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【弁護士解説】不動産の売買契約書とは?注意したいチェックポイント

不動産を購入するにあたって、買主と売り主との間で必ず売買契約書を交わさないといけません。

売買契約書は契約であるため、しっかりと内容について確認しチェックするポイントがあります。

この記事では弁護士の私が不動産の売買契約の注意点やチェックポイントを解説していきます。

そもそも不動産の売買契約とは?

売買契約とは、当事者の一方がある財産権を相手方に移すことを約束し、相手方がこれに対して代金を支払うことを約束することによって成立する契約のことです。

民法555

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

通常、売買契約は口頭でも成立しますが、宅地建物取引業法371項により、宅建業者が自ら宅地や建物の売買契約の当事者となる場合には、売買契約書を交付しなければならないことになっています。

また、同項では、売買契約書に記載しなければならない事項が列挙されています。詳しくは、以下の条文をご覧ください。

このような規定が設けられたのは、取引に係る契約事項の内容を明確にして紛争が生じることを防ぐためです。このような規定の目的からも、売買契約書の内容が重要であることがご理解いただけると思います。

宅地建物取引業法371

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

一 当事者の氏名(法人にあつては、その名称)及び住所

二 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示

二の二 当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項

三 代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法

四 宅地又は建物の引渡しの時期

五 移転登記の申請の時期

六 代金及び交換差金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的

七 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容

八 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容

九 代金又は交換差金についての金銭の貸借のあつせんに関する定めがある場合においては、当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置

十 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容

十一 当該宅地若しくは建物が種類若しくは品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容

十二 当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容

なお、売買契約書は、一般社団法人不動産適正取引推進機構(RETIO)や公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会が作成したひな型が用いられることも多いようです。

重要事項説明との比較

※重要事項説明についての詳細は、「重要事項説明書のチェックポイント!という記事をご覧ください。

重要事項説明は、宅地建物取引士が、宅地建物取引士の免許証を提示したうえで、署名・捺印をした書面を用いて口頭によって行われます。

不動産取引を専門に業として行う者に、重要な事項の説明を求めることで、不動産の買主を保護することが目的です。

これに対し、売買契約は、重要事項説明につき買主が承諾のうえで、売主と買主との間で締結されるものであるため、宅地建物取引士が説明を行う義務はございません。

しかし、その内容は重要事項説明と重複する部分も多く、また、売買契約締結後には法的拘束力が生じますから、重要であることには変わりはありません。

なお、宅建業法の条文番号から、重要事項説明書のことを35条書面」、売買契約書のことを37条書面」と言う場合があります。

不動産の売買契約書のチェックポイント

売買契約書についても、重要事項説明書と同様、その場できちんとしたチェックを行うことは専門知識を有する方でも容易ではありません。

可能であれば、事前に売買契約書の交付を受けて目を通しておくと良いでしょう。

売買契約書の主なチェックポイントは以下の通りです。

※不動産投資の方針等によって、重要な点は異なってくる場合があります。また、以下に記載されている部分以外にも丁寧に確認すべきポイントが生じ得ます。取引の都度、ご自身で注目すべき点を整理するようにしましょう。

※必ず重要事項説明書との比較をするようにしましょう。両者で重複する事項の記載がなされることも多いため、ズレがないかの確認は大切です。

①物件の表示 ☆物件の特定ができているか?

記載されている面積が正確か、登記簿や公図、測量図などで確認しましょう。また、公簿売買(登記簿の面積に基づいた価格設定)か実測売買(実測面積に基づいた価格設定)かをみたうえで、計算に誤りがないかを確認しましょう。実測売買の場合、決済時に登記簿の面積と実測面積の差額を清算することになるので、清算の基準やタイミングにも気をつけましょう。売買代金額に影響するため大切なポイントになります。

②売買代金等の支払関係 ☆金額が適切か?

売買代金や手付金の金額が正確か確認しましょう。なお、手付金の金額は、売買代金の1020%程度が相場とも言われています。

支払時期を確認しましょう。

・いずれも金銭にまつわる事項であり、後にトラブルの要因となりやすいところであるため、大切なポイントになります。

③所有権の移転時期 ☆取得のタイミングがいつなのか?

所有権の移転時期を確認しましょう。代金支払期日とされるのが一般的ですが、当事者間の合意によって移転時期をずらすことも可能です。権利関係は物件の利用等に大きく関わるため、大切なポイントになります。

④各種費用負担 ☆誰が費用を負担するのか?

固定資産税や都市計画税、マンション管理費、修繕費等の清算関係について確認しましょう。②と同様、金銭にまつわる事項であり、後にトラブルの要因となりやすいところであるため、大切なポイントになります。

⑤設備 ☆どのように物件を利用できるのか?

・売買契約により物件に附帯する設備があるか、また、設備の状態がどうなっているのか確認しましょう。引き継がれると思っていた設備が引き継がれなかったり、撤去されると思っていた設備が撤去されなかったりすると思わぬトラブルに繋がります。

⑥契約解除 ☆円満に解除ができるか?

手付解除、契約違反解除、ローン特約解除のそれぞれにつき確認しましょう。

解除の際の違約金や解除の効果について確認しましょう。

・解除に至る場合、トラブルに発展しやすいため、予測可能性がきちんと担保されていることは大切です。

※ローン特約とは、ローンの審査が通らなかった場合に、無条件で売買契約の解除をすることを認める特約のことです。

※手付には、解約手付、証約手付、違約手付等があります。手付は、重要でありながら分かりにくいところも多いため、予めきちんと勉強されておくことをおすすめいたします。

⑦瑕疵担保責任・契約不適合責任 ☆不具合があった場合の対応がどうなるか?

瑕疵担保責任・契約不適合責任の内容に問題がないか確認しましょう。

※民法・宅地建物取引業法・住宅の品質確保の促進等に関する法律のいずれが適用されるかによって、責任追及ができる期間が異なります(順に、契約不適合があることを知ったときから1年以内、引渡し後2年以上(宅建業者が売主の場合)、引渡し後10年以上(新築住宅の場合))。

⑧印紙 ☆細かい税務関係までチェック!

・売買契約者には、税務上、印紙を貼付する必要があります。適切な金額の印紙が貼付されているか確認しましょう。印紙代は売買代金に応じて決まります。詳細は国税庁ウェブページをご覧ください。

インターネットで検索すると、不動産の売買契約書のチェックポイントがリスト化されたものなども散見されます。

それらも参考にしながら、丁寧に内容を確認して、より良い取引ができるようにしましょう。

【ワンポイント】 売買契約時の買主の持ち物

買主は、売買契約にあたって次の物を持参するようにしましょう。

印鑑

(実印または認印)

本人確認書類

(運転免許証等の顔写真つきのものが望ましいです。ない場合には、2点以上用意しましょう。)

手付金

(現金または預金小切手(線引小切手にしておくと紛失等があっても不正利用されにくいです。))

印紙代

(売買代金に応じて決まります。)

不動産の売買契約とは?まとめ

不動産を購入するにあたって必ず必要となる契約である売買契約書について注意する点を解説しました。

これから不動産を買われる方は、必ず中身を確認して理解し、もし気になる点があれば必ず不動産屋さんに確認するようにしましょう。

売買契約以降に自己都合で契約解除する場合は、手付金を放棄することが一般的です。契約の前にしっかりチェックすることが大切です。

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