コラム Column

訴訟中に入居者が変わった場合の対策を弁護士が解説


【相談】建物明渡請求訴訟の後ではなく、訴訟中に入居者が変わってしまうおそれがある場合、どうすればよいですか。

所有しているマンションの1室を借主に賃貸しました。借主は私に無断で部屋を友人に転貸しており、短期間で何人も転借人が入れ替わっているようでした。そのような無断転貸をする者に賃貸を続けるわけにはいきませんので、賃貸借契約を解除し、借主と転借人を相手取って建物明渡請求訴訟を提起しようと考えています。

しかし、訴訟中でもまた転借人が入れ替わるのではないかと懸念しています。せっかく勝訴判決を得たとしても、私の知らないうちにまた転借人が入れ替わってしまうと、判決を取得しても意味がないのではないかと思います。

そのような場合に備えて、何か対策はとれないでしょうか。

【回答】占有移転禁止の仮処分という手続を取ることが考えられます。

建物明渡請求訴訟を提起する前に、占有移転禁止の仮処分という手続をとることが考えられます。訴訟中に転借人が入れ替わったとしても、占有移転禁止の仮処分をしていれば、元の転借人に対する判決に基づいて新たな転借人に対する強制執行をすることができます。

占有移転禁止の仮処分とは?

占有移転禁止の仮処分とは、明渡請求訴訟の際に、目的物の占有者を確定する手続きです

占有移転禁止の仮処分は、入居者が使用を続ける方法、執行官が保管する方法及びオーナーが使用する方法がありますが、入居者が使用を続ける方法が一般的です。

また占有移転禁止の仮処分は、裁判所における民事保全制度の一種でもあります。

訴訟は、訴えの提起から判決の確定まで時間がかかりますので、その間に債務者の財産状態や権利関係が変化することで、勝訴判決を得ても強制執行できないことがあります。そこで、債権者を保護し、訴訟手続が無意味になることを防ぐため、暫定的に一定の権能や地位を認めるのが民事保全制度です。

占有移転禁止の仮処分が必要になる例

建物明渡請求訴訟の手続中に、被告とした入居者(本件では、転借人)が変わったにもかかわらず、それを知らずにそのまま建物明渡を認める判決が出されてしまうことがあります。通常、建物明渡を認める判決を取得すれば、入居者が任意に出ていかない場合は最終的に強制執行によって建物の明渡しを実現することができます。

建物明渡の強制執行は、建物明渡請求を認める判決等に基づいて行うのですが、訴訟手続中に入居者が変わってしまうと、前の入居者に対する判決では、新しい入居者に対する強制執行をすることができません。新しい入居者に対して強制執行をするには、改めてその者を被告として建物明渡請求訴訟を提起し、勝訴判決を得なければならないのです。

上記のような不都合性を回避するため、占有移転禁止の仮処分という制度があります。

占有移転禁止の仮処分の効果

占有移転禁止仮処分命令が執行されると、債権者は前占有者に対する判決に基づいて、新占有者のうち下記の者に対して強制執行をすることができます(民事保全法62条1項)。

  1. 占有移転禁止仮処分命令が執行されたことを知って、建物を占有した者
  2. 占有移転禁止仮処分命令が執行されたことを知らなくても、建物の占有を前の入居者から引き継いだ者

占有移転禁止仮処分命令が執行されたことを知らないで、承継によらず建物を占有した者は対象に含まれません。もっとも、占有移転禁止仮訴処分命令が執行された後に建物を占有した者は、そのことを知って占有したと推定されますので(民事保全法62条2項)、新占有者において占有移転禁止仮処分がなされたことを知らなかったと証明しなければ、上記1として強制執行の対象となります。

本件でも、占有移転禁止の仮処分を行っておくことで、訴訟中に転借人が入れ替わったとしても、前入居者に対する判決に基づいて明渡の強制執行をすることが可能になります。

占有移転禁止の仮処分はどんな場合に認められるか

民事保全が認められるには、保全すべき債権が存在し、かつ、保全の必要性があることが必要です。

占有移転禁止の仮処分に即して言うと、賃貸借契約終了や所有権に基づく建物明渡請求権が存在し、かつ、訴訟中に入居者が変わってしまうおそれがある場合に、占有移転禁止の仮処分が認められます。

もっとも、保全手続段階では訴訟段階におけるのと同程度の証明までは求められず、資料によって「一応確からしい」といえれば足ります(これを「疎明」といます。)。

占有移転禁止の仮処分に限らず、保全処分には担保金の供託が必要

占有移転禁止の仮処分に限らず、保全処分を行うためには担保金を法務局に供託する必要があります。

保全処分は、訴訟によって請求が認められるかどうか正式に判断されないうちに行いますので、保全手続を行ったけど訴訟では請求が認められなかったということが起こり得ます。被告としては、本来自分の権利を妨げられる必要はなかったのに、保全手続によって損害被ることがありますので、その補償のため担保金を供託しておくのです。

なお、保全手続後の訴訟で請求が認められた場合等は、供託した担保金を取り戻すことができます。

担保金の額は裁判所が裁量により決定しますが、一応の基準が決まっています。占有移転禁止の仮処分で、入居者が使用を続ける通常の方法の場合、住宅であれば賃料1~3か月分程度、店舗であれば賃料2~5か月分程度となることが一般的です。

手続きは弁護士等の専門家に相談しましょう

建物明渡請求訴訟を提起するときは、占有移転禁止の仮処分をしておいた方がいいのか、しっかり検討する必要があります。また、手続自体も、必要な資料の準備や、裁判官との面接、執行官との打ち合わせなど大変なことが多いです。そのため、自分でやってしまうのではなく、弁護士等の専門家に相談することお勧めいたします。

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訴訟後に入居者が変わってしまった場合の強制執行については過去の記事にて解説しています。気になる方は合わせてご確認ください。

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