまで素直な方ばかりではないので、訴訟になることが多いのです。

段階その2 訴訟段階

解除通知を出しているため、解除したことを前提に、建物明渡請求、滞納した家賃の支払請求、その遅延損害金の支払請求という3つの請求をする訴訟を提起しました。

相手が裁判に出てこなければ裁判は一回で終わります。そのパターンも結構多いのですが、その時は賃借人が出てきました。

賃借人であるBさんの言い分はこうでした(なお、ここからのお話は公開の法廷でしたやり取りであって、書いても問題ありません。)。

「コロナで金が無いので家賃は払えん。でも、出ていきたくない。こっちは長く住んでいるんだから、少しくらい大目に見てくれてもいいじゃないか。長く住んであげてるのに、訴訟までして出て行けなんてひどい。少しはこっちの身になって考えてくださいよ!」

開き直ったような態度で、非常に身勝手な主張をしてきた。

弁護士といえど人間ですから、あまりにも身勝手で図々しい主張をされると、ムッと来てしまうことはあります。

表には出しませんが、内心では「舐めるなよ」と思いました。

これはあくまで私個人の考えですが、家賃滞納というのは、不動産投資家の方や大家さんの財布から毎月家賃と同じ額を抜き取ってしまうのと同じようなものだと思います。滞納して、訴訟にまでなって、この期に及んでそんな甘い考えを持っていてもらっては困るのです。だから感情はそこまで表に出しませんでしたが、毅然とした態度で厳しめに対応しました。

「あなたの主張はわかりました。しかし、それは通用しません。長く住んでいることは家賃を滞納していい理由には決してなりません。あとあなた少しくらい大目に見ろと言っていますが、あなたがしてきた滞納は少しじゃない。それに、コロナだからと言っていますがコロナ前からたびたび家賃滞納していましたよね。あなたは判決が下されれば今の家から出て行かなければならない立場にあります。はっきり言って認識が甘いです。自分の置かれた状況をよく理解してください」

これを言った後は身勝手なことをあまり言わなくなりましたし、後で言いますが今でも滞納した家賃を支払い続けてくれていますので、毅然とした対応をして正解だったと思います。

段階その3 判決か、和解か?

既に解除が認められるための十分な滞納がされていたので、こちらは基本的には勝訴を前提として強気で交渉に臨めます。

その時点でこちらには2つの選択肢がありました。

①勝訴判決をとって出て行かせる

②次に一度でも滞納したら即追い出せるようにしておきつつも、毎月賃料の倍額を支払い続ける、という内容の和解をする

②の倍額というのは、通常とおりの賃料1か月分+滞納家賃の返済1か月分の合計2か月分です。

なぜ②の選択肢が出てきたかというと、Bさんはその時点で1年以上滞納していて、Aさんとしてはそれを回収したかったためです。①の判決でも請求それ自体はできますが、私の経験上家賃を滞納するような人には殆ど財産はありません。そうすると、「今まで滞納した家賃50万、100万、払ってください」って言っても、「ない袖は振れません」って言って開き直られてしまいます。

しかし、和解の方法であれば、一度でも滞納したら出て行かなくてはならないという状況下であるため、分割とはいえ滞納した家賃の支払いを事実上強制できます。和解の方が滞納家賃の回収可能性が高いと見込まれたのです。また、そのアパートの場所はかなり田舎だったので、追い出しても次になかなか入居者が入らないかもしれないという事情もありました。だったら、次に一度でも滞納したら即追い出せるようにしておきつつも、毎月1か月分ずつでも滞納した家賃を取り戻していった方が合理的、という判断です。

この和解は訴訟上の和解といわれるもので、確定判決と同じ効力を有するため(民事訴訟法267条)、入居者が一度でも滞納すればこれに基づき強制執行して追い出すことが可能です。

なお、今回のようにこちらからの連絡を無視するような入居者には使えませんが、入居者とコミュニケーションが取れて合意が見込める場合には即決和解(民事訴訟法275条)という選択肢もあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。(即決和解とは何か?手続きを弁護士が解説。訴訟しなくても強制執行ができる制度

他にも裁判手続外で和解契約(民法695条)を結ぶという選択肢もあるのですが、こちらは相当工夫しないと強制執行できないためおすすめはしません。

そして、大家のAさんは②の和解を選択しました。

Bさんは現在でも毎月家賃2か月分を支払い続けています。

Aさんからしたら、きちんと毎月家賃は入るし、それに加えて滞納していた家賃も1か月分ずつ入ってくる、次に滞納したらすぐに追い出せるという状況です。

私としても次にBさんが滞納したらすぐに動けるようにしています。

これにて一件落着です!

次回予告

長くなってしまったので一旦ここで区切ります。

後編では建物明渡訴訟にかかる費用、時間、ワンポイントアドバイス、家賃滞納発生時にまず考えるポイント3つを解説していきます。

またお会いしましょう!

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