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連帯保証人が死亡した場合、保証人の相続人に対して請求はできる?

投稿者名:森 春輝
投稿者資格:弁護士(第二東京弁護士会)

【相談】連帯保証人の死亡後に滞納された賃料を、連帯保証人の相続人に請求することはできますか。

 

所有しているアパートの1室について、令和2年6月に賃貸借契約を締結し、借主の叔父に連帯保証人になってもらいました。民法改正により個人の連帯保証人の場合は連帯保証人が支払義務を負う限度額を定めなければならないことは聞いていましたので、200万円の限度で連帯保証人が支払義務を負うように契約書に定めました。

 

最初は賃料もきちんと支払われていたのですが、令和3年1月から賃料の支払いが滞るようになりました。3か月分の賃料が支払われなかったので、賃貸借契約を解除し、借主に滞納賃料を支払うよう請求したのですが、職を失ってお金がないようで支払ってもらえませんでした。

 

仕方がないので、連帯保証人に請求しようとしたところ、連帯保証人である借主の叔父が令和2年12月に事故で亡くなっていたことが分かりました。

 

連帯保証人の相続人である連帯保証人の子に対して滞納賃料を請求することはできるでしょうか。

 

【回答】民法改正後の賃貸借契約の場合、連帯保証人死亡後の滞納賃料を連帯保証人の相続人に請求することはできません。

 

本件の場合、令和2年4月1日の改正民法施行後に賃貸借契約と保証契約が締結されています。

 

この場合、保証人が死亡するまでに賃貸借契約に関して生じた債務は連帯保証人の相続人が支払義務を引き継ぎますが、連帯保証人死亡後に発生した債務については相続人は支払義務を負いません。

 

本件では、連帯保証人死亡後に賃料滞納が発生していますので、連帯保証人の子に対して滞納賃料を請求することはできません。

 

【解説】

 

賃貸借契約の連帯保証人の債務額はいつ決まる?

 

民法改正により、賃貸借契約の連帯保証人に関して、連帯保証人が支払義務を負う限度額(これを「極度額」といいます。)を定めることが必要となりました(民法465条の2)。このことは、賃貸物件のオーナーの方であればご存じの方も多いでしょう。

 

極度額の定めのほかにも重要な改正点があり、連帯保証人の債務額がいつ確定するのかが定められたこともその一つです。

 

賃貸借契約の連帯保証人は極度額の範囲で、賃貸借契約に関して生ずる債務の支払義務を負いますが、一定の場合に、その支払義務を負う元金の金額が決まります。

 

元本が確定する場合は、以下の3つの場合です(民法465条の4第1項)。

 

①債権者が、保証人の財産について、金銭の支払いを目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき

②保証人が破産手続開始決定を受けたとき

③主たる債務者又は保証人が死亡したとき

 

このうち、③の「保証人が死亡したとき」にも保証債務の元本が確定することには注意が必要です。連帯保証人の死亡により保証債務の元本が確定するということは、連帯保証人の死亡後に賃貸借契約に関して生じた債務は、連帯保証の債務に含まれないということです。

 

連帯保証人の死亡までに賃貸借契約に関して生じた債務については連帯保証人の支払義務に含まれ、連帯保証人の相続人もその支払義務を引き継ぎます。ですので、連帯保証人の死亡前に滞納された賃料については、オーナーは連帯保証人の相続人に対して請求することが可能です。

 

しかし、連帯保証人の死亡後の生じた債務は、連帯保証の債務の範囲外ですので、連帯保証人の相続人はその支払義務を負いません。連帯保証人死亡後に滞納された賃料については、オーナーは連帯保証人の相続人に対して請求することができないのです。

 

 

賃貸借契約締結で手当てしておきましょう!

 

連帯保証人の死亡後に賃貸借契約に関して生じた債務について、連帯保証人の相続人に請求できないのであれば、それ以降は無担保で物件を賃貸していることと同じです。

 

ですので、一刻も早く新しい連帯保証人をつけてもらう必要があります。

 

もっとも、借主ならまだしも、通常はオーナーが連帯保証人と定期的にやり取りすることはありませんので、連帯保証人の死亡についてオーナーが把握するのは困難でしょう。

 

そこで、賃貸借契約において、連帯保証人が死亡した場合は直ちに貸主に通知する義務を定めておきましょう。

 

 

民法改正前の賃貸借契約だとどうなる?

 

以上の説明は、令和2年4月1日の改正民法施行後に賃貸借契約を締結した場合のものですが、現時点では民法改正前に締結した賃貸借契約が継続しているという方も多いと思います。民法改正前に賃貸借契約が締結された場合は、連帯保証人が死亡した場合の取り扱いが異なります。

 

民法改正前は、賃貸借契約の連帯保証人の債務について、元本確定事由は定められていません。そうすると、連帯保証人が死亡した場合、連帯保証人の相続人が連帯保証人の地位を引き継ぎ、保証契約が継続します。そのため、連帯保証人の死亡後に発生した債務についても、原則として連帯保証人の相続人が支払義務を負うことになります。

 

オーナーからすれば、民法改正前の方が、連帯保証人の相続人に請求できる範囲が大きく、有利になります。