コラム Column
弁護士(東京弁護士会、72期)。
慶應義塾大学法学部・同大学法務研究科卒業。
【相談】マンションの管理費を滞納されています。回収方法につき教えてください。
マンションの管理組合の理事長を行っています。区分所有者の中に、マンションの管理費を滞納している方がいます。初めは少額だったのですが、5年前から全く払われなくなりました。
金額も大きくなってきたので督促しているのですが、支払ってもらえません。どのように対処したらよいでしょうか?
【回答】内容証明郵便での請求、支払督促、訴訟提起等を行うことが考えられます。
関連記事:マンション管理組合が管理費滞納者に訴訟提起する方法【弁護士解説】
管理費の滞納があった場合、回収のためには、次のような流れで対応することが考えられます。
<管理費回収手続の流れ>
管理費等の滞納が生じた場合、まず管理会社などから再度請求書を送付するなどして、支払いを促すことになります(①)。
その後、管理会社担当者や理事長などが直接訪問して支払いを求めることが考えられます(②)。
それでもなお支払われない場合には、回収の意欲を示すために、内容証明郵便によって管理費を支払うよう請求することになります(③)。
さらに支払いがなく、滞納期間が長期にわたる段階にまで至れば、支払督促(④)や訴訟提起(④’)を検討すべきでしょう。
訴訟提起後、裁判所における和解などで回収ができることもありますが、支払う意思が一切見られない場合には、判決に基づき、滞納者の財産に強制執行をすることになります(⑤)。
以下では、一般の方にはあまり馴染みのない③~⑤の手続についてご説明差し上げます。
管理費の滞納につき、何度請求しても支払われない場合は、回収を強く求める姿勢を示すため、内容証明郵便により支払うよう求めることが考えられます。
内容証明郵便においては、管理費の支払いが速やかになされない場合に訴訟提起等の法的措置を講じることもあると警告します。
内容証明郵便は、管理組合理事長名義で送付することもできますが、回収への意欲を示すために、代理人として弁護士をつけて、弁護士名義で送付することも考えられます(弁護士費用がかかりますので、いずれによるかはコスト面も考慮して検討する必要があるでしょう)。
内容証明郵便を出しても管理費の支払いがない場合、管理組合としては法的措置に踏み切るか検討することになります。
簡易な法的措置として、支払督促(督促手続)によることが考えられます。
支払督促は、手続が分かりやすいため弁護士に依頼せず自分で申立てを行うこともできる点、時間や費用がかからずコストを抑えられる点にメリットがあります。
他方で、支払督促をしても実際に支払いがなされることは少ない点、異議を出されると訴訟手続に移行することになる点、相手の所在が不明の場合には用いることのできない手続である点はデメリットになります。
これらを踏まえるとはじめから訴訟提起による方が得策であることも少なくありません。
管理組合が管理費を請求する訴訟を提起する方法は、
の2つになります。
いずれの方法も、総会の決議を得て訴訟提起することが原則となります。
ただし、規約で理事会の承認をもって総会の決議に代える特別の定めを設けることが可能であり、また、「マンション標準管理規約」の67条3項でも理事会の承認で足りるとされています(67条3項)。
このような規約が採用されている場合には、理事会の承認等があれば総会の決議は不要となります。
管理規約にこのような定めがない場合、管理費の回収の必要が生じた都度総会決議を経なければならないことになり迅速な債権回収の支障となりますので、規約の改正をしておくことをおすすめいたします。
裁判の結果、勝訴の判決が出た後は、判決に基づき改めて管理費を支払うよう請求することになりますが、滞納者がこれにも応じない場合、判決の結果を実現するべく強制執行手続を行うことになります。
管理費滞納についての強制執行としては、まず、債権執行といって、滞納者の勤務先に対する給料債権や銀行預金債権の差押えを行うことが一般的です。
債権を有していない場合には、動産執行といって自動車や家具の差押えを行うことが考えられます。動産の差押えを嫌がる滞納者が自発的に管理費を支払うことを促せる場合があります。
このほかに不動産執行といって滞納者のマンションの部屋自体を対象とすることも考えられますが、費用がかかることなどを踏まえると優先順位は低いです。
※滞納者の財産が分からない場合などに財産開示手続を申し立てることで、滞納者の財産の情報を得ることができます。従来は、債務者である滞納者のみからしか情報を得られませんでしたが、2020年4月1日の民事執行法改正により、銀行等からも情報を得られるようになりました。
以下では、最も効果的で、弁護士に依頼せずとも行える債権執行につき付言いたします。
債権執行に必要な書類は、債権差押命令申立書、執行力のある債務名義(判決)の正本及びその送達証明書、理事長の資格証明書等です。
東京地方裁判所のこちらのページにしたがって、申立てをすれば問題なく手続を進められます。
債権差押命令申立書においては、第三債務者に対する陳述催告の申立てもしておくべきです。これにより、差し押さえた債権の存在の有無につき勤務先や銀行等から回答を得ることができます。
差し押さえた債権が実際に存在する場合、申立て後、裁判所の債権差押命令が債務者に送られた日より1週間経過してから、その取立てができるようになります。
上記の期間が経過したら、勤務先や銀行等に連絡して支払ってもらい管理費を回収しましょう。
以上のように、
と、管理費回収の手続の流れはある程度定型化しています。
この流れをしっかり押さえていただければ、滞納があった場合でも、自身をもって迅速な対応ができ、管理の手間を低減することができると思います。
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