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賃借人(入居者)が死亡した場合の賃貸借契約や退去費用はどうなるか?弁護士が解説


【相談】賃借人が死亡した場合の契約関係等はどうなりますか。

投資用にアパート所有しており、各部屋を単身者向けに賃貸しています。アパートの一室をある高齢者の方に賃貸していたところ、先月の賃料の支払いがなく、ポストには郵便物もたまっているようでした。

警察の方と様子を見に行くと、お亡くなりになっていました。賃借人の方が亡くなってしまったことは残念なのですが、アパート賃貸人としては今後の契約関係がどうなるのかが気になっています。

また、賃借人の方が亡くなったために特殊なクリーニングが必要となり、今後の賃料も下げざるを得ないため、このクリーニング費用や減収分について誰かに負担してもらえないかも質問したいです。

【回答】賃借人が死亡した場合、賃貸借契約は賃借人の相続人に引き継がれます。

賃借人が死亡したら賃貸借契約は相続される

民法は賃借人の死亡を賃貸借契約の終了原因として定めていません(民法616条(改正民法622条)が、借主の死亡を使用貸借契約の終了事由と定める民法599条(改正民法597条3項)を準用していないことによります)。そのため、賃借人が死亡した場合、その賃貸借契約は終了せずに存続し、賃借人の相続人が賃貸借契約を引き継ぐことになります。

賃貸人としては、できるだけ速やかに賃料を取得できるようにすることが希望でしょう。上記のとおり、賃借人の相続人の方が賃貸借契約を引き継ぎますので、賃貸借契約の継続を望むのであれば相続人の方から賃料を取得することも可能です。

しかし、通常は一緒に住んでいない相続人の方が賃貸借契約をそのまま存続させることは少ないと考えられます。相続人の方が賃貸借契約の継続を望まない場合は、相続人の方と賃貸借契約の解約について協議していくことになります。相続人の方が複数いる場合は、相続人全員と賃貸借契約解約の合意をしなければなりません。もっとも、遺言や遺産分割協議によって相続人のうち誰が賃貸借契約を引き継ぐのか決まっている場合は、その方と協議し解約の合意をすれば足ります。

死亡した賃借人に賃料の未払いがある場合は、賃借人の相続人に対して請求していくことになります。

相続人がいない場合の賃貸借契約の解約方法

賃借人が身寄りのない単身者の場合、相続人がいないこともあります。また、相続人がいても、全員が相続放棄をしてしまい、相続人がいない状態になることもあり得ます。

この場合、相続財産管理人という制度を使って解約等の対応をすることができます。相続財産管理人とは、相続人がいない場合に亡くなった方の財産を管理する人のことです。利害関係人又は検察官の請求によって家庭裁判所から選任されるところ(民法952条1項)、賃貸人はこの利害関係人として相続財産管理人の選任を請求することができます。

相続財産管理人が選任された場合、相続人の代わりにその相続財産管理人との間で賃貸借契約の解約について合意し、未払賃料等があれば相続財産管理人に対して請求していくことになります。

孤独死対策については「孤独死対策で重要な2つの契約を弁護士が解説」でも詳しく記載されていますので是非ご参考ください。

特殊なクリーニング費用や減収分の負担

特殊なクリーニング費用や減収分を賃借人の相続人に負担させることができるかについて、裁判例では判断が分かれています。

賃借人が死亡した場合の原状回復をだれが負担するかの判例

例えば、東京地判平成29年2月10日は、賃借人が部屋で自然死したと推定される事案であるところ、スケルトン工事やオゾン脱臭工事の費用について賃借人側の負担とし、減収分についても賃借人側の負担を認めています。

また、東京地判平成29年9月15日は、賃借人が部屋で自然死した事案であるところ、遺体の死臭が残ったために行った大掛かりな原状回復費用を賃借人側の負担としましたが、善管注意義務違反はないとして減収分を賃借人側に負担させることは否定しています。

他方で、東京高判平成13年1月31日は、賃借人が部屋内で刺殺された事案であるところ、賃借人側には部屋の汚損につき故意又は過失がないとして賃貸人の請求を認めませんでした。

上記のように裁判例の結論は分かれていますが、少なくとも、自殺の場合や、病気で死亡する可能性があるにもかかわらず合理的な理由なく入院しなかった場合など、入居者に過失がある場合は、特殊なクリーニング費用や減収分の費用等を賃借人の相続人に請求していくことができると考えられます。

ただし、実際の死因や死亡の経緯、発見までの期間、物件の状況等の具体的な事情によって結論が変わる可能性がありますのでご注意ください。

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