コラム Column

賃貸住宅管理業法のガイドラインと概要を弁護士が解説


賃貸住宅管理業法の施行規則やガイドライン等が公表!

令和2612日、賃貸住宅管理業者の登録制及びサブリース関連規制等について定めた「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理業法)が成立し、同年619日に公布されました。同法のうち、サブリース関連規制部分は令和21215日に施行されることとなっています。

そこで、同法の施行に先立つ同年1016日、国土交通省より具体的な規制の対象を明示した「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則」(以下「施行規則」といいます。)、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(以下「解釈・運用の考え方」といいます。)及び「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」といいます。)が公表されました。

本記事では、サブリース関連規制の概要を簡単に説明したうえ、1016日に公表された施行規則、解釈・運用の考え方及びガイドラインにより、禁止される誇大広告や不当勧誘が明確化されたことから、主な具体例とともに誇大広告等の禁止と不当な勧誘等の禁止について解説します。

賃貸住宅管理業法のガイドライン(国土交通省)
賃貸住宅管理業法のポータルサイト(国土交通省)

サブリース関連規制の概要

賃貸住宅管理業法は、サブリースに関するトラブルを未然に防止するため、全てのサブリース業者の勧誘時やマスターリース契約(サブリース業者と賃貸オーナーとの間の転貸を目的とした賃貸借契約)締結時に一定の規制を導入しました。

①誇大広告等の禁止(28条)

②不当な勧誘等の禁止(29条)

③マスターリース契約締結前の重要事項説明(30条)

なお、誇大広告等の禁止と不当な勧誘等の禁止については、サブリース業者の行為だけではなく、サブリース業者と組んでサブリースによる賃貸住宅経営の勧誘を行う者(勧誘者)についても、勧誘の適正化のため規制の対象とされています。ガイドラインでは、賃貸住宅の建築請負や土地等の売買の際にマスターリース契約の締結を勧める建設業者や不動産業者、特定のサブリース業者から依頼を受けたオーナー等が勧誘者の例として挙げられています。

規制の実効性を担保するため、違反者に対しては、業務停止命令や罰金等の措置も定められています。

また、重要事項説明も必要になりましたので詳しくは「サブリース契約に重要事項説明が必要に!ポイントを弁護士が解説」をご参考ください。

誇大広告等の禁止(賃貸住宅管理業法28条)の具体例は?

誇大広告等とは著しく事実に相異する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示であり、虚偽広告も含みます。誇大広告等が禁止される事項は施行規則で定められており、次の4つの事項についての誇大広告等が禁止されます。

1つ目は、サブリース業者がオーナーに支払う家賃の金額、支払期日及び支払方法等の賃貸条件やその変更に関する事項です(施行規則31号)。これには、借地借家法32条に基づく賃料減額請求や利回りに関する事項も含まれます。ガイドラインによると、広告に「家賃保証」「空室保証」などの表示をする場合、その表示と隣接する箇所に、定期的に家賃の見直しがある場合はその旨と借地借家法32条の規定により家賃が減額されることがあることを表示すべきであり、そのような表示をしない場合や隣接箇所ではなく離れた箇所に表示する場合は誇大広告の禁止に該当するとされています。

2つ目は、賃貸住宅の維持保全の実施方法についてです(施行規則32号)。ガイドラインによると、実際にサブリース業者が実施しない維持保全業務を実施するかのように表示したり、実際は休日や深夜は受付業務のみ、又は全く対応されないにもかかわらず、「弊社では入居者専用フリーダイヤルコールセンターを設け、入居者様に万が一のトラブルも24時間対応しスピーディーに解決します」といった表示をしたりすることが具体例として示されています。

3つ目は賃貸住宅の維持保全費用の分担に関する事項です(施行規則33号)。ガイドラインでは、オーナーが負担する維持保全の費用が実際より著しく低額だと誤解されるような表示や、実際には毎月オーナーから一定の費用を徴収して原状回復費用に当てているにもかかわらず「原状回復費用なし」といった表示をする場合は、禁止される誇大広告等にあたるとされています。

4つ目は、マスターリース契約の解除に関する事項です(施行規則34号)。ガイドラインでは、契約期間中であってもサブリース業者側から解約することが可能であるにもかかわらず「30年一括借り上げ」といった表示をしたり、借地借家法により正当事由がなければオーナーから解約できないにもかかわらず「いつでも自由に解約できます」と表示する場合、また、実際は解除時に家賃数か月分を支払う必要があるにもかかわらず「いつでも借り上げ契約は解除できます」と表示する場合等は、誇大広告等の禁止に抵触するとされています。

もっとも、実際の広告が誇大広告等の禁止に当たるかどうかは、ガイドラインで例示されている場合に限らず、個別事案ごとに客観的に判断されます。

不当な勧誘等の禁止(賃貸住宅管理業法29条)の具体例は?

