コラム Column

心理的瑕疵は土地にも該当するのか弁護士が解説


【相談】更地を購入する場合、その土地上にかつて建っていた建物の心理的欠陥は問題にならないのでしょうか。

私は、新しくマンションを建築する目的で土地を購入しました。

しかし、購入後、この土地上にかつて建っていた建物の中で、住人が殺害される事件があったと聞きました。

私は驚いて、売主に対し、契約不適合(民法改正前は「瑕疵」と呼ばれていました。)責任を追及することを伝えました。

しかし、売主は、あくまでも売買の対象は土地であり、その土地上にかつて建っていた建物の欠陥については、問題にならないと主張しています。

更地を購入する場合、その土地上にかつて建っていた建物の心理的欠陥は契約不適合に当たらないのでしょうか。

【回答】事件・事故の残虐性・重大性、報道の有無、事件・事故からの経過年数その他の事情によっては、心理的欠陥と判断される可能性があります。

たしかに、事件があった建物自体はなくなっており、嫌悪すべき心理的欠陥の対象が、もはや特定できないとも考えられます。

しかし、事件・事故の残虐性・重大性、事件・事故について報道される等して付近の住民の記憶に残っているか否か、事件・事故からの経過年数その他の事情によっては、たとえ事件・事故のあった建物自体がなくなっていたとしても、土地に心理的欠陥があると判断される可能性があります。

なお民法改正で「瑕疵」が「契約不適合責任」へと読み替えになった件については、「【弁護士解説】「瑕疵」が民法改正で「契約不適合責任」へ読み替えに」をご参考ください。

心理的瑕疵が土地にあると認められる場合とそうでない場合がある

今回、心理的瑕疵の有無が問題になっているのは、事故・事件が実際に起きた現場である建物ではなく、その建物がかつて建っていた土地になります。

このような場合において、土地に契約不適合があると認めた裁判例もありますし、認めなかった裁判例もあります

以下、ご紹介いたします。

なお、土地に契約不適合があると認めなかった方の裁判例については、売買契約当時、事件・事故のあった建物が残ってはいましたが、購入者はそれを建て壊して、新たな建物を建築する目的で売買契約を締結したという事情があります。

土地の心理的瑕疵に関する裁判例

土地の心理的瑕疵を認めなかった裁判例(大阪地裁平成11年2月18日)

<事案の概要>

原告は、土地上に新たに建物を建築して他に売却する予定で、土地と建物(以下、それぞれ、「本件土地」、「本件建物」といいます。)を購入しました。

購入後、原告は、約2年前に本件建物内で首吊り自殺があったことを知りました

原告は、首吊り自殺があったことは、心理的欠陥に当たると主張し、売買契約は錯誤により無効である等と主張しました。

<裁判所の判断>

裁判所は、心理的欠陥であると認めるに足りるその嫌悪の度合いは、通常一般人が本件土地上に新たに建築された建物を居住の用に適さないと感じることが合理的であると判断されることが必要であると述べました。

その上で、以下の事情を重視して、その嫌悪の度合いは、通常一般人が本件土地上の新たに建築された建物を居住の用に適さないと感じることが合理的であると判断される程度には至っていないとして、本件建物内において首吊り自殺があった事実は、瑕疵に該当しないと判断しました。

・本件土地について、かつてその上に存していた本件建物内で首吊り自殺があったということに過ぎず、嫌悪すべき心理的欠陥の対象は具体的な建物の中の一部の空間という特定を離れて、もはや特定できない一空間内におけるものに変容している。   

・原告が本件土地に買主となっても、およそ転売が不能であると判断することはできない。

土地の心理的瑕疵を認めた裁判例(大阪高裁平成18年12月19日)

<事案の概要>

原告は、被告から土地(以下、「本件土地」といいます)を購入したところ、約8年半前に、本件土地上にかつて建っていた建物内において、女性の刺殺体が見つかっていたことが判明しました

原告は、被告に対し、本件土地には心理的欠陥があったとして、損害賠償請求を行いました。

<裁判所の判断>

裁判所は、心理的欠陥に当たるか否かの判断基準として、「単に買主において同事由の存する不動産への居住を好まないだけでは足らず、それが通常一般人において、買主の立場に置かれた場合、上記事由があれば、住み心地の良さを欠き、居住の用に適さないと感じることに合理性があると判断される程度に至ったものであることを必要とする」としました。

その上で、以下の事情を重視して、本件建物を住み心地が良くなく、居住の用に適さないと感じることに合理性があると認められる程度の、嫌悪すべき心理的欠陥が存在すると判断しました。

・殺人事件は、女性が胸を刺されて殺害されるというもので、病死、事故死、自殺に比べても残虐性が大きく、通常一般人の嫌悪の度合いも相当大きい。

・殺人事件があったことは新聞にも報道されており、付近に多数存在する住宅等の住民の記憶に少なからず残っている。

・現に、本件土地の購入を一旦決めた者が、本件土地の近所の人から、殺人事件のことを聞き及び、気持ち悪がって、その購入を見送っている。

・本件土地上に新たに建築された建物を購入しようとする者が、同様に、殺人事件のことを聞き及ぶことも予測され得る。

土地の心理的瑕疵は事件の内容によって判断が分かれる

いずれの裁判例においても、かつて建っていた建物の中での事件・事故であるということから、「嫌悪すべき心理的欠陥の対象は具体的な建物の中の一部の空間という特定を離れて、もはや特定できない一空間内におけるものに変容している」旨を認定しています。

それでも契約不適合の有無に関して判断が分かれたのは、契約不適合を認めた方の裁判例は、①事件の残虐性が強いこと、②事件について新聞で報道されており、付近の住民の記憶に残っていること、③実際に気持ち悪がって、購入を見送った例があること等の事情を重視したところにあります。

本件でも、かかる事情等がある場合には、契約不適合があると認定される方向に働くものと考えられます。

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