コラム Column
弁護士歴12年。不動産問題、相続、インターネット問題などを取り扱う。
28歳のときに家業の不動産賃貸業を継ぎ、現在は名古屋市内に9棟を持つ。
2019年よりYouTuberとしても活躍中。
「交渉」と聞くと、どのような場面を思い浮かべますか?
「外交交渉」「人質交渉」「団体交渉」と言った非常に差し迫った場面を思い付くかも知れません。
しかし、実のところ、日常生活は交渉の連続です。
「中学生の息子にスマホを持たせるか?」
「夫の給料が増えた時に、夫の小遣いを増やすか?」
「次の休みに、夫の実家に帰るか、それとも妻の実家に帰るか?」
といった場面も全て交渉に当たります。
もちろん不動産投資でも、交渉からは逃れられません。
「買付を入れる際に、どれくらいの指値をするか?」
「入居者から家賃の値下げ交渉や、クレームが入った場合にどのように対処するか?」
と言った場面が考えられます。
そこで、今回から弁護士であり、日本交渉学会常務理事である私が、「どうすれば交渉で良い結果を手にすることができるか?」について解説していきたいと思います。
セミナーで聴講者に質問してみると、「交渉に自信がない人」がほとんどです。
そして、交渉が得意かどうかは、「絶対に自分の意志を曲げない」であるとか、「押しの強いタイプ」といった、生まれ持った資質によって決まっていると考える人が多いのではないでしょうか?
しかし、学習と訓練、その振り返りを繰り返すことで、交渉上手になることができることを強調しておきます。
実は私も通りにくい声質である上に、強面でもないため、弁護士になった頃には交渉が嫌で嫌で仕方がありませんでした。
ところが交渉は再現可能であり、訓練により上達することができることを知ってからは、交渉を前向きにとらえるようになりました。
それでは、実際にどうすれば、交渉で成果をあげられるようになるのかについて、具体的に解説します。
交渉で大切なことは、一にも二にも、「事前の準備」です。
準備をせずに交渉に突入してしまうと、想定外に悪い結果になってしまうこともあります。
ネットオークションで入札していくうちに、感情が高ぶり、定価以上の価格で入札してしまうような例を考えていただければ良いと思います。
万一準備ができていない段階で交渉を申し込まれた場合には、「こちらから折り返す」などと仕切り直し、必ず準備をしてから交渉に入ってください。
準備なしに交渉に入ることは非常に危険ですので。
まず大切なことは、「この交渉で、自分が手に入れたいこと」を明確にすることです。
この問いに対する答えを用意せずに交渉を始めてしまうと、交渉に没頭してしまって、なぜ交渉しているのか分からなくなってしまったり、相手をやりこめることが目的になってしまったりするからです。
交渉はあくまで、自分が手に入れたいものを手にするための「手段」です。
そこで、今回の相手との交渉で手に入れたいものを思いつく限り紙に書き出してみましょう。
例えば、車を購入する場合を例にしてみましょう。
車を購入する目的・動機としては、「交通手段」「節税」「趣味」などが考えられます。
このように目的・動機を書き出した上で、それらに優先順位を付けていきましょう。
優先順位を付けていくと、自分が本当に手に入れたいものが見えてくると思います。
このように交渉を始める前に、その交渉で自分が手に入れたいものを把握しておくことが交渉の準備の第一歩になります。
次回は、準備のやり方について更に深掘りしていきます。
つづく
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