まず、マスターリース契約の締結の勧誘をする際、又は、契約解除を妨げるために、マスターリース契約に関する事項でオーナー側の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて故意に事実を告げず、又は事実ではないことを告げることが禁止されています(同法291号)。

ガイドラインでは、勧誘行為が故意に事実を告げない行為として、将来の家賃減額リスクがあること、契約期間中であってもサブリース業者から契約解除の可能性があることや借地借家法によりオーナーからの解約には正当事由が必要であること、オーナーに維持保全や原状回復の費用負担があること等について、あえて伝えず、サブリース事業のメリットのみ伝えるような勧誘行為が例示されています。

また、故意に不実のことを告げる行為としては、借地借家法によりオーナーに支払われる家賃が減額される場合があるにもかかわらず、断定的に「都心の物件なら需要が下がらないのでサブリース家賃も下がることはない」「当社のサブリース方式なら入居率は確実であり、絶対に家賃保証できる」「サブリース事業であれば家賃100%保証で、絶対に損はしない」「家賃収入は将来にわたって確実に保証される」といったことを伝える行為が例として挙げられます。

上記の故意に事実を告げない行為及び故意に不実のことを告げる行為に加えて、マスターリース契約に関する事項であって、オーナー側の保護に欠けるものとして施行規則で定める以下の4つのことも禁止されます(同法292号)。

1つ目は、マスターリース契約を締結若しくは更新させ、又はマスターリース契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、オーナー等を威迫する行為です(施行規則41号)。ガイドラインでは、例えば、相手方に対して、「なぜ会わないのか」、「契約しないと帰さない」などと声を荒げ、面会を強要したり、拘束するなどして相手方を動揺させるような行為が該当すると考えられています。

2つ目は、マスターリース契約の締結又は更新についてオーナー等に迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為であり(施行規則42号)、ガイドラインによると、一般的にはオーナー等に承諾を得ている場合を除き、特段の理由がなく午後9時から午前8時までの時間帯に電話勧誘又は訪問勧誘を行うことは「迷惑を覚えさせるような時間」の勧誘に該当するとされています。

3つ目は、マスターリース契約の締結又は更新について深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法によりオーナー等を困惑させる行為です(施行規則43号)。深夜勧誘や長時間勧誘のほか、オーナー等が勤務時間中であることを知りながら執ような勧誘を行ってオーナー等を困惑させることや面会を強要してオーナー等を困惑させることなどが例としてガイドラインに挙げられています。

4つ目は、マスターリース契約の締結又は更新をしない旨の意思(当該契約の締結又は更新の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したオーナー等に対して執ように勧誘する行為です(施行規則44号)。ガイドラインによると、具体的には、オーナー等が「お断りします」「必要ありません」「結構です」「関心ありません」「更新しません」など明示的に契約の締結又は更新意思がないことを示した場合が該当するほか、「(当該勧誘行為が)迷惑です」など、勧誘行為そのものを拒否した場合も該当することとなると説明されています。

賃貸住宅管理業者に対する規制の概要

賃貸住宅管理業者に対する規制もされております。

これまでに不動産賃貸管理業に特別な登録は必要ありませんでしたが、管理部屋すうが200戸以上となる場合は登録が義務付けられました。

200部屋未満でも登録することは可能です。国土交通省としてはトラブル防止の観点から登録することを推奨しています。

またオーナーへの事前の重要事項説明を義務付けたり、有資格者や実務経験者の配置を義務付けています。

オーナーに対して定期報告も必要となっています。

これまで法律で定められていなかった管理会社が行うべきことや、オーナーに対しての説明することが義務付けられており、トラブルを未然に防ぐ効果があると期待されます。

おわりに

投資家としては、自らの身を守りトラブルを避けるためにも、サブリース業者が賃貸住宅管理業法に基づく対応を行っているかどうかもチェックできるようにし、不適切な業者を排除できるように気を付けましょう。

賃貸住宅管理業法のサブリース関連規制のうち、マスターリース契約締結前の重要事項説明については記事を改めて解説する予定です。

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