コラム Column
弁護士(東京弁護士会)。慶應義塾大学法科大学院修了。
不動産トラブルに関する業務、家族信託・遺言作成業務などをはじめとする多岐の分野に携わる。
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【相談】標準管理委託契約書について教えてください。
私は、マンションの一室を所有しています。
マンションの管理組合と管理会社との間の契約書は、標準管理委託契約書と異なっているようですが、問題はないのでしょうか(①)。
また、標準管理委託契約書においては、事務管理業務の一部のみを第三者へ再委託することができる内容になっているところ、マンションの管理組合と管理会社との間の契約書では、このような制限がなく、管理会社が事務管理業務の全部を第三者へ再委託しているようです。
これについても問題はないのでしょうか(②)。
【回答】標準管理委託契約書は、管理組合と管理会社との間を法的に拘束するものではありません。
管理委託契約を途中解約したい場合について知りたい方は、当コラム「【弁護士解説】マンションの管理委託を中途解約する方法」をご参考ください。
管理組合と管理会社とのトラブルの発生を防止するため、国土交通省が作成したものです。
主な内容として、善管注意義務、守秘義務、契約更新の手続き、事務管理業務区分、出納業務における財産の分別管理(収納口座、保管口座、収納・保管口座による分別)、修繕積立金の保証契約、免責事項などについて定められています。
標準管理委託契約書は、管理組合と管理会社との間を法的に拘束するものではありません。
したがって、実際に管理会社と締結している管理委託契約書と標準管理委託契約書との内容で異なっている部分があるからといって、その管理委託契約書の異なる部分が無効となるわけではありません。
ただし、管理組合としては、標準管理委託契約書と管理会社が提示する管理委託契約書の案とを見比べて、異なっている部分はどこか、なぜ異なっているのか、契約締結前に十分にチェックする必要があります。
標準管理委託契約書においては、委託契約に係る業務を以下の4つに分類し、それぞれの業務の内容及び実施方法を「別表」で詳細に規定しています(3条、別表第1~別表第4)。
そして、上記1の「事務管理業務」はマンション管理の中核であることから、第三者への全部の再委託は認められていません。
マンションの管理の適正化の推進に関する法律74条においては、以下のとおり規定されています。
第七十四条 マンション管理業者は、管理組合から委託を受けた管理事務のうち基幹事務(※1)については、これを一括して他人に委託してはならない。
※1 基幹事務とは、「管理組合の会計の収入及び支出の調定及び出納並びにマンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整をいう。」と定義されています(マンションの管理の適正化の推進に関する法律2条6号)。基幹事務は、上記⑴事務管理業務に含まれます。
なお、再委託の制限の条項に違反した場合には、マンション管理会社には、業務停止命令が出される可能性があります。
第八十二条 国土交通大臣は,マンション管理業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該マンション管理業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
二 ・・・第七十三条から第七十六条まで・・・の規定に違反したとき。
管理会社が、「基幹事務」を含む事務管理業務の全部を第三者へ再委託することは、マンションの管理の適正化の推進に関する法律74条に違反することになり、許されません。
上述のとおり、管理会社には、業務停止命令が出されるリスクもあります。
仮に、管理組合と管理会社が締結する管理委託契約書において、事務管理業務の全部の再委託を認める条項がある場合、マンションの管理の適正化の推進に関する法律74条との関係で、全部の再委託を認める部分については無効と解され得ます。
また、国土交通省のホームページに標準管理委託誓約書のフォーマットがありますので、ご興味のある方は下記サイトをご参照ください。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000011.html
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