コラム Column
弁護士歴12年。不動産問題、相続、インターネット問題などを取り扱う。
28歳のときに家業の不動産賃貸業を継ぎ、現在は名古屋市内に9棟を持つ。
2019年よりYouTuberとしても活躍中。
前回のコラムで、
「実は以前、家族の協力も受けながら、1年間ほど、1棟(12戸)についてだけ自主管理をしたことがあります。ところがかなり手間がかかり、半年以上経ってから家賃の未収が発覚したり、苦情の対応に苦慮したりしました。」と書きました。
今回は、未収家賃の金額やその回収の過程について、お話しいたします。今回は守秘義務を負わない自社の話ですので、赤裸々に語って参りたいと思います(笑)
2021年7月になって、自主管理をしていた物件のうちの一室の未収家賃が膨大な金額に上っていることが判明しました。
このお部屋の月額家賃は、およそ11万円(共益費・駐車場1台を含む)。
滞納金額は約3年分、400万円近くに膨れ上っていました。(もうアホかと)
そうであるにもかかわらず、入居者は何食わぬ顔で住んでおりました。
滞納された場合、一刻も早く退去してもらわないと、滞納家賃がドンドン増えていきます。
その上、他の人に居室を貸せば得られたはずの家賃を受け取る機会も失ってしまうことになります(逸失利益)。そのため私は、早期の退去を第一目標にしました。
入居者つまり借主は、法人でした。
そこで直ちに法人の代表者(社長)に電話を掛けました。
そうしたところ、社長は、「実際に住んでいるのはうちの役員。その役員が家賃を払っているものだと思っていた。」と答えました。
私は、社長に対して、「それでは、入居者である役員に『とにかく一度大家に連絡せよ』と指示してください。」とお願いして電話を切りました。
しばらくすると、その役員から電話がかかってきました。
その役員は、「会社が払っているものだと思っていた。」と言うのです…
私は内心では激怒しながらも、とにかく退去を最優先させたかったので、
「ここまで滞納額が大きくなってしまったので、退去してください。退去の立会いの日程を決めましょう。」とその役員を説得し、9月半ばに退去立会いをすることになり、無事退去していただくことができました。
次に滞納家賃を回収することになります。
幸いなことに保証人となっていた人物の自宅が持ち家でした。
ところが、借主であった法人の代表者や入居していた役員、さらには保証人に電話を掛けても、折り返しの電話がありません。
そこで、やむを得ず裁判を起こすことになり、12月27日という年の瀬に借主であった法人と保証人を被告とした訴状を裁判所に提出しました。
訴状が両名に送達された結果、第一回目の裁判の期日は、2022年2月16日となりました。
当日、法人の代表者は裁判所に来ましたが、保証人は来ませんでした。
その社長は、「事実は認めますが、毎月11万円ずつの分割払いでお願いしたい。」などと眠たい和解案を提示してきたので、これを受け容れず、判決へ。
2月25日の判決が下され、およそ半月後にこれが確定しました。
判決が確定したので、改めて法人の代表者に判決どおり支払うよう求めます。
このタイミングでようやく相手方が弁護士に依頼。
その弁護士を通じて交渉し、4月15日に話し合いがまとまり、法人が4月から毎月末に100万円ずつ支払う旨の合意書を取り交わしました。
「やれやれ」と言ったところです。
5 4月末、5月末に100万円ずつが入金されたため安心しきっておりました。
2022年年末となり、確定申告のため入金状況を確認したところ、残りの200万円弱の支払いが確認できない状況でした。恥の上塗りです。
仕方がないので、相手方の弁護士に、「未払いがないか確認してください」というお手紙を出しました。
そして2023年になってしまったという体たらくでした。
このような手続きを弁護士に依頼すると、次のような費用がかかります。
その他に実費として数万円がかかります。
このように家賃の滞納を許すと、弁護士に沢山のお金を支払わなければならなくなってしまいます。しかも家賃に対する税金(所得税・法人税)は、家賃が実際に入金されたかどうかに関係なく発生してしまいます(発生主義)。
つまり家賃が入ってこないのに税金は払わなければならないという地獄のような状況に陥ってしまうわけです。
自主管理派の皆様は、くれぐれも家賃滞納を見逃さないようご注意ください。
滞納があった場合には、直ちに督促をし、滞納額が増えないよう最大限努力してください。
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