コラム Column

立ち退きの正当事由の裁判例を弁護士が紹介


【相談】近隣へ迷惑をかけている賃借人との契約更新は拒否し立ち退きを求める事はできますか。

収益物件を購入したのですが、最近、近隣に迷惑をかけている賃借人がいることがわかりました。このような賃借人がいると、他の入居者が転居してしまうのではないか心配です。この賃借人とは契約更新を拒否し立ち退きを求めることはできないのでしょうか。

【回答】迷惑行為のみで契約更新の拒否は可能ですが難しいため、立退料の支払いが必要になる場合があります。

近隣への迷惑行為をする賃借人との契約更新を拒否するためには、迷惑行為をはじめとする諸般の事情を考慮して借地借家法の定める正当事由があると認められる必要があります。しかし、迷惑行為のみによって正当事由が認められることは難しいため、併せて立退料の支払いが必要になる場合があります。

また「【実践大家コラム】入居者さんとのトラブル珍体験(1)」では、不動産投資家が入居者とのトラブルとその対応について詳しく解説しています。是非ご参考ください。

立ち退きの正当事由とは

建物の賃貸借契約で賃貸人が契約の更新を拒否するためには、借地借家法28条が定める正当事由があることが必要です。

正当事由があるかどうかは、

  1. 建物の賃貸人と賃借人が建物を必要とする事情
  2. 建物の賃貸借に関するこれまでの経過
  3. 建物の利用状況
  4. 建物の現況
  5. 立退料

が、総合的に考慮されて判断されます。

この判断にあたっては、①が中心的な考慮要素であり、②から⑤までが補充的な考慮要素とされます。

つまり、①を考慮して判断できるかどうかが検討されて、①のみでは判断できない場合には、②から⑤までの考慮要素を加えて、正当事由があるかどうかが判断されます。

正当事由における迷惑行為の位置付け

(1) 迷惑行為のみで正当事由が認められることは難しい

迷惑行為は、正当事由のうち、②建物の賃貸借に関するこれまでの経過として、一つの考慮要素になると考えられます。

ただし、②は正当事由の考慮要素としては補充的なものとされていますから、迷惑行為のみで正当事由が認められるためには、かなりの悪質な行為でなければならないといえますし、下記に紹介するとおり、迷惑行為だけでは正当事由があるとはいえないが、併せて立退料を支払うことによって正当事由が認められるとする裁判例があります。

(2) 契約違反としての迷惑行為

一方、契約の中に、近隣への迷惑行為や、共同生活を乱す行為などを禁止する規定があれば、迷惑行為という契約違反に基づく契約の解除を主張することも考えられます。

しかし、契約違反による契約解除のためには、賃借人に、賃貸人との信頼関係を破壊したといえるほどの背信的行為があったといえる必要があります(信頼関係破壊の法理と呼ばれています。)。この背信的行為が認められるためには、契約違反の程度や結果が重大であることが求められることから、迷惑行為のみによって正当事由が認められることが難しいことと同様の問題があります。

立ち退きの正当事由における裁判所の判断

(1) 正当事由が認められた事例

裁判所は、ゴミ出しのルールを守らなかったり、他の入居者に暴言を繰り返したり、賃貸物件の前の道路の通行人に意味不明な言動をするなどの賃借人の迷惑行為が正当事由になるかどうかが争われた事案において、これらの行為は契約違反ではあるものの、これらの契約違反のみによって正当事由が認められるとはいえないとしました。そして、75万円の立退料が支払われることを併せて考慮することによって、正当事由が認められるとしました(東京地裁平成16年4月23日判決)。

(2) 正当事由が認められなかった事例

これに対し、近隣へ迷惑がかかっていても、賃借人である古紙回収業者によって騒音や悪臭等が発生することを賃貸人が契約時に予想できたことや、近隣住民からの苦情は賃借人と近隣住民との間で解決されるべき問題であること、賃借人が近隣への迷惑がかからないように改善策を実施する用意があることなどを理由に、正当事由を認めなかった裁判例もあります(東京地裁平成5年1月22日判決)。

迷惑行為をする賃借人の問題への対策

本件では、収益物件を購入した後に迷惑行為をする賃借人の問題が発覚していますが、上記のとおり、迷惑行為を行う賃借人がいたとしても、その賃借人との契約更新を拒否したり、契約を解除することは簡単ではありません。

そこで、レントロール(賃借条件一覧表・家賃明細表)を確認する際に、問題のある賃借人がいることを売主側が認識しているのであれば説明を求め、その詳細を把握して購入を検討することが対策の一つとして考えられます。

しかし、残念ながら契約時には売主側も認識していなかった迷惑行為をする賃借人の問題が起きた場合には、契約の更新拒否や契約解除には難しい判断が必要となりますので、弁護士にご相談ください。

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