コラム Column

判決後に占有者が変わった場合の対処法。承継執行文があれば強制執行が可能


【相談】建物明渡を認める判決が出された後に借主が第三者に物件を転貸した場合、借主に対する判決に基づいて転借人に強制執行することはできますか。

所有しているマンションの1室を借主Aに賃貸しました。Aは部屋の使い方が悪く横暴な振る舞いをする人で、ガラの悪い人に部屋を使わせたりしていました。そのようなことはやめてくれと言いましたが、家賃を払っているのだからどう使ってもいいだろと言ってまったく聞き入れてくれません。しかたなく、Aを相手に賃貸借契約を解除して建物明渡しを求める訴訟を提起し、明渡しを認める判決を取得しました。

その後もAが退去しないため、強制執行しようとしたところ、実はAは判決後にこの部屋から出て行っており、Aからこの部屋を借りたというAの友人Bが住んでいることが分かりました。BはAとの賃貸借契約書も持っていました。出て行ってくれるよう頼みましたが、俺は訴訟に関係ないから出ていかないと言っています。

このような場合、Aに対する判決に基づいてBに強制執行できるのでしょうか。

【回答】借主に対する判決でも、承継執行文の付与を受ければ判決後の転借人に対して強制執行することが可能です。

Aに対する判決であっても、判決に承継執行文を付与してもらえば、Bに対して強制執行することができます。承継執行文を付与してもらうには、AがBに転貸したことを証する文書を添付して承継執行文の付与を申し立てるか、執行文付与の訴えを提起することが必要です。

なお占有者が変わる前の対策については「訴訟中に入居者が変わった場合の対策を弁護士が解説」をご参考ください。

強制執行は誰に対して行うことができる?

建物明渡の強制執行は、建物明渡請求を認める判決等に基づいて行います。

この判決等に基づいて、判決で被告とされている者に強制執行できることは当然ですが、判決で被告とされている者以外の者に対しても強制執行することができる場合があります。

判決後(正確には口頭弁論という手続の終結後)に被告の占有を承継した者がいる場合、その承継人にも強制執行することが可能です(民事執行法2313号)。

承継執行文があれば判決後の転貸人に対して強制執行できる

判決取得後に転貸等で物件の占有者が変わった場合に、その占有を承継した転借人に対して強制執行をするには、承継執行文の付与という手続が必要です。

判決取得後の強制執行の大まかな流れについては過去の記事をご参照いただきたいのですが、判決に基づいて強制執行をしようとした場合、執行文の付与という手続が必要です。

判決から強制執行までに権利関係に変更がなく、そのまま判決で被告とされた借主に対して強制執行をする場合は、「単純執行文」の付与を受けますが、占有を承継した転借人等に対して強制執行をする場合は、「承継執行文」の付与を受ける必要があります。

単純執行文の場合は、判決正本を添付して執行文付与の申立てをすればいいだけですが、承継執行文の付与を求める場合は、転借人が占有を承継したことを証する文書を添付して付与を申し立てる必要があります(民事執行法272項)。

本件でいえば、AとBとの間の転貸借契約書を入手することができれば、これを添付して承継執行文の付与を申し立てることができると考えられます。

仮に、占有の承継を証する文書を用意できない場合は、執行文付与の訴えを提起することで承継執行文を得ることが可能になります(民事執行法331項)。

承継執行文を得ることができれば、判決後の転借人Bに対して強制執行することができるようになります。

転貸が口頭弁論終結前だった場合はどうなる?

AがBに転貸したのがAに対する建物明渡請求訴訟の口頭弁論終結前であった場合、貸主がそのことに気づくことができれば、訴訟引受け(引受承継)という手続によって、裁判所の決定で転借人を訴訟に引き受けさせることができます(民事訴訟法501項)。Aに対する訴訟を引き受けた転借人Bも建物明渡請求訴訟の被告になりますので、Bを被告として判決を出してもらえば、その判決に基づいてBに強制執行することができます。

他方、訴訟中にAがBに転貸したことについて貸主が気づかないまま口頭弁論が終結し、そのままAを被告とする判決が出されてしまった場合、この判決に基づいて転借人Bに対して強制執行をすることはできません。この場合、Bに対して強制執行をするには、改めてBを被告として建物明渡請求訴訟を提起して判決を取得しなければならないのです。 

このような二度手間を防ぐため、保全手続として占有移転禁止の仮処分という制度があります(民事保全法231項、62条)。

占有移転禁止の仮処分とは、現在部屋の占有をしている者に対して、ほかの者に占有を移転してはならないとの命令を出す手続です。占有移転禁止の仮処分後に占有を移転させた場合は、訴訟引受け等をしなくても、借主を被告とする判決に基づいて借主から占有を得た者に強制執行することが可能になります。

危ない借主建物明渡請求訴訟の前に、占有移転禁止の仮処分をすることで、借主を被告とした判決に基づいて、占有移転禁止の仮処分後に借主から占有の承継を受けた者に対して強制執行をすることが可能となります。

もし占有者に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします。

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