コラム Column
弁護士(第二東京弁護士会)。
2017年に弁護士法人Martial Artsに入所し、不動産トラブルや賃貸借契約書に関する業務をはじめ、多分野にわたる法律業務に従事している。
目次|index
【相談】新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、管理組合総会の対応をどのようにすればよいのでしょうか。
私は、分譲マンションの管理組合理事長をしています。
毎年5月に管理組合総会を開いていますが、新型コロナウイルス感染症の影響により、外出自粛や「三蜜」を避けるよう注意喚起されている状況において、通常どおり開催するのはためらわれます。
しかし、マンション管理組合総会は1年に1回開催しなければならないと聞いており、やはり、5月に開催しなければならないのでしょうか。
一体、どのような対応を取ったらよいのでしょうか。
【回答】①書面による決議を行う選択肢、②議決権行使書又は委任状による決議を行う選択肢、③そもそも延期するという選択肢が考えられます。
①実際に管理組合総会を開催せず、書面による決議を行う選択肢、②管理組合総会を開催した上で、出席者を減らすために、議決権行使書又は委任状による決議を行う選択肢、③そもそも延期するという選択肢が考えられます。
また、マンション管理組合総会を年に1回開催しなければならないというのは、前年開催から1年以内の意味ではなく、年内に開けば足りるというものです。
たとえば、例年5月に管理組合総会を開くマンションであれば、今年は5月開催をやめ、今年の後半などに管理組合総会を開けば違法にはなりません。
マンション管理組合総会は、年間予算や管理会社との契約、管理組合の役員の選任等を行う重要な場です。
建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」といいます。)においては、総会は、「少なくとも毎年一回」招集しなければならないと定められています(区分所有法34条2項)。
管理組合総会は、通常、複数の区分所有者が1か所に集まって、必要事項について協議を行います。
新型コロナウイルス感染症の影響から、「三密」を避けるよう要請されている現状において、多くの区分所有者が1か所に集まる通常の方法による開催は避けるべきでしょう。
それでは、どのような対応が考えられるのでしょうか。
まず、考えられるのが、区分所有者が集まることなく、書面で管理組合総会の決議をする方法です。
しかし、書面による決議を実行するには全区分所有者の賛成が必要です(区分所有法45条1項)。
そして、決議する内容について全区分所有者の賛成が必要になります(区分所有法45条2項)。
そのため、戸数の少ないマンションにおいては、考えうる選択肢かもしれませんが、決議を行うにはかなりハードルが高く、現実的な選択肢とはいえません。
完全な書面決議の方法を取るのではなく、管理組合総会を開催した上で、区分所有者から議決権行使書又は委任状を事前に提出してもらう選択肢が考えられます(区分所有法39条2項)。
区分所有法39条2項は、「議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。」と規定しています。
議決権は区分所有者本人が管理組合総会に出席して自ら行使するのが原則ですが、区分所有者本人が管理組合総会に出席できない場合も考えられるので、区分所有者に「書面」又は「代理人」による議決権の行使が認められているのです。
この場合、理事長ら最低限の人数が管理組合総会に出席する必要があります。
管理組合総会への出席人数を最低限におさえて、「三密」を避けるよう努めることができます。
なお白紙委任状を使った総会については、当コラム「マンションの総会で白紙委任状をカウントした管理組合総会決議は無効になるか」で詳しく解説されていますので是非ご参考ください。
そもそも管理組合総会を延期する選択肢も考えられます。
マンション管理組合総会の延期に関して、法務省がサイトにおいて、以下のとおり、見解を示しています。
新型コロナウイルス感染症の影響により、管理者が選任された管理組合又は管理組合法人において、前年の開催から1年以内に建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」といいます。)上の集会の開催をすることができなくなった場合について、以下のとおりお知らせします。 区分所有法においては、管理者又は理事が、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならないとされ、集会において毎年1回一定の時期にその事務に関する報告をしなければならないとされていますが(区分所有法第34条第2項、第43条、第47条第12項、第66条)、前年の開催から1年以内に必ず集会の招集をし、集会においてその事務に関する報告をすることが求められているわけではありません。 したがって、今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、前年の集会の開催から1年以内に区分所有法上の集会の開催をすることができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後、本年中に集会を招集し、集会において必要な報告をすれば足りるものと考えられます。 |
つまり、管理組合総会を「年に1回」開催しなければならないというのは、前年開催から1年以内の意味ではなく、年内に開けば足りるというものです。
上述のとおり、たとえば、例年5月に管理組合総会を開くマンションであれば、今年は5月開催をやめ、今年の後半などに管理組合総会を開けば違法にはなりません。
なお、管理組合総会の延期の手続きについては、区分所有法において定めがありません。
管理規約に規定がある場合には、それに基づいて延期の手続きを行います。
管理規約に規定がない場合には、管理組合の業務の運営に当たる執行期間である理事会において、緊急時のやむを得ない対応として、管理組合総会を延期することを決議する等の手順を取ることが考えられます。
その場合には、区分所有者には、区分所有者の安全・安心のために、やむを得ない対応であることを書面等で丁寧に説明し、理解してもらう必要があります。
管理組合総会が延期された場合、次の役員が決まるまでの間、今の役員がそのまま就任し続けなければならないため、あまり長期間先延ばしにできないという事情もあります。
仮に、管理組合総会を予定通りに開催するとしたら、感染予防などの対策は必須ですし、議決権行使と委任状を増やし、直接参加する区分所有者の人数を極力減らすなどの工夫も必要になります。
また、できるだけ短い時間で総会が終わるように工夫することも課題になるでしょう。
もしマンションに関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします。
当サイトでは無料で弁護士などの専門家に相談することができますので、もしお困りの際は是非ともご利用ください。
無料会員登録はこちらから。
不動産投資DOJOでは、弁護士や税理士などの専門家に無料相談可能です。
専門家からの回答率は94%以上。
会員登録(無料)で、どなたでもご利用いただけます。
会員登録(無料)していただいた方には、「不動産投資を学べるeBook」のプレゼント特典もあります。ぜひご登録ください。
「人生を変える不動産投資を学べる堀塾を運営しています。不動産投資を学びたいのなら、ぜひご検討ください。
体験セミナーを募集中です。」
体験セミナー詳細はこちら
森 春輝さんのバックナンバー
▶森 春輝さんのコラムをもっと見る