コラム Column
弁護士(東京弁護士会)。慶應義塾大学法科大学院修了。
不動産トラブルに関する業務、家族信託・遺言作成業務などをはじめとする多岐の分野に携わる。
【相談】建物明渡しを認める判決において、仮執行宣言が付されることはあるのでしょうか。
私は、アパート1棟を所有しています。
アパートの老朽化が進んでいるため、取り壊して、新しいアパートを建築したいと考えています。
しかし、アパートの賃借人のうちの1人が明渡しの協議に全く応じてくれず、しかも、その賃借人は3か月も家賃を滞納しており、困っています。その賃借人は、どうやらアパートには居住していないようで、単なる荷物置き場として利用しているようです。
私は何度かその賃借人に対し、滞納賃料を支払ってほしいこと、アパートを明け渡してほしいことを伝えましたが、その賃借人からは何の返答もありません。
そこで私は訴訟を提起して、判決が出たらすぐに明渡しを求める強制執行の申立てを行うことを考えています。
ところで判決は、確定しなければ強制執行の申立てを行うことができないと聞きましたが、仮執行宣言が付されると、確定するのを待つことなく、強制執行の申立てを行うことができるとも聞きました。
私は1日でも早く強制執行の申立てを行い、その賃借人に出て行ってほしいと考えていますが、建物明渡しを認める判決に仮執行宣言は必ず付されるものなのでしょうか。
【回答】建被告が当該物件に居住しておらず、かつ、被告が原告の主張を争っていない場合には、仮執行宣言が付されることがあります。
建物明渡を求める訴訟において、被告が当該建物に居住しておらず、かつ、被告が原告の主張を争っていない場合には、仮執行宣言が付されることがあります。
ただし、それは、原則として、被告が当該建物に居住しておらず、かつ、被告が原告の主張を争っていない場合になります。
被告が当該建物に居住中であり、かつ、被告が原告の主張を争っているような場合には、原則として、裁判所は判決に仮執行宣言を付してくれません。
仮執行宣言とは、判決が確定する前でも執行することのできる効力を与えるものです。
裁判(第1審)において判決が出されると、2週間の控訴期間(第1審判決に対する不服申立てを行うことができる期間)において、いずれの当事者からも控訴の申立てがなかった場合に、ようやくその判決が確定します。
被告に対して何らかの給付(金銭の支払や、建物の明渡し等)を求める内容の判決が確定すると、確定の効力の1つとして、執行力を持つようになります。
執行力を持った場合、その判決に基づき、原告は被告の財産に強制執行をかけていくこと等が可能になります。
上記のとおり、判決が確定してから強制執行の申立てを行うのが原則になりますが、判決に「仮執行宣言」が付されると、上記の控訴期間を経ていない未確定の判決に基づいて、強制執行の申立てを行うことが可能になります。
仮執行宣言とは、未確定の判決に、それが確定した場合と同様にその内容を実現できる執行力を付与することをいいます(民事訴訟法259条1項)。
なお強制執行については「立退きしないときの最後の手段!強制執行とはどんな手続き?」で解説されていますので、詳しく知りたい方は是非ご参考ください。
仮執行宣言が付されるのは、上訴(控訴・上告)による判決の変更や取消しがあった場合であっても、問題が生じない判決に限定されます。
つまり、原状回復が可能であり、また、金銭の賠償によって損害を回復することが可能な財産権上の請求に関する判決に限られます。
建物明渡を求める訴訟についても、判決に仮執行宣言が付されることはあり得ますが、それは、原則として、被告が当該建物に居住しておらず、かつ、被告が原告の主張を争っていない場合になります。
被告が原告の主張を争い上訴(控訴・上告)してきた場合において、上訴(控訴・上告)によって判決の変更や取消しがあったとき、既に被告が建物を追い出されてしまった後であれば、被告の原状回復は極めて困難になります(単に、金銭等の財産の返還の必要が生じるケースと比べていただけると、原状回復の困難さがお分かりいただけると思います。)。
そのため、被告が当該建物に居住しており、かつ、被告が原告の主張を争っているような場合には、原則として、裁判所は仮執行宣言を付してくれません。
第1審の判決が出る前に、裁判所に対し、仮執行宣言を付してほしい旨の上申書を提出します。
そして、その上申書において、被告が当該建物に居住しておらず、かつ、被告が原告の主張を争っていないこと等を裁判所に対ししっかりと説明する必要があります。
なお、第1審の判決において、仮執行宣言が付されたとしても、控訴されてしまった場合には、裁判所は、当事者からの申立てによって、強制執行の停止を命じることができます(民事訴訟法403条1項3号)。その場合には、強制執行の手続きが円滑に進まないことになってしまいます。
本件で、賃借人が居住していないことを裏付ける証拠が揃い、かつ、賃借人がご相談者の主張内容(賃料滞納の事実等)について争っていないような場合には、訴訟において建物明渡しを認める判決において、(滞納賃料の支払を命じる判決のみならず、明渡しを命じる判決についても、併せて)仮執行宣言を付してもらえる可能性はあります。
ただし、仮執行宣言を付すか否かは、裁判所の裁量となるので、最終的には裁判所が判断することになります。
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