コラム Column
弁護士(第二東京弁護士会)。
2017年に弁護士法人Martial Artsに入所し、不動産トラブルや賃貸借契約書に関する業務をはじめ、多分野にわたる法律業務に従事している。
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【相談】売主と仲介業者から売買物件の隣人トラブルについての説明がありませんでした。説明があったら購入しなかったので、損害賠償を請求できますか。
賃貸用に中古マンションを購入しました。購入した部屋の隣の住人が神経質な人で、頻繁に生活音がうるさいと近所の住人に文句を言ってくるようです。
私の購入した物件にも賃借人がいたのですが、その隣人とトラブルになったことから退去してしまいました。その後も隣人トラブルがあるせいで、なかなか賃借人がつきません。あとから分かったのですが、この隣人は以前から何度もトラブルを起こしていて、なかなか買主や賃借人がつかず、売主や仲介業者も手を焼いていたようです。
マンションを購入するとき、売主と仲介業者に隣人はどんな人か尋ねたものの、すこし神経質な人だとは言われましたが、具体的な隣人トラブルについてはまったく説明がありませんでした。ちゃんと説明があればこのマンションは購入しなかったと思います。売主と売主側の仲介業者に、説明義務違反で損害賠償請求をすることはできないでしょうか。
【回答】説明義務違反として損害賠償を請求できる可能性があります。
売買対象物件について、隣人トラブルが発生している場合、売主及び売主側の仲介業者は、その旨を買主に説明する義務を負うと考えられます。
隣人がどんな人か尋ねたにもかかわらず、神経質な人だとだけ伝え、具体的なトラブルについて説明しなかったことは説明義務違反にあたり、損害賠償請求が可能です。
その場合の損害としては、実際の売買代金と、隣人トラブルについて適切な説明があった場合に想定される不動産の交換価値との差額となると考えられます。
以下で判例なども合わせて詳しく解説します。
特に不動産の売買では、当該物件についての理解が不十分なまま契約を締結すると、買主は不測の損害を被ることがあります。このようなとき、買主としては、売主側がしっかり説明すべきだったのに説明がなかった、説明義務違反だとして売主の責任を追及したいと思うでしょう。
説明義務につき、実は民法上明文の規定は設けられておりません。
しかし、判例上契約準備段階に入った者同士の間では、誠実に交渉を続行し、一定の場合には重要な情報を相手方に提供すべき信義則上の義務を負うとされています。
宅建業法では、不動産の購入者の利益の保護を図ることなどを目的として、仲介業者は購入者に一定の重要な事項について説明する義務を定めています(宅建業法35条)。これを重要事項説明といい、対象となる宅地または建物に直接関係する事項や取引条件に関する事項が重要事項説明の範囲に含まれます。詳しくはコラム「重要事項説明」をご覧ください。
隣人トラブルは重要事項説明の範囲には含まれませんので、仲介業者としては、重要事項説明以上に隣人トラブルについても説明する義務があるといえるかが問題となります。
本件の参考となる裁判例として、大阪高判平成16年12月2日判例時報1898号64頁があります。
この裁判例は、居住用不動産の売買において、売主及び売主側の仲介業者が隣人とのトラブルについて説明をしなかった事案についての判断です。この裁判例では、おおよそ次のようなトラブルがありました。
この点につき、売主側は、物件状況報告書に「西側隣接地の住人の方より、騒音等による苦情がありました。」との記載をしていました。しかし、買主がこの記載について具体的事情を尋ねたとき、売主は直前に別の購入希望者が内覧をした際のトラブルについては説明せず、今は特に問題ないと述べたうえ、買主の「同じ子を持つ親として聞いておきたいのですけれど、近隣の環境に問題はありませんか。」との質問に対しては、売主も仲介業者も「全く問題ありません。」と答えています。
同裁判例は、まず、売主の説明義務について、売主が仲介業者に依頼する場合、重要事項の説明は仲介業者に委ねているといえ、売主本人は原則として買主に対して説明義務を負わないものの、「売主が買主から直接説明することを求められ、かつ、その事項が購入希望者に重大な不利益をもたらすおそれがあり、その契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される場合には,売主は,信義則上,当該事項につき事実に反する説明をすることが許されないことはもちろん、説明をしなかったり、買主を誤信させるような説明をすることは許されないというべきであり、当該事項について説明義務を負うと解するのが相当である。」と判示しました。
そして、上記事実関係から、信義則上売主に求められる説明義務に違反したと判断しました。
また、仲介業者の説明義務については、「宅地建物取引業法35条1項は、一定の重要な事項につき、宅地建物取引業者に説明義務を課しているが、宅地建物取引業者が説明義務を負うのは同条所定の事項に限定されるものではなく、宅地建物取引業者は,購入希望者に重大な不利益をもたらすおそれがあり、その契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される事項を認識している場合には、当該事項について説明義務を負うと解するのが相当である(宅地建物取引業法47条1項1号参照)。」として、仲介業者にも説明義務違反を認めました。
本件においても、購入するマンションに隣人トラブルがあることは、買主に重大な不利益をもたらすおそれがあり、契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される事項ですので、売主及び仲介業者に、隣人トラブルに関する説明義務違反があったといえるでしょう。
説明義務違反があったとしても,なにをもって損害ととらえるかも問題となります。
上記参考裁判例では、損害は実際の売買代金と、隣人トラブルについて適切な説明があった場合に想定される不動産の交換価値との差額であるとされました。具体的には、売買代金が2280万円であるところ、隣人トラブルの事情を考慮すると、本件隣人がいない場合の交換価値と比較して、少なくとも20パーセント相当額が減価していると認められるとして、456万円について買主の損害賠償請求を認めました。
最終的には裁判官の判断に委ねられますが、上記裁判例は本件でも参考になるでしょう。
もし不動産に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします。
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