コラム Column
弁護士(東京弁護士会、72期)。
慶應義塾大学法学部・同大学法務研究科卒業。
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【相談】マンションの貸出中に借主から自己破産の申立てをするとの連絡がありました。
マンションの一部屋を貸し出し中に、借主から自己破産の申立てをするとの連絡があった場合、マンションの退去を求めることはできるのでしょうか。
【回答】原則として借主の退去を求めることはできません。
破産したことを理由として貸主が賃貸借契約を解除することはできないため、マンションからの退去を求めることはできません。
もっとも、借主に賃料の不払いをはじめとする賃貸借契約上の債務不履行があるときには、これを理由として貸主が賃貸借契約を解除し、マンションからの退去を求めることができることもあります。
なお、破産管財人が選任された場合には、破産管財人により賃貸借契約が解除される可能性があります。この場合にも、マンションからの退去を求めることができるでしょう。
借主が破産した場合、破産法53条に基づき、破産管財人は、賃貸借契約を解除するか、破産者の債務を履行して貸主に債務の履行を求めることができます。
他方で、貸主には、借主の破産を理由とする解除は認められていません。
従来は民法621条により、借主が破産したときには、貸主が賃貸借契約を解約できるとされていましたが、平成16年の破産法改正(平成16年法律76号)に伴い削除されました。破産した借主の保護を重視したためです。
なお、マンションのような居住用不動産の場合には、破産管財人による賃貸借契約の解除がされることは決して多くはありません。破産管財人が解除をする目的は、敷金を現実化して破産財団(※)に組み入れるためですので、敷金額が少額である場合や敷金相当額が破産者等から提供される場合には、あえて解除をする必要がないというのが理由のようです。
※破産開始決定がなされると、開始決定時の総財産について破産者の管理処分権が剥奪され、その総財産が清算目的のために破産管財人の管理下に置かれ、債権者のために換価されます。この財産の集合体のことを破産財団といいます。
借主に賃貸借契約上の債務不履行があれば、それを理由に貸主が賃貸借契約を解除し、マンションからの退去を求めることができることもあります。
ただし、債務不履行がある場合でも、信頼関係を破壊するに至らない場合には、契約の解除は認められません(これを法律の世界では、「信頼関係破壊の法理」といいます)。これも借主の保護のためのルールです。信頼関係が破壊されたと評価されるためのハードルは高いです。
借主が破産した場合、賃料の不払いという債務不履行が発生する可能性が高いでしょう。
しかし、例えば、賃料10万円の支払いが1度遅れたのみでは、信頼関係が破壊されたとは評価されず、貸主による賃貸借契約解除は認められにくいと考えられます。
以上のように、借主が破産した場合、即座に退去を求めるのは難しいといえます。
借主が破産してからの事後的な対応として強力な手段がない以上は、入居の際の審査をしっかり行うといった入口での対策が重要となるでしょう。また、空き部屋のリスクマネジメント等とあわせて、安定したインカムゲインを得られる仕組みづくりをしておくことをおすすめします。
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