コラム Column

マンションの区分所有者の同意なしで高圧受電方式に変更できるのか?


【相談】管理組合から各区分所有者に対し、マンションの受電方式変更の総会決議に基づき、現在の電力の個別契約の解約手続きの要請が来ました。この要請に従う必要があるのでしょうか。

私は、数年前にマンションの一室を購入しました。

今月、開催されたマンションの総会において、「今後のマンション全体の電力の供給方法を高圧受電方式に変更する旨の決議」および「区分所有者の個別契約(低圧契約)を禁止する旨の細則を設定する決議」がなされました。

そして、管理会社から各区分所有者に対し、現在の電力の個別契約(低圧契約)の解約手続きを要請する通知が届きました。高圧受電方式に変更する前提として、区分所有者全員が個別契約(低圧契約)を解約する必要があるそうです。

電力の供給方法を高圧受電方式に変更すると、定期的な停電があるとも聞いており、私は自宅で行っている仕事に支障が生じるため、個別契約(低圧契約)を解約したくありません。

私は、現在の電力の個別契約(低圧契約)を解約しなければならないのでしょうか。

【回答】決議は無効と判断される可能性が高く、要請に従う義務はないものと考えられます。

電力の個別契約(低圧契約)については、本来、各区分所有者が自由に判断すべき事項です。

「今後のマンション全体の電力の供給方法を高圧受電方式に変更する旨の決議」および「区分所有者の個別契約(低圧契約)を禁止する旨の細則を設定する決議」に関して、電力の個別契約の解約申入れを義務付ける部分は、無効と判断される可能性が高く、ご相談者は現在の電力の個別契約(低圧契約)を解約する義務はないものと考えられます。

総会決議の方法や種類については当コラム「マンションの大規模修繕【弁護士が総会決議の方法と種類を解説】」をご参考ください。

高圧受電方式(高圧一括受電方式)と低圧契約とは何か?

各家庭にある電源は、通常、100Ⅴのコンセントとエアコン等に使用する200Ⅴのコンセントの2種類です。

電力発電会社が発電して送り出す電気は、約27万500Ⅴから50万Ⅴと非常に高電圧です。

これを変電所において6600Ⅴに落として、さらに、電信柱等に設置された変圧器で100Ⅴと200Ⅴの電圧に落とします。

この変圧器を管理しているのが電力会社である場合、「低圧契約」になります。

他方、この従来の契約と異なり、変圧器を管理しているのが建物のオーナーや管理会社である場合、「高圧受電方式」になります。

高圧受電方式(高圧一括受電方式)のメリットとデメリット

高圧受電方式にするメリットは、低圧契約より電気料金が安くなり、建物のオーナーとしては建物の商品価値を高められる点があります。

他方、デメリットとしては、高圧受電方式の場合、建物一棟単位で契約を締結するため、各区分所有者が個別に電力会社を選択することができない点があります。

低圧契約を解約する義務はないと最高裁が判断

マンションにおける電力の供給は、共用部分である電気設備を通じて各区分所有者に供給されます。

そのため、マンション全体として高圧受電方式に変更すること自体は、共用部分の変更または管理に関する事項に該当し、総会決議により決定することができます(区分所有法17条1項、18条1項)。

他方、各区分所有者の個別契約(低圧契約)の解約に関する事項は、はたして総会決議により決定できるのでしょうか。

裁判所は、各区分所有者の個別契約(低圧契約)の解約に関する事項は、総会決議により決定できないと判断していますので、次項においてその最高裁判例をご紹介します。

最高裁平成31年3月5日判決

「今後のマンション全体の電力の供給方法を高圧受電方式に変更する旨の決議」および「区分所有者の個別契約を禁止する旨の細則を設定する決議」がなされた場合においても、各区分所有者は、これらの決議や細則に基づき、個別契約(低圧契約)を解約する義務はないと判断されました(最高裁平成31年3月5日判決)。

まず、「本件高圧受電方式への変更をすることとした本件決議には、団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付ける部分は、専有部分の使用に関する事項を決するものであって、団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決するものではない。したがって、本件決議の上記部分は、法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するものとはいえない」と判示しました。

つまり、共用部分は、各区分所有者の共有物であり、その利用・管理・処分は、区分所有者の多数決に基づく総会決議、及び総会決議に基づき定めた管理規約に従って行われるところ(区分所有法17条1項、18条1項、30条1項)、各居室の電力の個別契約については、区分所有者が有している専有部分の使用に関することであると判断し、電力の個別契約の解約申入れの義務付けに関する決議の効力を否定しました。

そして、区分所有者の個別契約を禁止する旨の細則については、「本件細則が、本件高圧受電方式への変更をするために団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付ける部分を含むとしても、その部分は、法66条において準用する法30条1項の『団地建物所有者相互間の事項』を定めたものではなく、同項の規約として効力を有するものとはいえない。」と判断しました。

つまり、電力の個別契約の解約申入れの義務付けについては、「建物所有者相互間の事項」にはあたらず、各区分所有者が自由に選択すべき事項であると判断しました。

高圧受電方式を新たに採用するには各区分所有者の理解を求める必要がある

上記最高裁判例の判断を前提とすると、マンションにおいて高圧受電方式を新たに採用する場合、区分所有者全員の個別契約(低圧契約)の解除が必要になることを考えると、結局、区分所有者全員の承諾が必要となるものと考えられます。

また、電気のみならず、ガス、水道、インターネット等の一括契約においても、同様の判断がなされる可能性はあります。

マンションにおいて一括方式を導入する場合には、管理組合や管理会社は、各区分所有者へ十分な説明を行った上で、各区分所有者の理解を求める必要があります。

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