コラム Column

共有不動産の賃貸に共有者の同意は必要?


【相談】過半数の共有持分を有している賃貸用建物について、他の共有者の同意を得ずに賃貸借契約を締結した場合、契約は有効でしょうか。

相続したビルを兄弟で共有しており、それぞれの共有持分は私が3分の2、弟は3分の1です。このビルは相続前からフロアごとに賃貸しており、私と弟が相続してからも、賃貸用として扱ってきました。

このたびテナントのひとつが退去することになったところ、私の知人が空いたフロアを使わせてほしいと言ってきました。この知人に賃貸したいと思っていますが、弟はこれに反対しています。なんでも、この知人と弟は前々からそりが合わなかったようです。

今から賃借人を募集してもいつ賃借人が入るかわかりませんので、早く賃料収入を確保するという点からもこの知人に貸した方がいいと思い、弟の同意を得ないまま、相場通りの賃料で知人と賃貸借契約を締結しました。

弟は、共有者の同意を得ずにした賃貸は無効だと言ってきますが、有効とはいえないでしょうか。

【回答】もともと賃料収入を目的とする事業が行われていた場合、共有者の共有持分の過半数によりなされた賃貸借契約は有効です。

共有建物は、共有者全員の同意がなければ賃貸できないのが原則ですが、もともと賃貸による収益を目的とする事業が行われていた場合には、賃貸借契約の締結は管理行為であり、共有者の持分の過半数で決定することができます。

本件では、お兄様は共有持分の過半数である3分の2を有していますので、知人の方との間の賃貸借契約は有効であると考えられます。

共有持分を解消する方法については「【買取り・売却も可能】共有持分を解消するための3つの方法」をご参考ください。

共有物に関する行為

共有物に関する行為として、変更(処分)行為、管理行為、保存行為という3つの行為があります。

変更(処分)行為とは、共有物の性質を変更させる程度の物理的変化を伴う行為や、法的に処分する行為をいいます。変更(処分)行為は、共有者全員の同意がなければ行うことはできません(民法251条)。

管理行為とは、共有物の性質を変えない範囲内の利用行為や改良行為をいいます。管理行為に関する意思決定は、共有者の共有持分の過半数で行うことができます(民法252条本文)。

保存行為とは、共有物の修繕等、共有物の物理的な現状を維持し、他の共有者に不利益が及ばない行為をいいます。保存行為は、各共有者が単独で行うことができます(252条ただし書き)。

共有物の賃貸

共有物を賃貸する場合、民法602条の短期賃貸借の期間(一般的な土地賃貸借は5年、建物賃貸借は3年)を超える期間の場合は、共有者による当該目的物の使用、収益等を長期間にわたって制約することとなり、事実上共有物の処分に近い効果が生じます。そのため、これを有効に行うには共有者全員の合意が必要です。

他方、同条の期間を超えない場合には、処分の程度に至らず管理行為にあたるものとして、共有持分の過半数の同意により賃貸することが可能です。

もっとも、同条の期間を超えない場合でも、借地借家法が適用される場合は賃貸借の更新が原則とされますので、事実上契約関係が長期間にわたって継続する蓋然性が高くなります。そのため、借地借家法の適用がある賃貸借でも、共有者による当該目的物の使用、収益等に及ぼす影響が大きいため、原則として共有者全員の合意がなければ有効に賃貸することはできません(東京地判平成14年11月25日判時1816号82頁)。

参考裁判例

借地借家法の適用のある賃貸借契約であっても、例外的に共有物の管理行為にあたるとして共有者の共有持分の過半数があれば足りる場合があります。前掲東京地判平成14年11月25日も、借地借家法の適用のある賃貸借であっても、変更(処分)行為ではなく、管理行為にあたると判断しています

同裁判例は、共有持分の4分の3を有する共有者(補助参加人)が4分の1の共有持分を有する共有者(原告)の同意を得ないで賃貸借契約を締結した事案についての判断です。この事案では、賃貸対象のビルが業務用の貸しビルとして設計され、共有者が使用するごく一部を除きそのほとんどを賃貸して賃料収入を得るという方法で使用されてきたものであること、ビルの各共有権の行使は、賃料収入を得ることを主目的としていたこと等の事実関係がありました。

同裁判例は、上記のとおり借地借家法の適用のある賃貸借は共有者全員の合意がなければ有効に賃貸することができないという原則を示したうえ、「共有物の変更及び処分に共有者全員の同意が必要とされるのは、これらの行為が共有者の利害関係に与える影響の重大性にかんがみ、これを過半数の持分権者によって決しうるとするのが不相当であるからと解される。したがって、持分権の過半数によって決することが不相当とはいえない事情がある場合には、長期間の賃貸借契約の締結も管理行為にあたると解される。」(下線は筆者による)と判示しました。

そして、上記事実関係からすれば、「本件賃貸借契約は、もともと予定されていた本件ビルの使用収益方法の範囲内にあるものということができ、原告及び補助参加人が予定していた本件ビルについての共有権の行使態様を何ら変更するものではない。そして、原告は、自己の持分権に基づき、補助参加人に対する求償権を有すると考えられるから、本件賃貸借契約を有効としても、原告の利益に反するものではない。」「このように解した場合、賃借人の選定及び賃料の決定に関して原告の意に添わない賃貸借契約が締結される可能性もあるが、不動産の有効な活用という観点からすれば、賃借人の選定及び賃料の決定は、持分権の過半数によって決すべき事項であると考えられる。」(太字・下線は筆者による)として、賃貸借契約の締結が管理行為に属するものであると判断しました。

この裁判例は、もともと賃貸による収益を目的とする事業が行われていた場合、賃貸借契約の締結は管理行為であり、共有者の持分の過半数で決定することができることを示したものと考えられます。

本件の検討

本件でも、共有するビルは相続前からもともと賃貸用のビルでしたし、相続されてからもご兄弟で賃貸物件として扱ってきており、テナントに賃貸する以外の使用方法は想定していないものと思われます。したがって、本件でも、持分権の過半数によって決することが不相当とはいえない事情があるといえ、共有するビルについて知人の方と賃貸借契約を締結することは管理行為に当たると考えられます。

よって、共有持分3分の2を有するお兄様が知人の方に賃貸すれば、それは共有者の持分の過半数の決定によってなされたものですので、この賃貸借契約は有効と考えられます。

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