コラム Column

不動産売買契約の成立時期


【相談】買付証明書や売渡承諾書を売買契約の成立を証する書面とすることはできるのでしょうか。

不動産売買契約書の作成より前に、実務では、買付証明書や売渡承諾書を作成することがありますが、これらの書面を売買契約の成立を証する書面とすることはできるのでしょうか。

【回答】買付証明書や売渡承諾書が売買契約の成立を証する書面となることは、原則としてありません。

買付証明書や売渡承諾書での契約の成否が争われた裁判例は少なくありませんが、買付証明書や売渡承諾書が売買契約の成立を証する書面となることは、原則としてありません。

売買契約の成立について

売買契約が有効に成立すると、売買契約の効果として、売主から買主に対する代金支払請求権や、買主から売主に対する目的物の引渡請求権が発生します。

契約当事者間で契約上の権利義務や所有権帰属に関して紛争が生じた場合には、売買契約が成立したかどうか、それが有効かどうかが重要な争点になります。

そして、売買契約の成立時期はいつかが問題となります。

不動産売買のプロセス

不動産の買受希望者は、不動産業者の広告を見たり、不動産業者に問合せを行う等して、不動産についての情報を収集し、自らの希望の条件に合致しそうな不動産を選択します。

そして、当該不動産の所在地に出向いて、現況を調査し、不動産の権利関係・性質・形状・価格等について、売主や不動産業者から説明を受けます。

その後、売主側と買主側は、条件についての交渉を開始します。

交渉の経過において、買受希望者から「買付証明書」、売主から「売渡承諾書」等の文書がそれぞれ交付されることがあります。

最終的に条件が調えば、売主・買主の双方が契約書へ署名・押印をして、契約締結が完了します。

このように、交渉開始から契約締結までの間に、さまざまな交渉プロセスを経て、最終的に契約書が作成されます。

そうすると、どの段階で申込みの意思表示があり、どれが承諾の意思表示に当たるかは必ずしも明白であると言えず(※1)、しばしば契約の成立時期が問題になるのです。

関連記事:【初心者必見】不動産投資物件の購入までの流れを9ステップで解説

※1 民法においては、契約は、申込みと承諾の意思表示の合致により成立すると説明されます。そして、契約自由の原則により、契約の成立や効力発生のためには、方式は必要とされず、当事者の合意だけで完全な効力を生じるのが原則とされます。

不動産売買契約の成立をめぐる裁判例

(1)買付証明書・売渡承諾書が作成された時点

不動産売買において、買受希望者が「買付証明書」という文書を作成して売主に交付したり、反対に、売主が「売渡承諾書」という文書を作成して買主に交付する例は多くあります。

「買付証明書」や「売渡承諾書」においては、通常、対象不動産を特定する情報、代金額、売主と買主の住所・氏名が記載され、当事者の押印がなされています。

買付証明書や売渡承諾書が売買契約の成立を証する書面と解することができないというのが、一般的な法意識です。

たとえば、東京地判昭和63年2月29日は、以下のとおり、買付証明書と売渡承諾書のみでは売買契約は成立しないと判断しています。

「売買契約が成立するためには、当事者双方が売買契約の成立目的としてなした確定的な意思表示が合致することが必要である」とした上で、「当事者双方が売買の目的物及び代金等の基本条件の概略について合意に達した段階で当事者双方がその内容を買付証明書及び売渡承諾書として書面化し、それらを取り交わしたとしても、なお未調整の条件についての交渉を継続し、その後に正式な売買契約書を作成することが予定されている限り、通常、右売買契約書の作成に至るまでは、今なお当事者双方の確定的な意思表示が留保されており、売買契約は成立するに至っていないと解すべき」であるとしています。 

(2)協定書・覚書が作成された時点

不動産売買の本契約とは別に、その前段階で取り交わされた協定書・覚書でもって、契約が成立したか否かが問題になることがあります。

協定書・覚書が作成された段階での売買契約成立については、否定する裁判例が多いですが、以下、肯定された裁判例をご紹介します。

仙台地判昭和62年6月30日では、不動産仲介会社が売主に対して仲介業務に係る報酬請求を行った事案において、売買契約の成否が争われました

「被告と」購入希望者「との間には、右の時点で本物件の所有権を被告から」購入希望者「に移転すること及び後者が前者に代金20億円を支払うことについての合意が成立し、残されているのは登記手続、引渡及び代金支払の各債務の履行だけであり、」「覚書作成の際の合意は単なる下話とか予約ではなくて、民法555条に該当する双方意思の合致であると見る」べきであると判断されました(※2)。

※2 ただし、本判決は、売主・買主との間で契約の成否が問題となったものではなく、不動産仲介業者が売主に対して報酬請求した事案において、覚書による売買契約の成立を認め、これにより報酬請求権が発生したものである点で注意が必要です。

(3)契約書が作成された時点

売買契約書が作成された場合に、少なくともその時点で契約の成立が認められることに異論はありません。

最後に

正式な売買契約書が作成される前であっても、売買に関する条件がどの程度決定していたかによって、売買契約の成立が認められる余地があります。

ただし、不動産売買については、正式な不動産売買契約書を締結することによって確定的に意思表示をしたことになるというのが、一般的な法意識であるといえます。

もし不動産売買に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします

当サイトでは無料で弁護士などの専門家に相談することができますので、もしお困りの際は是非ともご利用ください。

無料会員登録はこちらから。

不動産投資DOJOでは、弁護士や税理士などの専門家に無料相談可能です。

専門家からの回答率は94%以上

会員登録(無料)で、どなたでもご利用いただけます。

会員登録(無料)していただいた方には、「不動産投資を学べるeBook」のプレゼント特典もあります。ぜひご登録ください。

人生を変える不動産投資を学べる堀塾を運営しています。不動産投資を学びたいのなら、ぜひご検討ください。 体験セミナーを募集中です。」
体験セミナー詳細はこちら

記事が役に立ったらシェア!