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訴訟しなくても強制執行ができる!即決和解とは?

作成日: 2021/03/22
更新日:
投稿者名:森 春輝
投稿者資格:弁護士(第二東京弁護士会)
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【弁護士:森 春輝】

弁護士(第二東京弁護士会)。2017年に弁護士法人Martial Artsに入所し、
不動産トラブルや賃貸借契約書に関する業務をはじめ、多分野にわたる法律業務に従事している。




【相談】借主が合意した明渡期限を守らない場合、訴訟をしなくても強制執行できる制度はありますか。

 

賃貸住宅の借主が賃料を半年も滞納しています。収入が少ないとのことで待ってあげていましたが、賃料を払えない人に貸し続けるわけにもいきません。その借主との間で賃貸借契約の解除と建物明渡について協議をしたところ、2か月後末限りで物件から退去し、期限までに退去することで一応合意できました。

 

ただ、合意書を作成しても、借主がその約束どおりに退去してくれるかが不安です。約束どおり退去してくれない場合は建物明渡請求訴訟をすることになると思いますが、訴訟をしなくても強制的に立ち退かせる方法はないでしょうか。

 

【回答】簡易裁判所の即決和解という制度を利用することで、訴訟をしなくても強制執行をすることができます。

 

この場合、即決和解という制度を利用することが考えられます。

 

通常は、建物明渡請求訴訟を提起し、請求を認める判決を取得してから、判決に基づいて強制執行をすることになります。

 

しかし、即決和解を利用すれば、その即決和解で合意した内容に基づいて強制執行することができます。

 

【解説】

 

借主が退去期限を守ってくれるか不安な場合

 

借主との間で退去に関するトラブルが発生したものの、借主との協議で一応合意できる場合、合意内容を明確にして約束を守ってもらうために、合意書を作成することがあると思います。

 

もっとも、借主が合意書で定めた約束を守らなかった場合、合意書を作成していただけでは、直ちに強制執行をすることはできません。合意書の内容を強制的に実現するためには、通常は、訴訟を提起し、貸主の請求を認める判決を得たうえで、判決に基づいて強制執行をする必要があります。この場合、合意書を作成したにもかかわらず、強制執行をするまで短くとも数か月の期間がかかってしまいます。

 

このような不都合を回避するため、当事者間で合意ができていれば訴訟を経なくても強制執行ができる即決和解という制度があります。

 

 

即決和解はどんな制度?

 

即決和解とは、すでに当事者間で合意の見込みがある場合に利用できる制度で、正式には訴え提起前の和解といいます(民事訴訟法第275条)。簡易裁判所に出頭した両当事者が和解条項案に合意し、裁判所がその合意を相当と認めた場合に和解が成立します。和解が成立すると和解調書が作成され、その和解調書は判決と同一の効力を有します(民事訴訟法第267条)。

 

そのため、即決和解を利用すれば、借主が合意に反した場合に改めて建物明渡請求訴訟を提起して請求を認める判決を得なくとも、即決和解の和解調書に基づいて建物明渡の強制執行をすることができるのです。

 

 

即決和解の手続き

 

①和解条項案の作成

即決和解を申し立てる際、和解条項案を裁判所に提出する必要があります。そこで、申立て前に借主との合意内容をもとにあらかじめ和解条項案を作成します。後に合意できないということにならないよう、借主側の了承も得ておきましょう。

 

②即決和解の申立て

即決和解の申立ては、申立書と必要書類を簡易裁判所に提出することにより行います。申立書には、賃貸借契約の内容や、相手方との争いの実情を記載し、和解条項案を添付します。

 

③申立書等の審査・期日指定

簡易裁判所に即決和解を申し立てると、申立書等の審査が行われ、必要に応じて裁判所から修正の指示や書類追完の指示が出されます。修正等が完了すると、裁判所と当事者の間で和解期日を調整し、裁判所が和解期日を指定します。申立てから和解期日の指定までは平均1か月程度かかります。

 

④和解期日当日

和解期日当日は、当事者双方が裁判所に出頭して和解条項について最終確認を行い、合意できれば和解が成立します。和解が成立すると和解調書が作成され、原則としてその日のうちに両当事者へ交付されます。

 

 

注意すべき点は?

 

即決和解に基づいて強制執行をするためには、和解条項に「Aは、Bに対し、2021年3月31日までに以下の建物を明け渡す」というように、特定の行為をすることを定める条項を入れ込む必要があります(これを「給付条項」といいます。)。

 

注意しなければならないのは、義務を定める条項(これを「確認条項」といいます。)だけでは足りないということです。確認条項は、例えば、「Aは、Bに対し、2021年3月31日までに以下の建物を明け渡す義務を負う」というような条項です。

 

同じような内容にも思えますが、「義務を負う」ことと、「その義務に基づいて特定の行為をする」ことは別のことなのです。

 

和解条項に給付条項が含まれていなければ強制執行をすることはできませんので、この点は十分に注意する必要があります。


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