コラム Column

マンションにおける騒音トラブルの法的対処法を弁護士が解説


【相談】隣の部屋の住人が大音量でギターを演奏するため、不眠になってしまいました。

マンションの隣の部屋の住人が深夜にも大音量でエレキギターを演奏するため、不眠になってしまいました。どのような対応ができるのでしょうか。

【回答】損害賠償請求や差止請求をすることが考えられます。

 

マンションの騒音トラブルで行うべきことの結論

慰謝料、治療費、騒音測定費用等について不法行為に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。

また、騒音の差止めをするために、人格権や区分所有権に基づく妨害排除請求をすることも考えられます。

妨害排除請求について知りたい方は、当コラム「【私道トラブルの判例を紹介】妨害排除請求について弁護士が解説」をご参考ください。

騒音が受忍限度を超えれば損害賠償請求も可能な判例

騒音につき不法行為に基づく損害賠償請求がなされる場合、裁判所において受忍限度論という法理論が問題になることが多いです。

受忍限度論とは、騒音が違法な権利侵害又は法益侵害にあたることが不法行為に基づく損害賠償請求が認められるために必要であり、違法な権利侵害又は法益侵害にあたるかどうかは、受忍限度を超えているか否かにより判断するというものです。

この点について、次の裁判例が参考になります。

騒音トラブルの裁判の判例

東京地裁平成24年3月15日判決(判時2155号71頁)

裁判の概要

分譲マンション内に居室を所有している原告が、その階上の居室を所有している被告に対し、子どもによる飛び跳ね、走り回りなどの騒音が不法行為にあたるとして損害賠償請求等をしました。

※実際には他にも原告がいましたが、簡潔にするため、ポイントとなる原告に絞ってご説明いたします。

判決の要旨

東京地裁は、まず、マンション外壁や床の構造、防音緩衝材の遮音性能、騒音発生の時間帯、騒音レベル、音の種類等から、被告の子どもが一定の時間帯、頻度で被告が所有する居室内で飛び跳ね、走り回るなどして、重量衝撃音という騒音を発生させたことを認定しました。

そして、居室内で被告の子どもが飛び跳ね、走り回るなどして、階下の原告の部屋で重量衝撃音を発生させた時間帯、頻度、騒音レベルについて、静粛が求められあるいは就寝が予想される午後9時から翌日午前7時までの時間帯で騒音レベルの値が40(db)を超え、午前7時から同日午後9時までの時間帯でも騒音レベルの値が53(db)を超え、生活実感としてかなり大きく聞こえ相当にうるさい程度に達することが相当の頻度であり、このような騒音を階下の居室に到達させたことは、原告の受忍限度を超えるものとして、不法行為を構成すると示し、原告の94万500円(慰謝料30万円、騒音測定費用64万500円)の損害賠償請求を認めました。

要するに、騒音の有無マンションの造りや音の性質に着目して判断したうえで、騒音の時間、頻度、程度等を考慮して受忍限度を超えるか否かを判断したものが上記の裁判例であるとまとめることができます。

本件は、ご質問者様が不眠になる程の大音量で深夜にエレキギターが鳴らされていたということですから、受忍限度を超えており不法行為を構成するとして、損害賠償請求が認められる可能性が十分あるといえるでしょう。

人格権ないし部屋の所有権に基づく妨害排除請求としての差止請求

一般に不法行為(民法709条)があった場合には、損害賠償請求により金銭賠償を求めることのみが認められ、不法行為(騒音)自体の差止めを求めることはできないとされています。

そこで、差止めをするための別の法律構成である、人格権(※)や部屋の所有権(マンションについては区分所有権)に基づく妨害排除請求として、騒音の差止請求をすることが考えられます。

※人格権とは、法的に保護される生活利益で、人格と密接不可分の関係にあるもののことをいいます。

この点についても、上記と同じ裁判例が差止めを肯定する判断をしており参考になります。

東京地裁は、上記のように受忍限度を超えるとし、人格権ないし部屋の所有権に基づく妨害排除請求としての差止めの対象となるとして、午後9時から翌日午前7時までの時間帯で騒音レベルの値が40(db)を超え、午前7時から同日午後9時までの時間帯で騒音レベルの値が53(db)を超える限度の部分にかぎって差止めを認めました。

他方で、次のように差止めを否定した裁判例もあります。

騒音トラブルを否定した裁判例

東京地裁八王子支部平成8年7月30日判決(判時1600号118頁)

裁判の概要

マンションの床をフローリングに変更したことで騒音被害・生活妨害が生じたとして、侵害行為の差止めの可否について争われました。

判決の要旨

まず、東京地裁八王子支部は、騒音による人格権等の侵害等に基づく妨害排除としての差止請求が認められるか否かは、侵害行為を差し止めることによって生ずる加害者側の不利益と差止めを認めないことによって生ずる被害者側の不利益とを、被侵害利益の性質・程度と侵害行為の態様・性質・程度との相関関係から比較衡量して判断されるとの一般論を示しました。

そして、リフォームをした部屋の所有者に対し相応の費用と損害をもたらし、費用折半で改装工事をする等の管理組合の総会の勧告が有効になされ、被害者らも一旦は有効に受け入れた経緯を踏まえると、差止請求を認めるほどの違法性があるとはいえないと判断しました。

※この判決でも不法行為に基づく損害賠償請求は認められているため、差止めの方が認められるためのハードルが高い可能性があるといえます。

以上のように、個別具体的な騒音の状況等を踏まえ、差止めの可否が判断されていますので、本件で差止めが認められるかは悩ましいところですが、騒音によって不眠症にまで至っているということを踏まえると、差止めが認められる可能性はあるでしょう。

騒音トラブルの法的対処法のまとめ

マンション住民間で問題となる騒音は、本件以外にも、フローリングの生活音やミュージックプレイヤーやテレビの大音量での使用、ペットの鳴き声等の様々な要因によって起こります。そして、これらの例からも分かるように身近な問題として誰にでも起こり得るものといえます。

適切な法的措置を把握しておくことは、トラブルが生じた初期段階での注意や交渉においてもひとつの判断材料となりますので、マンションの住人や管理者の皆様は本稿で取り上げたことを是非覚えておいて頂けますと幸いです。

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