コラム Column
弁護士(第二東京弁護士会)。
2017年に弁護士法人Martial Artsに入所し、不動産トラブルや賃貸借契約書に関する業務をはじめ、多分野にわたる法律業務に従事している。
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【相談】宅建業者が損害賠償に任意に応じない場合どうすればよいですか。
宅建業者である不動産会社に不動産売却の仲介を依頼したのですが、業者の不適切な対応のせいで1000万円もの損害を負わされてしまいました。
業者相手に訴訟を提起し、こちらの請求を認める判決が出たにもかかわらず、業者はお金がないといって支払ってくれません。
この場合、どうすれば回収できるでしょうか。
【回答】営業保証金又は弁済業務保証金の還付請求をすることが考えられます。
相手方である宅地建物取引業者(以下「宅建業者」といいます。)の宅地建物取引業保証協会加入の有無に応じて、供託所から営業保証金又は弁済業務保証金の還付を受けることにより損害賠償金を回収することができると考えられます。
宅建業法は、宅地建物取引業者と宅地建物取引をした相手方(宅建業者を除く)に損害が発生した場合にその損害を填補することのできる金銭をあらかじめ供託し、実際に宅建業者との宅地建物取引業に関する取引により損害が発生した場合には、この供託された金銭の還付を請求することのできる制度を設けています。これを営業保証金制度・弁済業務保証金分担金制度といいます(宅建業法27条1項、68条の8第1項)。
営業保証金制度・弁済業務保証金分担金制度は、宅建業者と取引をする相手方を保護するとともに、宅建業者が関与する宅地建物取引に関する社会一般の信用性を高め、取引の円滑化を図ることを目的としています。
宅建業者が宅地建物取引業に係る事業を開始するには、上記の営業保証金を供託するか、弁済業務保証金分担金を納入して宅地建物取引業保証協会(公益社団法人全国宅地建物取引保証協会又は公益社団法人不動産保証協会)に加入する必要があります。
宅建業者が宅地建物取引業保証協会に加入しない場合、宅地建物取引業に係る事業を開始するには供託所に営業保証金を供託しなければなりません。
供託する営業保証金の金額は、主たる事務所につき1000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円です。例えば、主たる営業所のみの場合は1000万円、主たる営業所及びその他の営業所が3か所ある場合は2500万円の供託がなされることになります。宅地建物取引により損害を受けた者は、この供託された金額の範囲内で還付をけることができます。
営業保証金の還付は、供託規則及び宅地建物取引業者営業保証金規則に基づいて行われます。宅地建物取引により生じた債権を有している者は、以下の手続によって営業保証金の還付を請求します。
まず、営業保証金によって保護されるのは宅建業者でない者に限られますので、国土交通大臣に対し、取引時に宅建業者ではないことを確認する書面の交付を申請し、この確認書の交付を受ける必要があります。
その後、供託物払渡請求書を供託所に提出します。この供託物払渡請求書には上記確認書及び供託物の還付を受ける権利があることを証する書面として確定判決や和解調書を添付します。また、供託規則が定める通知書3通も添付する必要があります。
以上の手続により、宅建業者が供託した営業保証金から還付を受けることができます。
宅建業者が宅地建物取引業保証協会に加入する場合、営業保証金の供託をする必要はありません。その代わりに、弁済業務保証金分担金を加入する宅地建物取引業保証協会に納入しなければなりません。納入する弁済業務保証金分担金の金額は、主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円です。納入を受けた宅地建物取引業保証協会はその金額を供託所に供託します。
宅建業者が納入し、供託される金額は営業保証金よりも少ない金額ですが、宅地建物取引により損害を受けた者は、宅建業者が宅地建物取引業保証協会に加入せず営業保証金を供託した場合の金額の範囲で還付を受けることができます。
例えば、取引を行った宅建業者に主たる営業所及びその他の営業所が3か所ある場合、宅建業者が宅地建物取引業保証協会に納入する弁済業務保証金分担金の金額は150万円ですが、宅地建物取引により損害を受けた者は2500万円の範囲で弁済業務保証金から還付を受けることができるのです。
弁済業務保証金の還付を受ける場合は、営業保証金と異なり、宅地建物取引業保証協会の認証を受けなければなりません。認証とは、宅地建物取引業保証協会が弁済業務保証金の還付を受ける権利の存在及びその額を確認して証明することをいいます。
認証を受けるためには、宅地建物取引業保証協会の各地方本部に対して、認証の申出書を提出する必要があります。この認証の申出書には、以下の書面を添付します。
認証の申出を受けた宅地建物取引業保証協会は、認証の申出に係る債権について弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有するかについて判断します。もっとも、宅地建物取引業保証協会は、当該申出に理由がないと認める場合を除き、営業保証金の額に相当する金額の範囲内において、当該申出に係る債権を認証しなければなりません。
そして、宅地建物取引業保証協会から認証を受けた者は、供託所に対し、認証を受けた金額について弁済業務保証金の還付請求を行います。
以上の手続により、宅地建物取引業保証協会が供託した営業保証金から還付を受けることができます。
宅建業者を相手とする宅地建物取引による損害賠償について確定判決がある場合、強制執行手続をせずとも営業保証金や弁済業務保証金から還付を受けることができます。相手方たる宅建業者に弁済の資力がない場合でも、これらの手続きによって債権を回収することのできる可能性がありますので、相手方が任意に対応しない場合は営業保証金又は弁済業務保証金の還付手続を検討してみましょう。
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