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建築請負契約を中途解除したときの出来高報酬


【相談】建物完成前に建築請負契約を解除した場合、既施工の出来高部分の報酬を支払う必要はりますか。

不動産投資としてアパートを建てて賃貸に出そうと思っています。そこで、工務店と建物の建築請負契約を締結し、アパートを建築していました。しかし、途中で工務店が下請業者とトラブルになり、職人を用意できなくなったといって、工事がストップしてしまいました。

契約で決めていた完成時期を過ぎても工事が進む様子はなく、この工務店に任せていてもどうしようもないため契約を解除したいと思います。他の建築業者にもつてがあり、すでに施工された部分を利用して工事継続が可能とのことなので、その建築業者に工事を引き継いでもらいます。

この場合、すでに施工された部分については元の工務店に報酬を払わなければいけないのでしょうか。

【回答】出来高部分を利用して工事を継続できるような場合は、出来高の割合に応じて報酬を支払う必要があります。

建物の建築請負工事を中途解除した場合で、すでに施工された部分を利用して別の建築業者が引き継いで工事を継続することができるときは、注文者は当初の工務店に対して既施工の出来高部分の割合に応じて報酬を支払う必要があります。

その場合、出来高部分の査定には、工事全体の工程に占める出来高の割合を算出し、請負報酬額にその割合を乗じて出来高の価格を算出する方式が用いられることが多いです。

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解除時の出来高はどう精算する?

請負人による仕事の完成がないまま履行期が経過すれば、注文者は請負人の債務不履行に基づいて建築請負契約を解除することができます。

改正後の民法634条では、解除時に建物が未完成であっても、注文者が受ける利益の割合に応じ報酬を請求することができる場合を定めています。

民法634条

次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。

一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成させることができなくなったとき。

二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。

この条項は、改正前の判例に現れていた割合的な報酬請求の考え方を明文化したものです。最判昭和56年2月17日判時996号61頁は、建物の工事請負契約については、工事内容が可分であり、当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、特段の事情のないかぎり、既施工部分については解除することができず、未施工部分についてのみ契約解除することができると判断しており、解除されない既施工部分の出来高についての報酬は請負人に支払う必要がありました。

建物の建築請負工事を中途解除することは634条2号の「請負が仕事の完成前に解除されたとき」にあたりますので、既施工部分が可分で注文者の利益になるときは、割合的報酬が発生するところ、既施工部分を利用して他の建築業者に工事を引き継いでもらうことができる場合は、可分な既施工部分が有用であり注文者の利益になるといえますので、既施工の出来高の割合に応じて報酬が発生することになります。

建物の建築請負工事の報酬は、契約時、着工時、上棟時、完成時等のタイミングで通常3回~4回に分けて支払われます。中途解除時にはすでに支払い済みの報酬がありますので、既払代金額と、出来高の査定額の差額を精算することになります。

解除時の出来高の査定額が既払報酬額を上回っている場合は、注文者が請負人に差額を支払い、解除時の出来高の査定額が既払報酬額を下回っている場合は、請負人が注文者に差額を支払うことになります。

出来高報酬額の算定方法は?

出来高部分の報酬算定の方式として、多くの裁判例で用いられている方法が、建築工事全体の工程に占める出来高の割合を算出し、請負報酬額にその割合を乗じて出来高の価格を算出する方式(出来高割合方式)です。

出来高の割合を算出するには、建築工事の工程に従った個別の工程ごとに出来高割合を検討する必要があります。

工程順に従って工種ごとに工事項目を区分したうえ、各工事項目の内訳明細により工事内容が特定されているような詳細な詳細な見積書が作成されている場合は、当該見積書に基づいて各工事項目に区分し、工事項目ごとにそれぞれの出来高割合を判断していきます。

積算根拠が不明確が見積書しかなく、それのみでは予定された工事内容が確定できないような場合は、設計図等から予定された工事内容を特定したり、標準的な工事内容及び通常要する費用との比較によって積算根拠を求めたりする方法等が考えられます。※1

いずれの方法でも、建築途中の出来高の正確な査定は容易ではなく、建築の専門家に協力を仰ぐ必要があります

※1 岸日出夫他「建築訴訟の審理モデル~出来高編~」判例タイムズ1455号12頁

いつ出来高を査定する?

工事の中途終了後別の業者が工事を続行した場合、通常は、中途終了後の工事を引き受けた請負人が、監理者や当初の請負人の立会いの下で出来高を査定します。

他方、工事の中途終了時に出来高査定をしないで工事が完成したときは、後になってから施工状況の写真や建築材料の納品状況、当初の業者の見積書と工事を引き継いだ業者の見積書を対比するなどして出来高割合を査定します。この場合、中途解除時の出来高の査定は極めて困難となります。※2

そのため、中途終了時の出来高を査定し、後の紛争に備えて査定方法や査定結果を資料として残してから、引き継ぎ後の工事を進めていく方がよいでしょう。

※2 松本克美他編「専門訴訟講座2建築訴訟(第2版)」(民事法研究会・2013年)333頁~334頁

もし建築請負契約に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします

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