コラム Column
弁護士(東京弁護士会)。慶應義塾大学法科大学院修了。
不動産トラブルに関する業務、家族信託・遺言作成業務などをはじめとする多岐の分野に携わる。
【相談】レンタルスペース(シェアオフィス)の場合には、賃貸借契約は必要でしょうか?また借地借家法の適用を受けないのでしょうか。
私は、ビル1棟を所有していますが、空室があるフロアが目立ってきたため、最近、よく見かけるシェアオフィスとしてスペース貸しをすることを考えています。
しかし、ワンフロア全体を借りてくれるテナントが見つかったときには、スペース貸しをしている賃借人には出ていってもらいたいとも考えています。
スペース貸しの場合には、借地借家法の適用を受けず、賃借人に対し明渡しを容易に求めることができると考えて問題ないでしょうか。
【回答】個室形式の場合などには、賃貸借契約が必要で借地借家法が適用される可能性があります。
どのようなスペースを貸し出すかにより変わりますので、注意が必要です。
貸し出すスペースの物理的構造により、借地借家法の適用のある賃貸借契約に該当するかどうかが決まります。
完全な個室ではないブース形式の場合、賃貸借契約という契約形態を取らず、利用権を設定する等の契約形態を取ることで問題ありません。
しかし、個室形式の場合、借地借家法上の「建物」(借地借家法第3章)と解され得、借地借家法が適用され得ます。
借地借家法が適用されると、契約を更新しない場合や解除する場合には、一定の期間の猶予をもって賃借人に対しその旨を通知する必要があり、また、更新拒絶又は解除について正当事由を備えていることを要します(借地借家法第28条)。
なお、正当事由の有無は、賃貸人が建物を使用する必要性、賃借人が建物を使用する必要性、建物の利用状況、建物の現況等の事情を総合的に考慮して判断されます。
本件でも、貸し出すスペースが、借地借家法において保護される「建物」といえるかどうかが問題となります。
この点について、東京地裁平成26年11月11日判決が参考になります。
この判決では、「建物の一部であっても、障壁その他によって他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するもの」は借地借家法の「建物」であるとしています。
この裁判例の具体的内容を見ると、「本区画は、面積3.5平方メートルと狭小とはいえ、四方を天井まで隙間のない障壁で囲まれ、共用スペースとは鍵付きのドアによって区画されており、ドアを開けなければ共用スペースから本件区画内部の様子をうかがうことができない構造になっていることが認められるから、本件区画は障壁その他によって他の部分と区画された独占的支配が可能な構造・規模を有するものであり、借地借家法第3章にいう「建物」に該当する。」と判断しています。
仮に、契約書において、単なる「スペース貸し」などと銘打っていても、対象のスペースが、①障壁その他によって、他の部分と客観的に明白に区画されており、②独立的排他的な支配を可能とする構造を有している場合には、借地借家法が適用されることになり、容易には明渡しを求めることができなくなります。
ご留意くださいますようお願いいたします。
もし賃貸借契約に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします。
当サイトでは無料で弁護士などの専門家に相談することができますので、もしお困りの際は是非ともご利用ください。
無料会員登録はこちらから。
不動産投資DOJOでは、弁護士や税理士などの専門家に無料相談可能です。
専門家からの回答率は94%以上。
会員登録(無料)で、どなたでもご利用いただけます。
会員登録(無料)していただいた方には、「不動産投資を学べるeBook」のプレゼント特典もあります。ぜひご登録ください。
「人生を変える不動産投資を学べる堀塾を運営しています。不動産投資を学びたいのなら、ぜひご検討ください。
体験セミナーを募集中です。」
体験セミナー詳細はこちら
宮川 敦子さんのバックナンバー
▶宮川 敦子さんのコラムをもっと見る