コラム Column
弁護士(東京弁護士会)。慶應義塾大学法科大学院修了。
不動産トラブルに関する業務、家族信託・遺言作成業務などをはじめとする多岐の分野に携わる。
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【相談】賃貸借契約書において遅延損害金の定めを置く場合、利率に上限はあるのでしょうか。
私が経営する不動産管理会社が所有しているアパートの賃借人の一人が、現在、家賃を3か月滞納しています。
賃貸借契約書においては、遅延損害金に関して、次のような条項が入っています。
「賃借人が、本契約に基づく金銭債務の履行を遅滞した場合、賃借人は賃貸人に対し、遅延した額に対する、弁済期の翌日から支払済みまで日歩8銭(18.25%)の割合による遅延損害金を支払うものとする。」
そこで、私は、滞納家賃に加算して、各月の滞納家賃の支払期限の翌日から年18.25%の遅延損害金を請求しました。
すると、その賃借人は、年18.25%の利率は法律違反で無効だと主張しています。
遅延損害金に関する上記の条項は、有効ではないのでしょうか。
【回答】原則として、当事者間で自由に定めることができますが、賃貸人が事業者で賃借人が一般消費者(個人)である場合、消費者契約法が適用され、14.6%を超える部分は無効となります。
賃貸人が事業者で、賃借人が一般消費者(個人)である場合、消費者契約法の規定が適用されます。
消費者契約法の規定が適用される場合、滞納家賃等に関する遅延損害金の利率について、年14.6%を超える数字を定めていると、14.6%を超える部分は無効となってしまいます。
ただし、消費者契約法の施行日は平成14年4月1日であり、同日より前に締結された賃貸借契約については、同法が適用されないと判断され得ます。
家賃滞納の対処法については「【弁護士解説】家賃滞納トラブル! 具体的な対処法を実例を元に解説」でも解説されていますので是非ご参考ください。
当事者間において、遅延損害金に関する特約を規定した場合、第3項において説明する民法の規定は適用されません。
当事者間の合意によって遅延損害金の利率を定めることができます。
上記のとおり、遅延損害金の利率は、当事者間の合意によって自由に定めることができるのが原則です。
しかし、賃貸人が事業者で、賃借人が一般消費者(個人)である場合、消費者契約法の規定が適用されます。
そして、消費者契約法においては、以下の定めがあります。
つまり、賃貸借契約において消費者契約法が適用される場合、滞納家賃等に関する遅延損害金の利率について、年14.6%を超える数字を定めていると、14.6%を超える部分は無効となってしまいます。
消費者契約法附則において、この法律は、平成14年4月1日から施行すると規定されています。
つまり、平成14年4月1日以降に締結された賃貸借契約につき消費者契約法は適用されますが、同日より前に締結された契約については適用されません。
しかし、消費者契約法施行前に締結された賃貸借契約であっても、施行後に更新手続きが取られた場合において、更新後の賃貸借契約に消費者契約法の適用があるか否かについては、裁判所の判断が分かれています。
自然に考えれば、契約が更新されても、更新の前後で同一性を失わないと言い得ますが、更新書面の作成の有無、更新後の条件変更の有無、消費者の救済の必要性等を総合的に考慮して個別に判断がなされています(※)。
※たとえば、大阪高判平成16年12月17日においては、以下のように判示し、消費者契約法施行前に締結され、施行後に更新された賃貸借契約について、消費者契約法の適用があると判断しています。
「本件更新契約は、当事者間の合意による約定、即ち契約であることはもとより、本件覚書では、今後の賃貸期間を定めるだけでなく、賃料及び共益費の改定並びに新たな特約条項の設定を行うこともあり得ることが想定されたうえ、改定されなかった契約条項については従前の契約どおりとすることが定められているのであって、本件更新合意により従前の賃貸借契約と同一条件の新たな賃貸借契約が成立したといえる。」
更新時に新たな特約の設定を行うことが想定された点が重視され、上記のとおり判断されました。
なお、賃貸借契約に係る滞納家賃に関する遅延損害金は、金銭を目的とする消費貸借にかかる利息ではないため、利息制限法による制限はありません。
仮に、契約書において遅延損害金の定めがない場合には、民法の規定によることになります。
令和2年4月1日に改正民法が施行されましたが、それ以前に締結された契約については、改正前民法が適用されます。
改正前民法においては年5%(民法419条1項、404条)とされていました。
また、貸しビル、貸店舗等、賃貸借契約の締結が商行為に当たるときは、年6%(民法419条1項、商法514条)とされていました。
昨今の低金利の状況を踏まえて、法定利率は引き下げられることとなりました。
改正民法においては、利息が生じた最初の時点における法定利率によると規定され(民法404条1項)、法定利率は年3パーセントとされました(民法404条2項)。
法定利率は、3年を1期とし、1期ごとに変動するものとされました(改正民法404条2項)。
本件では、賃貸人が事業者で、賃借人が一般消費者(個人)ですので、消費者契約法の規定が適用されます。
滞納家賃等に関する遅延損害金の利率について、年14.6%を超える部分は、上述の消費者契約法9条2項に基づき無効となってしまいます。
ただし、消費者契約法が施行された平成14年4月1日より前に、賃貸借契約を締結していた場合には、消費者契約法が適用されないとの判断がなされることも考えられます。
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