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隣地所有者に擁壁修繕工事を請求することはできる?

作成日: 2021/02/08 投稿者名:森 春輝
更新日: 投稿者資格:弁護士(第二東京弁護士会)
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【弁護士:森 春輝】

弁護士(第二東京弁護士会)。2017年に弁護士法人Martial Artsに入所し、
不動産トラブルや賃貸借契約書に関する業務をはじめ、多分野にわたる法律業務に従事している。




【相談】所有地の隣地の崖が崩れそうな場合、隣地所有者に崖の擁壁工事をしてもらうことはできますか。

 

土地を所有し、土地上の自宅に居住しています。当方土地の隣の土地は高い位置にあり、隣地内の当方土地との境界あたりが崖になっています。崖には一応擁壁があるのですが、ひびが入っており、擁壁が崩れる心配があるため擁壁修繕工事をしてもらいたいと思っています。

 

というのも、先日の大雨の影響で、私の所有地には影響がなかったものの、当方土地から数メートル先で少し擁壁が崩れたところがあったからです。今度大雨が降ったときには、当方土地に影響がある部分も崩れてしまうのではないかとても不安です。自宅建物は崖からすぐの場所に建っているため、崖が崩れるととても危険なのです。

 

隣地所有者になんとかしてもらえないかと言いましたが、お金がかかるからと断られてしまいました。費用をこちらで負担するなら工事してやるとも言われています。

 

【回答】隣地所有者の費用負担で崖の擁壁工事をするよう請求することができると考えられます。

 

崖が隣地所有地内にあり、客観的に崖崩れの危険性がある場合は、土地の所有権に基づく妨害予防請求として、相手方の負担で擁壁の修繕工事を請求することができると考えられます。

 

【解説】

 

妨害予防請求権とは?

 

崖部分が隣地所有地内にある場合、崖崩れによって損害を被るおそれのある崖下の土地の所有者は、隣地である崖上の土地所有者に対し、所有権に基づく妨害予防請求権を行使して、土地の妨害を予防するよう求めることができます。

 

この権利を、「所有権に基づく妨害予防請求権」といいます。妨害予防請求権は、所有権そのものから生ずる「物権的請求権」のひとつです。物権的請求権は、法律上明文の根拠規定はありませんが、物に直接の支配を及ぼすことを内容とする所有権の性質上当然に認められるものと考えられています。

 

物権的請求権には、返還請求権、妨害排除請求権及び妨害予防請求権の3種類の請求権があります。返還請求権は自己の所有物を他人が占有することで所有物への支配を妨げている場合に、妨害排除請求権は自己の所有物への支配を他人が占有以外の方法で妨げている場合に、妨害予防請求権は他人が所有物への支配を妨げるおそれがある場合にそれぞれ認められます。

 

妨害予防請求権は妨害のおそれがあるといえる場合に認められるものですから、崖の擁壁修繕工事をしてもらうためには、客観的にみて崖崩れの危険性があるといえなければなりません。

 

本件では、数メートル先の崖が実際に崩れているところがありますので、客観的にみても崖が崩れる危険性があるといえるでしょう。

 

 

工事費用の負担は?

 

妨害予防請求の場合、妨害予防のために必要な費用は相手方が負担することになります。

したがって、隣地所有者の負担で擁壁修繕工事をしてもらうことができます。

 

 

妨害予防請求が認められない場合もある!

 

妨害が発生するおそれがあるとしても、常に妨害予防請求権が認められるわけでありません。予想される損害が軽微であり、予防設備の費用が巨額にのぼるようなときは、妨害予防請求が認められない場合もあると考えられます。

 

もっとも、本件では崖付近に自宅建物があり、崖崩れが起きれば建物の損壊が予想されるだけではなく、居住する人の生命・身体を侵害する可能性もあります。そうすると、いくら擁壁工事にお金がかかると言っても、妨害予防請求が認められないことにはならないでしょう。

 

 

崖が崩れてしまったらどうする?

 

擁壁工事をするまでに崖が崩れて被害が生じてしまった場合、まず、崖崩れによって堆積した土砂等については、上記の物権的請求権のうち、所有権に基づく妨害排除請求として、隣地所有者に対し、土砂等の除去を求めることができます。この場合の費用は、妨害予防請求と同様に相手方の負担となります。

 

また、擁壁が壊れて崖崩れが発生したことにより、建物が損壊したり、居住者の生命・身体が侵害されてしまった場合は、土地工作物責任(民法717条1項)に基づいて損害賠償請求をすることが可能です。


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