コラム Column
弁護士(東京弁護士会)。慶應義塾大学法科大学院修了。
不動産トラブルに関する業務、家族信託・遺言作成業務などをはじめとする多岐の分野に携わる。
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【相談】売主である宅建業者が手付金等の保全措置を取らないため、買主が手付金を支払わなかった場合、買主は債務不履行責任を負うのでしょうか。
私は、この度、土地と建物を購入することとなり、売買契約を締結しました。売主は、宅建業者になります。
宅建業者は、買主保護の目的で、手付金等の保全措置を取らなければならないことになっていると聞いていますが、今回、売主となっている宅建業者はまだ手付金等の保全措置を取っていません。
しかし、まもなく、売買契約書において定められている手付金の支払期限が到来します。
そして、売買契約書においては、当事者に債務の不履行があるときは、違約金を支払わなければならない旨が規定されています。
売買契約書において、このような規定が置かれている以上、私は、期限までに手付金を支払わなければ、債務不履行責任を負い、違約金を支払う必要があるのでしょうか。
【回答】売主である宅建業者が保全措置を取らないことを理由として、買主が手付金等を支払わない場合には、売主は買主に対し、債務不履行責任を追及することはできません。
「2(1)保全措置が不要な場合」において後述する各事項に当たらなければ、売主が宅建業者であれば、手付金等の保全措置を取る必要があります。
そして、売主となる宅建業者が保全措置を講じない場合には、買主は手付金等を支払わないことができます(宅建業法41条4項、同法41条の2第5項)。
宅建業者が保全措置を講じないことを理由として、買主が手付金等を支払わない場合には、売主は買主に対し、債務不履行責任を追及したり、違約金を請求したりすることができません。
手付金について詳しく知りたい方は「不動産売買における手付金とは?手付解除の注意点を弁護士が解説」をご参考ください。
手付金等(※1)の保全措置の制度は、宅建業者が土地・建物の売主となる場合に適用されます。
対象不動産の工事完成や引渡し前に、売主である宅建業者が倒産する等した場合、買主は物件を取得できないのみならず、宅建業者に支払った手付金等が戻ってこないリスクを負うことになってしまいます。
また、専門家である宅建業者と買主となる一般消費者との間には、知識の差があり、専門家ではない買主を保護する必要があります。
そこで、宅建業法は、宅建業者が売主である場合の手付金や内金について、保全措置を講ずる義務を宅建業者に課しています(宅建業法41条、同法41条の2)。
なお、この手付金等の保全措置は、あくまでも専門家ではない買主を保護する措置のため、売主と買主の双方が宅建業者である場合には、適用されません。
※1 保全が必要となる「手付金等」は、①代金の全部または一部として授受される金銭、および手付金その他の名義をもって授受される金銭で代金に充当されるものであって、②契約締結の日以後、目的物の引き渡し前に支払われるものをいいます。
これらを満たすと、「中間金」、「内金」等の名目のいかんにかかわらず、保全措置が必要となります。
次に、手付金等の保全措置が必要な場合と不要な場合について、簡単にご説明いたします。
売主が宅建業者である場合でも、以下に該当するときは、手付金等の保全が不要です。
ア 工事完成前(※2)の物件について、以下のいずれかに該当する場合
イ 工事完成後(※2)の物件について、以下のいずれかに該当する場合
※2 工事完成前か工事完成後であるかを決定する時期は、売買契約時になります。
(1)の不要な場合における手付金等の限度を超えているときは、手付金等の保全が必要になります。
手付金等を保全する方法としては、
の3種類があります。
売主が銀行等と保証委託契約を結び、保証書を買主に渡します。
売主が保険会社と保証保険契約を結び、保険証券を買主に渡します。
売主が国土交通大臣が指定する保管機関と手付金等の寄託契約を結び、その寄託金返還請求権に質権を設定します。
手付金等の保全措置が必要な売買契約である場合であるにもかかわらず、売主となる宅建業者が保全措置を講じない場合には、買主は手付金等を支払わないことができます(宅建業法41条4項、同法41条の2第5項)。
そして、宅建業者が保全措置を講じていないことを理由として、買主が手付金等を支払わない場合には、売主は買主に対し、債務不履行責任を追及したり、違約金を請求したり、売買契約を解除したりすることはできません。
なお、一般消費者の方は、手付金等の保全措置があることをご存じでないことも多いと思います。
宅建業者は、重要事項説明の際、手付金等の保全措置の概要について、書面に記載した上で、説明する義務を負っています(宅建業法31条1項10号)。
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