コラム Column
2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立。契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っている。
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【相談】セットバック部分に車をはみ出して駐車しても大丈夫ですか?
自宅前の道路の一部は、私の所有地(いわゆるセットバック部分)です。このセットバックの道路部分に私の車をはみ出して駐車をしても問題ないでしょうか?駐車違反で取り締まられるリスクはあるのでしょうか?
【回答】セットバック部分が道路として使用されている場合は、はみ出して駐車できません。
結論として、既にセットバック部分が道路として使用されているのであれば、はみ出して駐車することはできません。場合によっては駐車違反で反則金を課されるリスクもあります。セットバック部分として道路に指定されているものの、現状は道路として使用されていないのであれば、通行の妨げにならない範囲内で駐車することもできますが、できれば控えておいた方が良いでしょう。
この記事では現役の弁護士が
などについて解説します。
結論としては、セットバック部分の道路に車をはみ出して駐車することはできませんが、道路拡張前であれば駐車することができます。
セットバックとは、道路拡張するために敷地を後退させることをいいます。法律上の根拠としては、建築基準法が挙げられます。建築基準法42条2項において、行政庁が道路として指定した部分を道路とみなすと定められています。セットバックは、同条項に基づいて道路に指定された部分のことを指します。2項により指定される道路なので、セットバック部分のことを「2項道路」と表現したりすることもあります。
なぜセットバック(敷地を後退)させる必要があるのかについてですが、それは建築基準法において、「道路」とは幅員4メートル以上の必要があると定められていることに起因します。
自動車を含めた人々の往来の確保や、急病人が出た場合、火災、地震などの場合に、救急車・消防車、警察車両などの緊急車両が通れるようにするためなどの目的のもと、建築基準法では、道路の幅は4メートル以上が必要であると定められています。
しかし、建築基準法が整備される以前から存する昔ながらの道などでは4メートルの道路幅を確保できていない場合も多いです。
そこで、建築基準法42条2項では、このような交通の円滑化と防災の観点から、幅4メートル以内の道路に接道している土地について、行政庁が道路として指定して道路とみなすことができると定めているのです。同法により道路に指定された土地については、建て替えや新築物件を建てる際は、4メートルの道路幅を確保するよう接道からセットバックさせて公共の道路として提供することを義務付けられることになります。
つまり、セットバックすると、土地の所有権はそのままですが、セットバック部分の土地は道路として使われることになるため、所有者はセットバック部分を自由に使えなくなるのです。
行政から2項道路に指定された土地に関して、指定されれば直ちに道路として使用されることになるわけではありません。既存の建物が存する場合に、直ちに撤去すべき義務が生じるわけではなく、既存建物の取り壊して新たな建物を建てる場合に、セットバック部分は道路として使用されることになるため、セットバック部分上には建物や壁が建てられないということになります。
つまり、道路指定されてセットバックが義務付けられたとしても、道路として拡張される前であれば、ある程度自由に使うことができます。
ただし将来道路になる予定の土地ですので、地中に何かを埋め込んだり、花壇のように土台を組むなど、すぐに移動できないものを設置することは原則としてできません。
道路へと拡張される前において、車庫証明が取得することができるかどうかですが、基本的には取得できず、ただ、例外的に取得できるケースもあるようです。
車庫証明を取得できるかどうかについては、「自動車の保管場所の確保等に関する法律」という法律により決まります。同法3条では、「自動車の保有者は、道路上の場所以外の場所において、当該自動車の保管場所を確保しなければならない。」と定められています。セットバック部分は、建築基準法上は「道路」とみなされますので、自動車が保管できる「道路上の場所以外の場所」に当たりません。つまり、法律を原則通りに適用すれば、セットバック部分を自動車の保管場所とすることはできず、車庫証明は取得できないということになります。
ただ、実態として、セットバック部分が含まれている場合でも車庫証明が取得できるケースもあるようです。これは、所轄官庁の違いにより生じるものとされています。2項道路は、国土交通省の管轄です。これに対して、車庫証明書は警察署長が発行します。警察署は、自動車所有者から車庫証明書の申請を受けて、車庫証明の可否について判断することになりますが、2項道路について正確に把握できていないために誤って車庫証明書を発行してしまったり、また、警察署が現地調査した結果、道路拡張の予定がなく通行の妨げにならないために車庫証明の発行を可と判断したりするケースもあるようです。
しかし、これらはあくまでも例外的な事象です。基本的には道路拡張前であっても、セットバック部分を自動車保管場所として車庫証明書を取得することはできないと考えておいた方が良いでしょう。
セットバック部分について、現実に道路拡張が実行され、道路となっている場合には、車をはみ出して駐車することはできません。当然ながら、道路となっている以上はそこを通行する車、人がおり、そこをはみだして車を停めると通行の妨げになってしまうからです。
また、道路として扱われるため、すぐに移動できる植木鉢なども置くことができなくなります。
したがって、車庫証明は取得することができず、道路拡張前に車庫証明を取得していたとしても継続することはできません。
自分の土地なのだから好きなように使って良いだろうと考える方もおられるでしょう。
しかし道路になったセットバック部分にはみ出して車を駐車すると、無用なトラブルを招く恐れがあります。
まずセットバック部分は「道路」ですので、セットバック部分にはみ出して車を駐車するということは、道路標識等によって駐車が禁止されていれば道路交通法に違反し駐車違反とされてしまう場合もあります。加えて公共の道路を私的利用しているわけですから近隣住民からの苦情が寄せられる可能性も考えられるでしょう。
また、道路にはみ出して駐車しているため、走行中の車がぶつかってしまうなど事故を引き起こすリスクが高いといえます。
道路となったセットバック部分に車がはみ出してしまう場合は、駐車場を借りるなどしてトラブルを避けることをおすすめいたします。
上記のようにセットバックには多くの制限が課せられます。
そのため家を新築したり建て替えたりする際にセットバックを拒否したいと考える人もおられると思います。
しかし建物を建築する際には市区町村から建築確認を得る必要がありますが、セットバック部分に建物の一部がかかるような設計内容では、建築確認を得ることはできません。セットバックを拒否するためには、2項道路の指定が違法であることの確認を求めるなど、法律上の手続きを取る必要がありますが、現実的にこうした請求が認められる可能性は低いと言えます。
セットバックして道路となった部分は、所有する土地でありながら自由に利用できないという制限がかけられてしまうため注意が必要です。購入前にセットバックの制限がないかどうかを確認するようにしましょう。もし、セットバックがあるのに売主や仲介業者が偽って販売した場合には、売主・仲介業者に対する損害賠償請求を検討すべきでしょう。
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