コラム Column

建築物は著作物?デザインを真似されたら損害賠償請求は認められるか【弁護士が解説】


【相談】こだわって設計したデザインの建物とそっくりの建物が作られるなどしました。

私が建築士として設計を行ったうえで建てた建物があります。こだわりのデザインが評価されて一時期話題になったのですが、そっくりの建物を勝手に作られてしまいました。また、私の建物が無断で撮影されて関係のない会社の広告に使われています。何か対応策はありますでしょうか。

【回答】建築物のデザイン的な面に着目した請求は、認められにくいでしょう。

建築物の著作物性は認められにくい傾向にある

著作物として著作権法による保護を受けることができる場合に、法律の世界では「著作物性が認められる」というような言い方をします。

著作物になるものとしては、小説や音楽、絵画、映画等があげられますが、これらと比較して建築物の著作物性は認められにくい傾向にあります。

なぜかといいますと、建築物は人の生活基盤になる実用的なものなので、著作権法による保護を広く与えると、類似の住宅が作りづらくなって人の営みに大きな影響が生ずるからです。

このようなことから、そっくりの建築物を作ったこと(これを著作権法上は、複製といいます)が著作権侵害にあたるとして損害賠償請求をしても、そもそも建築物に著作物性がないことを理由に損害賠償請求が認められないと判断されてしまう可能性が高いといえます。

この点について、次の裁判例が参考になります。

グルニエ・ダイン事件

大阪高裁平成16年9月29日判決(平成15年(ネ)第3575号)

<事案の概要>

積水ハウス株式会社が、注文住宅「グルニエ・ダインJX」という高級住宅を開発し、その建築・販売を行っていたところ、株式会社サンワホームがこの建物を複製して住宅展示場に展示し、販売したとして、損害賠償請求等をしたという事案です。

<判決の要旨>

大阪高裁は、まず、「一般住宅が同法〔著作権法〕10条1項5号の『建築の著作物』であるということができるのは、客観的、外形的に見て、それが一般住宅の建築において通常加味される程度の美的創作性を上回り、居住用建物としての実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となり、建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形美術としての美術性を備えた場合と解するのが相当である。」という一般論を述べました。

難しい言い回しをしていますが、建築物に著作物性が認められるには、太字部分のような要件を充足しなければならないということです。

そのうえで、大阪高裁は、積水ハウス株式会社の注文住宅「グルニエ・ダインJX」は、「造形美術としての美術性を具備しているとはいえない」として著作物性を否定し、積水ハウス株式会社の株式会社サンワホームに対する損害賠償請求等を認めませんでした。

「グルニエ・ダインJX」は、平成10年10月に「平成10年度グッドデザイン賞」を受賞しています。それでも著作物性が認められていないことから、建築物の著作物性が認められるハードルは非常に高いことがうかがえます。

著作権の侵害による損害賠償請求の成否

上記のような高いハードルを越えてご質問者様の建築物が著作物であると認められた場合には、

そっくりの建築物が作られたことについては、複製権(著作権法21条)という著作権の侵害があることを理由として損害賠償請求が認められる可能性があります

他方で、

建築物が無断で撮影されて広告に使われたことについては、複製権をはじめとする著作権侵害を理由とした損害賠償請求は認められません

このような違いが生ずる理由は次のとおりです。

著作権法46条柱書で、原則として建築の著作物は、いずれの方法によるかを問わず、利用することができるとされています。

建築の著作物は恒常的に人の目につくところにあるので、著作権者の権利主張を広く認めて一般人の通常の行動を抑制してしまわないようにすることを目的としています。

この定めにしたがい、②の場合は、著作権侵害は成立しないことになります。

しかし、著作権法46条2号で、例外的に建築の著作物を建築により複製することは認められていません

建築による複製は、一般人の通常の行動とまではいえないので、上記の目的があてはまらないからです。

この定めにより、①の場合は、著作権(複製権)侵害が成立し得ることになります。

まとめ

このように、建築物は、その実用性や人目につくところにあるといった特徴から、著作権法上の保護を受けにくいという性質を有しているといえます。

また、上記の裁判例では、不正競争防止法や民法に基づく主張もなされていますが、簡単な理由付けで否定されています。

以上のことから、建築物のデザイン的な面に着目した法的な請求は、一般的に認められにくいと言わざるを得ません。

建築士をはじめとする建物のデザインに関わりを持つ方は、この点について良く考えておく必要があるでしょう。

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