コラム Column

不動産投資で消費者契約法を適用し、契約を取り消しにできるか?【弁護士解説】


【相談】営業マンの過度なセールストークを信じて投資用マンションを買った場合、消費者契約法上の取消しはできますか。

半年前に、不動産業者から勧誘されて、投資用マンションを購入しました。長年サラリーマンをしており、不動産投資をするつもりはなかったのですが、営業マンが「空室になることはありません!」「必ず利益がでますよ!」と熱く語っていましたし、また、「近くで再開発が行われるとの噂があり、物件の価値が上がる可能性もあります」とも言っていましたので、購入することにしたのです。

しかし、数か月で賃借人が退去して、その後入居者が見つからず、また、結局再開発の計画もないことが分かりました。今思えばそんなうまい話があるわけがないのですが、当時は、専門家がそういうのであれば間違いないだろうと真に受けてしまっていました。

不動産投資家は事業者だから消費者契約法で保護されないと聞いたこともありますが、今から契約を取り消せないのでしょうか。

【回答】消費者契約法上の取消しができる場合もあります。

不動産投資だからいって必ずしも消費者契約法が適用されないわけではありません。本件では、不実告知と断定的判断の提供により、消費者契約法4条1項により契約を取り消せる可能性があります。

なお営業マンの営業、勧誘を断りたいと思っている方は「【注意】しつこい不動産投資の営業、勧誘の電話を断る方法」を是非ご参考ください。

消費者契約法上の「消費者」

消費者が、事実ではないことを告知されたり(不実告知)、不確実な事項について断定的な判断を提供されたことによって(断定的判断の提供)、告げられた内容が事実である、確実であると誤認して契約を締結したときは、消費者契約法4条1項により契約を取り消すことができます。

本件の不動産業者の勧誘は、不実告知及び断定的判断にあたると考えられます。

そのため、消費者契約法の「消費者」に該当すれば、消費者契約法上の取消しを行うことができます。

消費者とは「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)」をいいます(消費者契約法2条1項)。

そして、契約が「事業として又は事業のために」なされたか否かは、一定の目的をもって反復継続的になされる行為の内容や、当該契約に関して情報の質、量及び交渉力について相手方当事者との格差の有無、程度を総合判断して、社会通念上それが事業の遂行とみられる程度のものか否かによって判断すると考えられます。

もっとも、不動産投資のための物件を購入した者が消費者契約法上の「消費者」に該当するかどうかの判断は、難しいところです。購入した不動産を賃貸して賃料収入を得るという「不動産賃貸業」「不動産投資業」という事業のために購入したと考えられるからです。

しかし、不動産について全くの素人が勧誘に応じて投資用マンションを購入したような場合は、売主と買主の情報格差は大きいですから、保護の必要性もありそうです。

消費者契約法に基づく契約取消しを認めた裁判例

この点が直接の争点となった裁判例はありませんが、消費者に該当することを前提としたと考えられる裁判例として東京地判平成24年3月27日があります。

この裁判例は、不動産業者に勧められて2件の投資用マンションを購入した個人につき、不動産投資をするにあたっての不利益な事情を十分説明されていなかったなどとして、消費者契約法に基づく契約の取消しを認めました。

つまり、不動産投資のために物件を購入した場合でも、消費者契約法上の「消費者」に当たる可能性があるのです。

実際に不動産投資のために物件を購入した者が「消費者」にあたるかどうかは、個々の具体的事実関係によって個別的に判断しなければなりませんが、この裁判例のように、不動産の素人の方が、業者の勧誘に応じて投資用マンションを購入した場合は、「消費者」に該当すると判断されやすいのではないかと思われます。

他方、すでに不動産の賃貸を行っている者の場合は、業者から勧誘を受けて物件を購入しても、「消費者」に該当する可能性は低いでしょう。

5棟10室基準を満たしていたら「消費者」に該当する可能性は低い

税法上、不動産の貸付けが事業として行われているかどうかによって、不動産所得の計算上の取り扱いが異なる場合があります。

不動産の貸し付けが事業として行われているかどうかは、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって実質的に判断します。

ただし、建物の貸付けについては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。

  1.  貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
  2.  独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。

以上の基準を一般的に「5棟10室基準」と呼びます。5棟10室基準を満たせば青色申告により節税を図ることができますので、不動産投資家の中にはこの基準を満たすことを目標としている方もいらっしゃると思います。

消費者契約法上の「消費者」に該当するかどうかと、税法上の5棟10室基準は直接に関係するものではありません。しかし、5棟10室基準を満たしている場合は、「事業として又は事業のために」行われていると判断され、「消費者」に該当する可能性は非常に低いと言わざるを得ないでしょう。

消費者契約法上の取消しができない可能性もある

不動産投資のために物件を購入した者が「消費者」にあたるかどうかの明確な基準があるわけではありませんので、上記の裁判例があるといっても、「消費者」該当性を否定されて消費者契約法上の取消しができないリスクも大きいです。

ですので、投資用マンションを購入するにあたっては、このようなトラブルを避けるため、営業マンのセールストークを鵜呑みにしてはいけません。

営業マンの言葉に根拠があるのか、不都合な事情が隠されていないか批判的検討をするとともに、ある程度は自分で勉強して知識をつけておくことが大切です。是非本サイトの基礎知識やコラムを参考にしてみてください。

もし不動産に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします

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