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明け渡し請求に同居人も含めるべきか?独立の占有者と占有補助者とは


【相談】賃借人との関係が分からない同居人については、明渡請求訴訟の対象(被告)とすべきでしょうか。

私は、分譲マンションの1室を所有しており、5年前から貸し出しています。

賃借人と賃貸借契約を締結するとき、賃借人から婚約者と同居人としたいとの申し出があり、私はこれを承諾しました。

しかし、今年に入り、賃借人は賃料の支払いが遅れがちになり、現在、家賃を3か月滞納しています。

私は、その賃借人との交渉を試みましたが、電話をしても応対がなく、内容証明郵便を送っても、何らの回答もありません。

そこで、私は、賃借人に対し、未払賃料の支払いを求めるとともに、マンションの明渡請求訴訟を提起することにしました。

今も賃借人の同居人が一緒に住んでいる可能性があると思いますが、私は訴訟において、賃借人だけを対象(被告)にすればよいのでしょうか。

【回答】単なる「占有補助者」である場合には、明渡請求訴訟の対象(被告)とする必要はありませんが、「独立の占有」を有している場合には、対象(被告)とする必要があります。

賃借人の同居人が単なる「占有補助者」に過ぎない場合には、明渡請求訴訟において賃借人のみを対象(被告)とすることで足ります。

しかし、賃借人の同居人が「独立の占有」を有する場合には、明渡請求訴訟において、賃借人の同居人も対象(被告)とする必要があります。

仮に、かつて、賃借人の婚約者であると申告があった方が、現在もなお婚約者として同居している場合には、「独立の占有」を有するとも判断され得ますので、同居人も対象(被告)と必要があります。

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明け渡し請求における独立の占有と占有補助者とは何か?

「独立の占有」とは、賃借人とは別個独立して、対象建物を占有している状態を指します。たとえば、賃貸借契約において賃借人となっている者から、対象建物の転貸を受けて占有している状態は、「独立の占有」となります。

「占有補助者」とは、実際には対象建物を占有していても、法的には独立の占有主体とは認められない者をいいます。たとえば、賃貸借契約における賃借人の家族や使用人は、占有補助者になります。

今回の相談のケースでは、独立の占有であれば明け渡し請求を行う必要があります。

同居人を被告とすべきかは独立の占有に当たるかどうかによる

明渡訴訟においては、「独立の占有」があると認められる相手方にのみ、明渡請求が認められ得ます。

単なる「占有補助者」に過ぎないと判断された場合には、たとえ、賃借人の同居人として対象物件に居住中であっても、その占有補助者に対する明渡請求は認められません。

賃借人に対する判決さえ得れば、その判決をもって、賃借人の占有補助者に対しても明渡しを請求できるからです。

明らかに占有補助者に過ぎない者に対しては、「家屋の明渡・・・を請求することはできない。」と判例においても明示されています(最高裁昭和35年4月7日判決)。

今回のケースでは独立の占有に当たるかの調査が重要

まずは、同居人の占有の有無と、同居人と賃借人との関係性について調査する必要があります。

調査する方法としては、次のような方法が考えられます。

仮に、同居人の連絡先が分かっているのであれば、同居人に連絡を取って、居住の有無を確認し、また、賃借人との関係性を確認します。

また、実際に対象建物を訪問し、同居人が出てくるかを確認して、居住の有無や賃借人との関係性を確認することが考えられます。

ただし、賃借人や同居人が在室しているとは限らないため、労力をいとわず、根気強く訪問する必要があります。

(1)同居人が配偶者である場合 

同居人は賃借人の配偶者であるとの回答を得た場合、関係性が分かる公的な資料(戸籍等)を確認させてもらう等して、裏付けを取ることを忘れないようにしてください。

関係性が分かる公的な資料(戸籍等)を確認する等して、同居人が賃借人の配偶者であることが確認できた場合には、その同居人は、「占有補助者」であると判断できます。

賃借人に対する判決さえ得れば、その判決をもって、賃借人の占有補助者に対しても明渡しを請求できるため、その同居人を明渡請求訴訟の被告とする必要はありません。

(2)同居人が婚約者である場合

同居人が単なる賃借人の家族ではなく、単なる婚約者であることが分かった場合、明渡請求訴訟において、その同居人も被告とする必要があります。

その場合、明渡請求訴訟において、同居人が対象物件の「占有者」であることの何らかの証拠を提出する必要があります。

考えられる証拠収集の方法として、実際に対象建物を訪問し、同居人が出てくるかを確認した上で、現地調査報告書を作成する方法があります(※3)。

上述のとおり、賃借人や同居人が在室しているとは限らないため、労力をいとわず、根気強く訪問していただく必要があります。

現地調査が功を奏さない場合、たとえば、管理会社の担当者が同居人を見かけた等の事情があれば、管理会社の担当者に協力を仰ぎ、管理会社の担当者名義の報告書や陳述書を作成することが考えらえます。

※3 現地調査及び現地調査報告の作成を比較的安価に行ってくれる業者もあるようですので、業者に依頼するということも一つの選択肢として考えられます。

(3)同居人との関係性が不明な場合

本件では、賃借人と連絡が取れていない状況ですので、同居人の方と連絡を取ることも困難である可能性が高いと考えます。

同居人との関係性が不明な場合、やはり、明渡請求訴訟において、同居人も被告としておくべきです。

ただし、この場合でも、同居人が対象建物を「占有」していることの立証は必要です。

そのため、(2)において前述したように、現地調査を行ったり、管理会社の協力を仰ぐ等して、証拠の収集をしていただくことが必要になります。 

同居人がいる場合に明け渡し請求を行う方法のまとめ

賃料を滞納している等の賃借人に対して明渡訴訟を提起する場合、同居人の有無や、同居人と賃借人との関係性を事前に調査するようにしてください。

そのあたりの調査を行わず、賃貸借契約書において記載されていた賃借人のみを相手方(被告)として訴訟提起をした場合、判決を獲得して、いざ強制執行という段階になって、実は、「独立の占有」を有する同居人がいたということが明らかになるかもしれません。

その場合、判決を獲得していない「独立の占有」を有する同居人に対しては強制執行手続きを取ることができません。

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