コラム Column

賃借時に用途変更の説明がなかった場合の責任追及方法について弁護士が解説


【相談】飲食店を経営するために物件を借りたのですが、そこで飲食店を経営するには、用途変更に係る確認申請を行う必要があることが分かりました。賃貸人に対し、何らかの責任追及をすることが可能でしょうか。

私は、店舗物件を賃借して、そこで飲食店を経営していました。

しかし、そこを明け渡さなければならなくなり、物件を探していたところ、ようやくよい店舗物件を見つけました。

使用目的として、「飲食店」であることも明記した上で、貸主と賃貸借契約を締結しました。

新しく借りた物件は、かつて、事務所として使用されていたようです。

私は、飲食店として使用できるように、新物件の改修工事を開始しました。

しかし、役所からの指摘で、その改修工事には、確認申請が必要であることが分かりました。

確認申請の手続きを行っていると、大幅に工期が遅れてしまい、開店予定日に到底間に合いません。

貸主は、私の使用目的を分かっていたにもかかわらず、確認申請も行っておらず、また、確認申請が必要であるとの説明すらありませんでした。

私は、貸主に対し、何らかの責任を追及することができるのでしょうか。

【回答】賃貸借契約書において、使用目的が明記されていた等の事情がある場合には、賃貸人に対する責任追及が認められることもあり得ます。

賃貸借契約書において賃借の目的が「飲食店」であることが明記されていたことは、賃貸人に対する責任追及が認められる方向に働きます。

ただし、契約締結までの交渉過程でご相談者側において用途変更等について確認することになっていたなどの事情等がある場合には責任追及ができない可能性もあります。

建築・増改築・改修する際には建築確認をする必要があります

建築確認とは

建築主は、一定の建築物を建築しようとするときは、工事の着手前に、建築計画が法令で定められた建築基準(建物の敷地、構造、用途等に関する基準)に適合している旨の確認を受けなければならないとされています(建築基準法(以下「法」といいます)6条)。

この確認行為を建築確認といいます。

そして、建築確認は、新たに建築物を建築するときだけではなく、増改築や改修をする際にも、受けなければならない場合があります。

なお、建築確認を申請する義務があるのは建築主で、確認を行うのは建築主事等です。

用途変更とは

建築物の用途を変更して、一定の建築物に該当することになる場合には、建築確認申請と同様の手続きを取る必要があります(法87条)。

一定の建築物とは、「特殊建築物」(法6条1項1号)(※)を指しますが、その用途で使用する床面積の合計が200㎡を超える場合にのみ、確認申請が必要になります。

なお、条例により、異なる定めが置かれていることも多いため、建築物の用途を変更する場合には、条例の内容もよく確認する必要があります。

※特殊建築物には、たとえば、「学校、病院、劇場、集会場、展示場、遊技場、旅館」等があります。

賃貸人への責任追及方法

(1)契約書に定めがある場合

賃貸借契約書において、官公庁への申請・届出等は、全て賃借人の責任・負担において行う旨の規定がある場合には、確認申請に関する手続一切を賃借人が行わなければなりません。

その場合には、賃貸人への責任追及は困難と言えます。

(2)契約書に定めがない場合

賃貸借契約書において、(1)において記載したような規定がない場合は、確認申請の責任・負担を負うのは、賃貸人・賃借人のいずれになるのでしょうか。

用途変更に伴う確認申請に関して、賃貸人に対する責任追及を認めた裁判例がありますので、ご紹介いたします。

東京地裁平成20年11月21日

【事案の概要】

貸主と借主は、目的を「飲食店」と明記した上で、建物の賃貸借契約を締結しました。

借主は、新店舗の工事や、従業員の雇用などの開店準備を着々と進めていました。

しかし、役所からの指摘により、対象建物において飲食店を経営するには、確認申請(用途変更手続き)(法87条、法6条)が必要であることが判明しました。

【判決の概要】

(1)責任追及の可否

以下の点が重視され、次のように認定されました。

・賃貸借契約において、借主が本件建物を賃借する目的が飲食店を経営することにあることが、定められていた。

・対象建物について、不動産登記簿上、その種類が「事務所 倉庫」とされていた。

・貸主は、不動産登記簿上の種類について、「事務所 倉庫」と記載されていることを知っていた。

→「被告(※)は、本件建物において飲食店の経営ができるよう事前に本件用途変更手続を執り、又は、原告に対し、本件用途変更手続を執ることが必要になる旨伝える義務があるにもかかわらず、これを伝えなかったということができ、被告は、上記不作為において、不法行為が成立する」

※「被告」が賃貸人になります。

(2)賃貸人が負う損害賠償の内容は、以下のとおり判断されました。

・工事を進めることができなかった期間の対象建物の賃料。

・本来であれば生じることのなかった人件費(従業員の給与)。

・弁護士費用の1割。

賃貸借契約書に用途変更の確認申請に関する規定があるか確認しましょう

まず、賃貸借契約書において、確認申請に関する負担を賃借人が負う旨の規定がある場合には、賃貸人に対する責任追及が困難であるといえます。

その場合には、賃借人が確認申請を行うことになります。

建築確認手続は、「建築主」(法87条、法6条1項)が行うこととなっているところ、「建築主」とは、「建築物に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。」(法2条16号)と定義されております。

賃借物件に関して、賃借人が改修工事の注文者となる場合には、賃借人も申請主体となり得ます。

賃借人側が確認申請を行う場合には、必要な書類を賃貸人から交付を受けて、確認申請を行うことになります。

次に、賃貸借契約書において、確認申請の負担に関する規定がない場合はどうでしょうか。

本件では、賃貸借契約書において賃借の目的が「飲食店」であることが明記されており、その事情は、賃貸人に対する責任追及が認めら得る方向に働きます。

ただし、そもそも違法建築であった特殊なケースで責任追及が認められなかった裁判例もあります。

また、契約締結までの交渉過程でご相談者側において用途変更等について確認することになっていたなどの事情がある場合には責任追及ができない可能性があります。

本件においてそのような事情がないかどうかを、賃貸人の反論があれば、その反論を踏まえて、慎重に検討する必要がございます。

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