コラム Column

【私道トラブルの判例を紹介】妨害排除請求について弁護士が解説


【相談】私道にはみ出す形で、塀を設置している私道敷地の所有者に対し、通行の妨害となる塀を除去してもらう請求をすることはできないのでしょうか。

私が所有する自宅の前面道路は、建築基準法42条1項5号の道路位置指定を受けている私道です。

その私道敷地の所有者Aは、私の自宅に隣接する土地の所有者でもあり、私道に大幅にはみ出す形で塀を設定しています。

車両の通行の邪魔になって危険なのですが、Aに対し、通行の妨害となる塀を除去してもらう請求をすることはできないのでしょうか。

なお、A所有の私道に、通行地役権は設定されていません。

【回答】通行地役権の設定がない場合でも、通路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者であれば、人格権的権利として、妨害排除請求が認められることがあります。

通行地役権の設定がない場合でも、通路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者であれば、人格権的権利として、妨害排除請求が認められることがあります。

なお妨害予防請求について詳しく知りたい方は「妨害予防請求権の訴訟について弁護士が分かりやすく解説」をご参考ください。

通行地役権が設定されている場合

通行地役権とは、通行という目的のために設定される地役権のことです(民法280条)。

通路敷地の所有者と、その通行者との間の合意により設定します。

通行の内容(徒歩・自動車等)、地役権設定の対価、契約期間等について協議して、通行地役権設定契約を締結します。

通行地役権の設定がある場合、通行地役権が設定された土地の所有者は、通行者の円滑な通行を妨げることをしてはならない義務を負います

そのため、契約で定めた通行の内容を妨げる態様で、通路に塀などが設置されている場合には、通行者は所有者に対し、その除去を求める(妨害排除請求)ことができます。

通行地役権が設定されていない場合

通行地役権が設定されていない場合には、通行者の請求は認められないのでしょうか。

本件では、建築基準法42条1項5号の道路位置指定を受けているということですので、まず、道路位置指定についてご説明いたします。

道路位置指定とは

建築基準法は、市街地における通行、防災などの公益目的の実現のために、都市計画区域内(※)における建築物の敷地の接道義務を定めています。

具体的には、都市計画区域内においては、建築物の敷地は、原則として、「道路」に2メートル以上接しなければならないと定められています(建築基準法41条の2、同法43条)。

この「道路」については、建築基準法に定めがあります。

「道路」とは、同法42条1項1号から5号に該当する幅員4メートル以上のものをいい、また、同条2項所定の道も道路とみなされます。

関係者の申請に基づいて特定行政庁から道路の位置の指定を受け、これをもって建築基準法の道路としますが(法42条1項5号)、これが道路位置指定といわれるものです。

この道路位置の指定を受けるには、当該土地所有者や宅地開発業者などが申請者となって、当該区域の存在する特定行政庁に対し、その旨の申請書を提出する手続きを踏む必要があります。

※土地計画区域とは、都市計画制度上の都市の範囲であり、原則として、都道府県が指定します。

私道のトラブルに関する判例

本件の参考となる判例をご紹介いたします。

最高裁平成9年12月18日判決

【事案の概要】

建築基準法42条1項5号の規定による位置指定道路に面した土地を所有しているXらが、位置指定道路の所有者Yによって、その道路の通行を妨害されていました。具体的には、道路の所有者Yが、道路付近に簡易ゲート等を設置する等して、Xらの自動車の通行を妨害し、Xらに対し、所定の内容の通行契約の締結を要求する等していました。

そこで、Xらは、道路位置指定処分等に基づく通行権があると主張して、訴訟を提起しました。

【判決の要旨】

「建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格的権利)を有する。」

裁判所は、上記のように判示し、XらはYに対し、道路についての通行妨害行為の排除及び将来の通行妨害行為の禁止を求めることができると判断しました。

 建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受けたからといって、道路の敷地の所有者が、第三者による道路の敷地の利用一切を受忍しなければならないわけではありません。

あくまでも、道路使用者の利益が日常生活上不可欠であると言える場合であり、かつ、敷地所有者が通行者の通行利益を上回る著しい損害を被る等の事情がない場合に、妨害排除請求が認められることになります。

つまり、道路使用者の利益と、道路敷地所有者の被る損害とが、比較考量されます。

上記判例においては、Xらには、他に代替手段がなかった(Yの所有する道路のほか、公道に通じる通路がなかった)という点が重視されました。

日常生活上不可欠な利益と認定されるかどうかで
妨害排除請求が認められるかが決まります

本件についても、ご相談者が、通路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者であると認定されれば、人格権的権利として、妨害排除請求が認められることになります。

しかし、本件で、仮に、他に公道に通じるルートがある等の事情があれば、私道の通行が日常生活上不可欠な利益とは言えないと判断され得ます。

また、塀の設置の状況によっては、通行が妨害される程度が小さく、ないしは、塀の除去によって通行利益を上回る著しい損害を私道の所有者が被る等の事情がある場合には、ご相談者の請求が認められない可能性があります。

もし私道に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします

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