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同じ間取りでも部屋によって家賃が違う! 安い部屋に合わせて減額しなければいけない?


【相談】同じアパートの同じ間取りのほかの部屋の家賃が安いことを理由にした賃料減額請求に応じる必要はありますか。

賃貸用のアパートを建築し、各部屋を賃貸しています。このアパートはすべての部屋で間取りや設備が同じで、賃料は全部屋月額10万円で募集しました。何部屋かは賃借人が決まりましたが、なかなか空室が埋まりませんでした。引っ越しシーズンも終わってしまったので、空室ロスを避けるため残りの部屋の賃料を9万円に値下げして募集したところ、すべての部屋で賃借人が決まりました。

満室になってよかったと思っていたところで、賃料10万円の部屋の賃借人から、賃料について文句が出てきました。賃料が9万円に下げられた部屋と同じ間取りの部屋なのに賃料が10万円なのは不公平だから、その部屋も一律に賃料9万円に減額してほしいとのことです。

この賃借人は賃料10万円に納得して入居したのですから、減額の要望に応じる必要はないと考えていますが、法的にはどうなのでしょうか。

【回答】ほかの部屋との賃料の差のみを理由とした賃料減額請求に応じる必要はありません。

同じアパートの間取りが同じ部屋であっても、部屋ごとに賃料が異なることは問題ありません。空室を埋めるために募集中の部屋の賃料を9万円に値下げしたとしても、それだけで他の部屋の10万円の賃料が不相当になるとは言えません。

よって、賃料減額請求は認められないと考えられますので、法的に賃借人からの減額請求に応じる必要はありません。

そもそも部屋によって家賃が違っても問題はない

賃貸物件の賃料は、物件の利回りや周辺の家賃相場を基に算定されますが、最終的には賃貸人と賃借人の間の合意によって決まります。賃料を合意するにあたって、法律上の制限があるわけでもありません。

アパートの各部屋の賃料は、間取りや階数、設備や日当たりの差などによって賃料が調整されます。間取りや設備等が全く同じであったとしても、各賃貸借契約によってそれぞれ賃料について合意することになりますので、部屋ごとに賃料が異なることには当然問題ありません。

ほかの部屋の家賃が安いことを理由とする賃料減額請求は難しい

同じ間取りのほかの部屋の家賃が安いからといって、賃料減額を請求することができるのでしょうか。

借地借家法上、賃貸借契約で定めた賃料が不相当になった場合は、将来に向かって賃料の減額を請求することができます。これを賃料減額請求権といいます。

賃料減額請求が認められるかは、建物の賃料が土地もしくは建物に対する租税その他の負担の減少により、土地もしくは建物の価格の低下その他の経済的事情の変動により、または近傍同種の建物の賃料と比較して、現在の賃料が「不相当」に高いといえるかによって判断されます。

このうち、本件では、租税その他の負担が減少したり、経済的事情が変動したということはありません。同じアパートのほかの部屋の賃料が値下げされた結果、賃料が他の部屋より高くなってしまったことが、近傍同種の建物の賃料と比較して不相当に高くなったといえるかが問題となります。

同じアパートやマンションのほかの部屋の賃料との比較も、近傍同種の建物の賃料として減額が認められるかどうかの要因のひとつとはなりますが、それのみで賃料が不相当に高くなったとはいえません。

周辺の賃料相場が下がったり、賃料合意時に前提とした事情が変化した場合でなければ、賃料減額請求は難しいでしょう。

裁判例でも、例えば広島地判平成22年4月22日金融・商事判例1346号59頁は「賃料増減額の請求は、賃貸借契約が締結された後に約定賃料の前提となる事情について変更があった場合に限りすることができ、賃料決定の当初から賃料が不相当であったとしてもそれのみでは賃料増減額請求の理由とはならないと解される」と判示しています。

以上からすれば、本件で同じアパートで同じ間取りの部屋の賃料が安いことだけを理由とする賃料減額請求は認められず、賃貸人は本件で減額の要望に応じる法的義務はありません。

もし勝手に減額請求をして本来の10万円でなく9万円しか支払わないなどとなった場合は、こちらの「減額請求が認められる前に減額した場合の対処法」の記事をご参考ください。

場合によっては任意に減額に応じることもあり得る

もっとも、賃借人の立場からすれば、同じアパートで同じ間取りのほかの部屋の家賃が安くなると、不公平だと感じても無理はないでしょう。

上記のとおり、法的には賃料減額に応じる必要はないですが、賃借人との関係性や収益との関係で、任意に減額に応じることはあり得ると考えられます。

例えば、ある賃借人が、長期にわたり居住していて賃貸人との関係もよいのであれば、他の部屋の賃料と同じように減額してあげることもあるでしょう。

また、賃料減額を断わるとその賃借人が退去しそうな場合で、新規募集も減額した賃料で募集する場合は、結局賃料は下げざるをえないうえ、新賃借人が入居するまで空室ロスが発生してしまいます。そうすると、賃料減額に応じて入居を継続してもらった方が収益の点から有利だと判断することもあるでしょう。

実際に賃借人から賃料減額の要望があった場合は、法的観点だけでなく、賃借人との関係性や収益との関係も踏まえ、減額に応じるかどうか検討すべきです。

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