コラム Column
弁護士(第二東京弁護士会)。
2017年に弁護士法人Martial Artsに入所し、不動産トラブルや賃貸借契約書に関する業務をはじめ、多分野にわたる法律業務に従事している。
【相談】袋地を購入して建物を建築することはできるのでしょうか。
不動産投資のために賃貸物件建設用の土地を探していたところ、かなり安い土地を見つけ、購入を検討しています。ただ、その土地は、四方を他人所有の宅地に囲まれており、公道に接していない土地(いわゆる「袋地」)でした。すぐ近くには幅4メートル以上の広い道路が通っていますが、その道路に出るには他人の土地を通る必要があります。
建築基準法では道路に接していない土地では新たな建物の建築や建て替えができないと聞いており、この土地に建物を建築できる可能性がないのであれば、購入はあきらめようと思っています。敷地が道路に接していないといけないのであれば、隣の土地の所有者に通路分の土地を売ってくれないか持ちかけてみようと思いますが、うまく行くかわかりません。
他方、袋地を所有する者は囲んでいる土地を通る権利があるということも聞いています。
幅2メートルにわたってその通行権があるのであれば、結局道路に接しているとして建物を建築することはできないのでしょうか。
【回答】接道義務を満たすような土地を取得するか、通行権を得たうえで特定行政庁の許可を得る等の例外規定に該当する場合は建物を建築することができます。
接道義務を満たすように隣の土地の所有者から道路までの間口が2メートル以上の土地を取得できれば、建物を建築することができます。
本件で通路用の土地を取得できず、通行権があるだけの場合、原則として建物を建築することはできませんが、建築主事の設置の有無に応じて都道府県知事又は市区町村長が、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合であれば建物を建築することができます。
袋地で建物を建設するには
という2つの方法があります。
以下で解説します。
建築基準法では、建物を建築する場合、建築物の敷地は原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接しなければならないと定めており(建築基準法43条1項)、これを「接道義務」といいます。道路に2メートル以上接するとは、道路から建物に入るための間口が2メートル以上必要であるということです。
この接道義務は、災害や事故が発生した場合に道路まで避難しやすくし、また、救急車等の緊急車両が通行できるようにすることを目的としています。
もっとも、上記接道義務には例外があり、本件との関係では、建築基準法43条2項2号が「その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの」にあたる建築物については接道義務を満たさなくとも建築することが可能であると定めています。建築基準法施行規則10条の3第4項がこの「国土交通省令で定める基準」を定めており、そのうち同項3号は「その敷地が、その建築物の用途、規模、位置及び構造に応じ、避難及び通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する通路であって、道路に通ずるものに有効に接する建築物であること」を基準としています(例外はこれらに限りませんが、本件に関係のあるものを抜粋しています)。
なお、特定行政庁とは、建築主事を置く自治体の長のことをいいます。市町村(および東京特別区)に建築主事を置けばその「市区町村長」が特定行政庁であり、建築主事を置かない市町村にあっては「都道府県知事」が特定行政庁となります。
接道義務を満たさず、接道義務の例外にも該当しない場合は、建築確認を取得することができず、建物を建築することができません。
そして隣の土地の所有者との売買交渉がうまく進み、「接道義務」を満たす土地(袋地から道路に至る通路となる間口2メートル以上の土地)を取得できた場合は、問題なく接道義務を満たしますので、建物の建築が可能になります。
他の土地に囲まれて道路に接しない土地を「袋地」といい、袋地を囲んでいる土地を「囲繞地」といいます。
袋地の所有者は、法律上当然に、公道に出るために囲繞地を通ることのできる権利を認められており(民法210条1項)、この権利を「囲繞地通行権」といいます(袋地通行権や隣地通行権ということもあります)。
また、袋地の所有者が囲繞地の所有者と通行について合意をすることにより通行権を設定することもできます。これを「通行地役権」といいます。
囲繞地通行権は、必要最小限の方法でしか通行することができないため、「避難及び通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する通路」を設置することまではできないと考えられます。
他方、通行地役権は、合意によって利用範囲を定めることができるため、2メートル以上の幅の通路を確保することも可能です。
もっとも、通行地役権の設定により袋地から道路に至る2メートル以上の幅の通路が確保できるからと言って、それだけですぐに接道義務の例外として特定行政庁の許可を得られるわけではなく、「建築物の用途、規模、位置及び構造に応じ、避難及び通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する通路」であり、かつ、「特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認め」られることが必要です。
最終的に許可を得られるどうかは特定行政庁の判断によりますので、特定行政庁の許可を得たい場合はあらかじめ許可を求める特定行政庁に許可基準を確認すべきです。
例えば、東京都の許可同意基準では、本件との関係でいうと、道路に至る幅4メートル以上の通路が確保され、通路と袋地が2メートル以上接し、将来にわたって幅4メートル以上の通路を確保することについて、通路部分の所有者の2分の1以上の承諾が得られた場合は東京都知事の許可を得ることができるとしています(建築基準法第43条第2項第2号に関する一括審査による許可同意基準第2基準4第1号。許可基準はこれらに限りませんが、本件に関係のあるものを抜粋しています)。
袋地は通常の土地より安く購入できますので、建物を建築するようにできれば、価値の下がった物件の価値を上げて大きな利益を挙げることができます。
しかし、結局通路部分の土地を取得できず、特定行政庁の許可も得られず例外規定にも該当しない場合は建物を建築できません。その場合に当該袋地を売却しようとしても、建築が難しいという問題があるためなかなか売却できないことも考えられます。
袋地の購入を検討する場合は、このようなリスクを踏まえたうえで、接道義務との関係で建築確認を取得できる可能性があるのか慎重に検討するようにしましょう。
もし袋地に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします。
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