コラム Column

温泉付き別荘で温泉供給契約の注意点!更新拒否されたらどうする?


【相談】温泉付き別荘で温泉供給契約の更新を拒絶されています。

私は、温泉供給契約により、地主から温泉の供給を受けています。契約期間は10年です。

期間満了まで1年となった先日、地主から「契約期間満了後は温泉を供給しない」と言われてしまいました。温泉を供給してもらえないと、自宅で温泉に入れませんし、何より、経営している旅館の営業に重大な支障が生じてしまい困ります。

温泉の供給の継続を求めることはできないのでしょうか。

【回答】温泉供給契約の契約内容・状況によっては、温泉の継続供給を受けられる可能性があります。

 

温泉付き別荘の温泉供給契約を断られた場合の対処法

温泉供給契約において更新についての定めがある場合、更新に必要な要件をみたせば、温泉の継続供給を受けることができるでしょう

また、ご質問者様の自宅や旅館を地主から買っており、温泉供給契約がそれらの売買契約に附帯するものである場合、契約の締結状況によっては、温泉供給契約の更新権が付与されていると解釈でき、温泉の継続供給を受けられる可能性があります

温泉供給契約の存続期間の確認が大切

温泉利用権(引湯権)の存続期間は、基本的に源泉地の所有者との温泉供給契約によって決まります。

温泉供給契約に存続期間の定めがなかった場合でも、地域の慣習により存続期間が定まる可能性もあります。

実際に定められる温泉供給契約の存続期間の長さは様々で、1年と短期のものから、永久とするものまであります。

本件は、温泉供給契約の存続期間が10年とされているようですので、原則として、この間のみ温泉の供給を受けることができます。

温泉供給契約の更新の条項を入れておこう

もっとも、温泉供給契約に契約の更新に関する条項が設けられていることがあります。

例えば、「温泉受給者が更新を求めたとき、温泉供給者は正当な理由がない限りこれを拒むことができない」というような定めがなされていることがあります。

この場合、温泉供給者たる地主が正当な理由があることをいえなければ、更新は認められるので、ご質問者様は温泉の継続供給を受けることができるでしょう。

このように、更新に関する条項に基づいて温泉の継続供給を受けられることがあります

また、温泉供給者が、温泉供給契約つきの不動産として、通常価格よりも高値で売却していた場合、売買契約の内容によっては、温泉供給契約の更新権が付与されていると解釈できることがあります。

別荘の温泉供給について争われた裁判例

この点について、次の裁判例が参考になります。

東京地裁平成12年11月8日判決(判タ1073号167頁)

事案の概要

別荘の売買契約の附帯契約(※)として温泉供給契約が締結されていたところ、温泉供給者が温泉供給契約の更新を拒んだため、温泉供給者に温泉の継続供給をする義務があるかどうかが争われました。

※附帯契約とは、メインの契約に関係する付随的な契約のことをいいます。

判決の要旨

東京地裁は、10年間の有効期間と当該期間の到来時に当事者間の協議により更新できる旨の条項があることを確認したうえで、①温泉の供給は別荘地の主要なセールスポイントであること、②当該有効期間は別荘の通常の存続期間に比して短いこと等から、本件条項は別荘購入者に更新権を付与する趣旨と解すべきであり、温泉供給者は特段の事情のない限り更新を拒絶できないとしました。

このように、あわせて締結された不動産の売買契約をヒントにして、温泉供給契約において更新権が付与されていると解釈することで、温泉の継続供給を受けることができる可能性があります

なお、上記判決の特段の事情の有無を検討するにあたっては、地域の慣習、温泉供給者が更新拒絶する理由、更新拒絶により被る温泉受給者の不利益の程度等を総合的にみる必要があるとされています。

本件でも、温泉供給契約の締結に際して、地主から自宅や旅館の敷地を購入したり、借りたりした場合等には、契約締結の状況次第で、温泉供給契約の更新が認められ、温泉の継続供給を受けられる可能性があります。

別荘の温泉供給における沖天のまとめ

以上のことを踏まえると、温泉の継続供給を受けるか検討するにあたっては、更新についての条項の有無や契約の締結状況を確認する必要があります。

条項の意味や契約の締結状況の正確な把握には、法的な専門性が欠かせませんので、弁護士をはじめとする専門家に相談するのが良いでしょう。

仮に温泉の供給を継続して受けられると判断できる場合でも、何か理由がない限り、直ちに訴訟を提起することには慎重になるべきです。温泉供給契約は、継続的な契約ですので、地主との関係を良好なまま維持しておくに越したことはないからです。

そのため、相手方との協議を丁寧に行い、それでも解決が難しい場合には、民事調停手続(※)等を利用することが考えられます。

このような協議や交渉、手続の対応には繊細さが求められることも多いため、やはり、弁護士を代理人とするなど専門家に頼ることをおすすめいたします。

※民事調停手続とは、話し合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。

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