コラム Column

共有物分割請求の方法


【相談】共有不動産の持分を現金化したいが,持分を売却できないときはどうすればよいか。

数年前に父が亡くなり、賃貸用アパートを弟と持分2分の1ずつ相続しました。当初は2人でアパートを経営していこうと話していましたが、私は今後自分一人で不動産投資を行うことを検討しており、そのためにアパートを売却してある程度まとまったお金が欲しいと考えています。

 

他方、弟はアパート経営を続けていきたいと言っていますので、アパートを売却することができません。現状弟が主にアパート経営をしている状況です。私の共有持分を弟に売却することも提案しましたが、売買代金について同意が得られませんでした。ただ、弟は、私がアパート経営から手を引くのであれば、アパートを単独で取得したいと言ってきています。

 

この場合、私はどのように対応すればよいでしょうか。

 

【回答】共有物分割請求により共有持分を現金化できる可能性があります。

 

ご回答

ご自身の共有持分を現金化するために、共有物分割請求をしていくことが考えられます。

 

共有物分割とは

共有物分割とは、共有物について共有状態を解消し、単独所有に変更する手続きです。

 

共有物は保存行為であれば各共有者が単独で行うことができますが(民法252条ただし書)、管理行為は共有者の過半数が必要ですし(民法252条本文)、処分行為には共有者全員の同意が必要です(民法251条)。

 

特に収益用アパートは、部屋を賃貸したり、リフォームを行ったりと、居住用不動産と比べてアパート経営のために行わなければならないことが多いですので、共有者間で対応方針が一致しないと経営自体が困難になることがあります。

 

このような共有状態の不都合性を解消するため、共有物分割請求という制度が設けられています(民法256条1項)。

 

共有物分割によって共有状態を解消する類型としては、現物分割、換価分割及び価格賠償の3つの類型があります。

 

現物分割とは、共有物を共有持分に応じて物理的に分ける方法です。通常建物については現物分割をすることはありません。

 

続いて、換価分割とは、共有物を第三者に売却し、売却代金を共有持分割合に応じて分ける方法です。

 

そして、価格賠償とは、共有物を共有者1人の単独所有とし、単独所有となった者が他の共有者に対して賠償金を支払う方法です。価格賠償による分割は判例により認められた類型であるところ、最判平成8年10月31日民集50巻9号2563頁は、「共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきである。」と判示しています。

 

本件では、アパートを単独所有したいわけではなく、共有持分をお金に換えることが目的ですから、換価分割又は価格賠償という方法で共有物分割を請求していくことが考えられます。

 

共有物分割の手続

共有物分割の手続きとしては共有物分割協議と共有物分割訴訟があります。

 

共有物分割請求の場合、民法258条1項において,共有物の分割について共有者間で「協議が調わないとき」は共有物分割を裁判所に請求することができると定められておりますので、いきなり訴訟を提起することはできません。

 

そのため、まずは共有物分割請求をする旨の通知を発送するなどして、共有物分割協議を開始します。共有者全員で分割方法の合意ができた場合には、協議による共有物分割が成立します。

 

共有物分割協議を行ったけれども、「協議が調わないとき」は、共有物分割請求訴訟を提起していくことになります。訴訟の場合、訴訟内でも和解交渉を行うことが通常ですが、最後まで和解が整わなければ、最終的に裁判官の判決によって分割の類型と、具体的な分割方法が決定されます。

 

共有物分割訴訟

共有物分割請求訴訟では、最終的には裁判所の判決により分割類型が決定されるところ、これまでの裁判例の蓄積により裁判所が分割の類型を選択する際の基準が形成されています。

 

まず、価格賠償を希望する共有者が存在する場合、上記判例による価格賠償の要件を満たすかが判断されます。

 

続いて、価格賠償による分割が認められない場合は、現物分割が検討されます。

 

最終的に現物分割も認められない場合は、補充的に換価分割が検討されることになります。

 

本件では、売買代金について弟様と合意に至らなかったけれども,弟様が単独でアパート経営をしていきたいと言っていますので、価格賠償の類型で分割することに異論は出ないのではないかと思います。

 

価格賠償の場合、賠償金額も決定しなければならないところ、当事者間で不動産の評価額の見解が一致している場合は、その金額を前提に判断されます。当事者間で見解が一致しない場合は、最終的には不動産鑑定士による鑑定評価を行い、その鑑定評価を基に裁判所が適正な賠償金額を決定します。

 

上記の共有物分割の手続きにより、アパートの共有持分を現金化することができると考えられます。

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