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不動産売買で仲介業者を排除して直接取引したら仲介手数料を払う必要があるか


不動産の仲介業者を排除して直接取引を行った場合
業者は仲介手数料を請求することができます

不動産売買において、媒介依頼者が仲介業者を通じて知り合った相手と仲介業者を介さずに直接取引を行った場合、仲介業者は仲介手数料を請求することができます

媒介契約の種類によっては、自己発見取引が可能な場合と禁止の場合があります。媒介契約の種類については、以下で詳しく解説します。

例外として、仲介業者の責めに帰すべき事由(調査義務・説明義務違反など)によって媒介契約を解除した場合は、その後に直接交渉して契約したとしても、仲介業者に仲介手数料を請求することができません。

不動産には3種類の媒介契約がある

媒介とは、契約当事者の委託を受け、両者の間に立って売買契約や賃貸借契約等の契約の成立に向けてあっせん尽力することをいいます。不動産取引実務では、「仲介」や「あっせん」等の表現を使うことも多いです。

宅地建物取引業法では、媒介の依頼者が他の仲介業者に媒介を依頼することができるか、また、自ら若しくは仲介業者以外の知人を通じて知り合った相手方と売買契約等を締結すること(自己発見取引)ができるかによって、専属専任媒介契約、専任媒介契約及び一般媒介契約という3種類の媒介契約が定められています。

専属専任媒介契約は、他の仲介業者に媒介の依頼をすることができず、かつ、自己発見取引も禁止されている媒介契約です。

専任媒介契約は他の仲介業者に媒介の依頼をすることはでないものの、自己発見取引は可能な媒介契約です。

一般媒介契約は、他の仲介業者に媒介の依頼をすることも自己発見取引をすることも可能な媒介契約です。

仲介業者を排除した直接取引における報酬請求の判例

媒介契約は成功報酬制がとられていますので、媒介契約によって売買契約や賃貸借契約が成立したときに報酬(仲介手数料)が発生します。媒介契約による契約の成立を条件として、契約が成立したときに報酬請求権の効力が発生するということです。このような条件を停止条件といいます。

停止条件の成就が故意に妨げられた場合は、民法130条1項により、相手方は停止条件が成就したものとみなすことができます。

ここで問題となるのが、媒介依頼者が契約成立前に仲介業者を排除して、仲介業者から紹介を受けた相手方と直接交渉して契約を締結した場合、仲介業者が仲介手数料を請求することができるかということです。

この点に関する判例として最判昭和45年10月22日民集24巻11号1599頁があります。同判例は、仲介業者の仲介活動により売買価格について僅かの差が残っているだけで間もなく売買契約成立に至る状態にあったにもかかわらず、媒介依頼者たる買主が仲介業者を排除して、仲介業者と買主が相談していた金額以上の売買価格で売主と直接売買契約を締結したという事案で、民法130条により仲介業者から買主への報酬請求を認めました

つまり、仲介業者を排除して直接取引を行った場合は、媒介契約による契約成立という条件成就を故意に妨げたものとして、条件が成就したとみなして仲介手数料の請求が可能となるのです。

標準媒介契約における報酬請求の規定

国土交通大臣が定めた標準媒介契約約款では、以下のとおり専属専任媒介契約、専任媒介契約及び一般媒介契約のそれぞれにつき、直接取引の場合の報酬請求の規定を定めています。

  • 専任媒介契約約款第11条
    専任媒介契約の有効期間内又は有効期間の満了後2年以内に、甲が乙の紹介によって知った相手方と乙を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結したときは、乙は、甲に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます。

  • 専属専任媒介契約約款第11条
    専属専任媒介契約の有効期間の満了後2年以内に、甲が乙の紹介によって知った相手方と乙を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結したときは、乙は、甲に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます。

  • 一般媒介契約約款第13条
    一般媒介契約の有効期間内又は有効期間の満了後2 年以内に、甲が乙の紹介によって知った相手方と乙を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結したときは、乙は、甲に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます。

上記標準媒介契約約款で契約した場合は、民法130条を考えるまでもなく、契約約款の条項によって、仲介業者が直接取引をした媒介依頼者に仲介手数料を請求することができます。

仲介業者を排除した直接取引でも報酬請求できない場合

媒介依頼者が、仲介業者を排除して仲介業者が紹介した相手方と直接取引を行った場合であっても、停止条件の成就を故意に妨害した事情がなければ、仲介業者が媒介依頼者に対して仲介手数料を請求することはできません。媒介契約が仲介業者の調査義務・説明義務違反により解除された後に直接取引を行った場合が典型例です。

例えば、東京地判昭和38年8月15日判例タイムズ154号70頁は、仲介業者が売買物件に抵当権や仮登記がなされていることを調査することなく物件を紹介したため、媒介依頼者である買主が媒介契約を解除し売主と直接交渉して売買契約を締結した事案において、仲介業者には注意義務違反があり、媒介契約は仲介業者の責めに帰すべき事由によって解除されたものであって故意に条件の成就を妨げたことにならないとして、仲介業者からの媒介報酬請求を認めませんでした。

標準媒介契約約款に基づく媒介契約が締結されている場合でも、同様に考えることができると思われます。

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