不動産投資講座 Knowledge
弁護士(東京弁護士会、72期)。
慶應義塾大学法学部・同大学法務研究科卒業。
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不動産の購入にあたっては、事前に隣地との境界を確認しておくべきです。
境界が確定していない場合、将来、隣地の所有者との間で境界に関するトラブルが生じる可能性があるからです。
※土地と土地の境界が未確定の土地のことを筆界未定地と呼ぶこともあります。
もっとも、境界確定には費用と時間がかかることから、測量に必要となる費用を売主が支払うかわりに、境界未確定のまま土地の売却が行われることがあります。この場合、境界確定は買主が行うことになりますが、その負担は、測量に必要となる費用にとどまらないことも少なくありません(例えば、隣地所有者が境界確定の立会いに応じず境界確定の訴えを行わなければならない場合等。)。また、境界確定の結果によっては、当初予定していたような土地の利用ができない場合もあります。そのため、境界未確定の土地を安易に購入することは控える必要があります。
このように境界未確定の土地は、潜在的なトラブル・負担を抱えていることから買主が見つかりづらく、価格が低くなる傾向にあります。裏を返せば、境界に関する問題についてきちんと理解しておくことによって、土地を安く購入するチャンスを掴める可能性があると考えることもできます。
そこで、この記事では、不動産投資にあたり、境界について知っておくべき事項をご説明いたします。
※売買契約時に持ち上がる「境界の確定」の内容が様々であることには注意が必要です。土地家屋調査士作成の筆界確定書がある場合から隣地所有者と口頭で境界を確認しているにすぎない場合まであります。
境界には、筆界(法律上の境界)と所有権界(私法上の境界)の2つの概念があります。
筆界(法律上の境界)とは、土地の登記簿に記載されている土地同士の境のことをいいます。
地番が付された時、分筆(土地を分ける)時、合筆(複数の土地を合わせる)時等に定められるもので、当事者が自由に変更することはできません。
所有権界(私法上の境界)とは、隣接している土地の所有者間で合意した境(所有権の範囲を決める境界)のことをいいます。それぞれの土地の所有者が合意すれば、自由に変更できます。
例えば、筆界どおりでは利用しにくい2つの土地があった場合、土地所有者らの合意により、土地を売買・交換して、所有権界を変えることができます。
図1:所有権界のイメージ
※所有権界を変更しても、筆界はそのままとなるため、下記⑵③のような対応が必要となります。
買主は境界未確定(筆界未定地)のまま土地を購入するのはリスクがあるため、売却する場合は筆界未定の解消を求められるケースがあります。
境界未確定(筆界未定地)の場合、境界を確定のために次のような対応をすることが考えられます。
まず、隣地所有者の立会いのもと境界確定を行うことが考えられます。
立会いを求める際には、資料(公図、地積測量図等)を提示して境界の位置が妥当であること、立会いは後日の紛争防止に繋がること、代理人の立会いも可能であることを説明して納得していただけるよう努めましょう。
※過去の地積測量図では精度が低いために、再度測量を行わなければ境界が確定できない場合があることには注意が必要です。
①の方法によることが難しく、合意もできない場合には、法的手続を講じる必要があります。
筆界の争いの場合には、境界確定の訴えを行うか、筆界特定制度を利用することを検討することになります。いずれを行うかについて、特に決まりはありません。筆界特定制度を利用しその結果に不服があれば境界確定訴訟を提起することもできますし、いきなり境界確定の訴えを提起することもできます。
境界確定の訴え(境界確定訴訟)とは、筆界の位置に争いがある場合に、判決による筆界の確定を求める訴訟のことをいいます。
境界確定の訴えは通常の訴訟とは異なる性質を有しており、裁判所は当事者の主張に拘束されず、裁判において現れたあらゆる事情を踏まえて必ず境界を定めることになります(境界を定めることができないという判断がされることはありません。)。
筆界特定制度とは、土地所有者の申請に基づき、筆界特定登記官が、筆界調査委員の意見を踏まえて、筆界の位置を特定する制度のことをいいます。
この制度は、新たに筆界を定めるものではなく、実地調査や測量等を行い、過去に定められた筆界を明らかにするものです。そのため、境界確定訴訟が行われた場合、筆界特定制度によって定められた筆界は、境界確定訴訟の判決確定時点で効力を失います。ただし、境界確定訴訟においては、筆界特定の結果は境界の位置に関する重要な証拠となります。
所有権界の争いの場合(合意ができない場合)には、所有権確認訴訟を提起することになります。所有権確認訴訟においては、裁判所は当事者の主張に拘束されることとなり、和解により解決することも可能です。
このように、筆界と所有権界のいずれの問題であるかを踏まえて法的手続を選択する必要があります。法的手続の選択に迷った場合には、弁護士に相談し適切なアドバイスをもらうと良いでしょう。
筆界と所有権界がずれている土地が売買された場合、新たに隣地の所有者となった買主との間で、所有権界の合意につき売主の錯誤等が問題となることがあります。
そこで、所有権界が決まった際に筆界とずれている場合は、筆界を所有権界に合わせるべく土地を合筆したうえで新たに所有権界に沿って分筆し登記しましょう。
※登記に隣地所有者が応じない場合には、訴訟を行う必要があります。
適切に対応を行えば、境界未確定の問題のほとんどは解決できます。
境界未確定の土地については、このような対応にかかるコストも踏まえ購入に臨むことをおすすめいたします。
なお、以上の点を踏まえると、境界未確定の土地を売却する際には、こうしたコストを厭わない属性の人物(例えば、弁護士)や境界未確定の問題を解消できる隣地所有者を相手にするといったことが考えられます。このように知識をもとに様々な工夫ができるという点は不動産投資の醍醐味のひとつといえるかもしれません。
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