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賃貸入居者の故意過失による損傷は原状回復費用として請求できるか


ごく稀にですが、明らかに不自然な損傷を残して退去する入居者もいます。入居者の故意や過失で物件に損傷を残した場合、原状回復として修繕費を負担してもらえる場合があります。

今回は、入居者の故意・過失による損傷による考え方について、修繕費を請求できるケースや請求方法についてご説明します。

 

賃貸入居者の故意過失による損傷には原状回復費用として請求が可能

まず、入居者の故意・過失による物件の損傷には原状回復費用として修繕費を入居者に負担してもらうことができます。

『故意』『過失』とは反対の意味で生じる損傷は、『通常使用で考えられる範囲内』と『経年劣化』です。

 

  • 故意・過失=入居者負担も可能
  • 通常使用・経年劣化=原則オーナー負担

 

上のように、故意や過失による損傷は入居者に負担してもらうことができますが、長年住み続けたことによる経年劣化などでは、オーナー負担となることがほとんどです。

 

『故意・過失』と『通常使用・経年劣化』の判断基準

修繕箇所 故意・過失 通常使用・経年劣化
・手入れ不足による汚れ(飲み物をこぼして放置する/土足で過ごすなど) ・家具の設置などによる床のへこみ
・手入不足による汚れ
・下地ボードを変えるほどの穴(ネジなど)
・日焼けや変色
・下地ボードを変えない程度の穴(画鋲など)
水回り ・過失による給湯器などの故障
・通常使用の範囲を超えるカビや汚れなど
・経年劣化による故障
・通常使用で想定される程度のカビなど

 

過失による損傷と通常使用・経年劣化の損傷では判断が付きにくいものがあります。上の例を参考にしてみてください。

例えば、10年以上使われていたエアコンが退去時に壊れていたのであれば、経年劣化によるものと考えられます(エアコンの耐用年数は10年とされています)。一方、新しく取り付けたばかりのエアコンが壊れていたようであれば、掃除の際に壊したなど過失の疑いも出てきます。

 

原状回復費用は多くても家賃2~3ヵ月分

いくら入居者に原状回復費用を負担してもらえるからといって、いくらでも請求できるわけではありません。

原状回復費用の相場は多くても家賃2~3ヵ月分で、それ以上になると、消費者契約法によって無効になるケースが考えられます。

 

原状回復費用として請求できるのは損傷がある部分のみ

また、入居者の故意・過失によってできた損傷がある部分以外の原状回復費用を入居者に請求することはできません。

例えば、入居者によって穴が空けられたられた壁を張り替えたついでに他の面の壁も張り替えたのであれば、他の壁張り替えはオーナー負担となります。

 

賃貸入居者による損傷を原状回復として負担してもらうためにやるべきこと

このように、入居者の損傷には原状回復費用として請求することも可能です。

しかし、国民生活センターによると、毎年13,000件程度の敷金や原状回復に関する相談が寄せられています。

入居者も原状回復や敷金返還については敏感になっており、きちんとした手順を取っていないと、後々トラブルに発展することも考えられます。

 

こちらでは、入居者による損傷を原状回復として請求するためにやっておくべきことをご説明します。

 

入居時の契約書での明記と説明

まず、入居時には賃貸借契約書の中で、原状回復義務や特約などの費用負担についても明記し、きちんと説明を行っておきましょう。ここで同意を得たのであれば、きちんと署名捺印も貰っておきます。

入居時の説明や同意の署名捺印を怠ると、原状回復の請求が認められない事態にもなり得ます。

入居時の準備・説明が不十分で、すでに退去時に「原状回復の費用負担はどうするか?」と決めるべき段階にある方は、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

 

入居前・退去時の損傷の確認と証拠の確保

入退去時には、必ず物件の状態を確認して、損傷があるようでしたらきちんと写真に残しておきましょう。

また、入居時には入居者にも物件の状態をひと通り確認してもらい、書面等で損傷や不具合などが無いかどうかの記録を残しておきます。これによって「元からあった傷だ」などと言い逃れられることを防ぎます。

 

賃貸入居者に原状回復として損傷の負担をさせる時の注意点

上記で国民生活センターにも敷金や原状回復トラブルとして多くの相談がされているとお伝えしたように、原状回復費用を巡ってはトラブルに発展するケースも少なくありません。

こちらでは、原状回復費用を請求する時に注意するポイントをご紹介します。

 

トラブルに発展するケースも

原状回復費用は、通常は預かっている敷金から費用を補てんします。しかし、敷金から原状回復費用を差し引いたことで、「納得できない」などと敷金返還請求をされることがあります。

場合によっては少額訴訟を起こされるケースもありますので、上記でお伝えした賃貸借契約書と原状回復に関する同意の署名捺印、原状回復費用として実際にかかった内訳や見積りなどをしっかり手元に残しておきましょう。

関連記事:敷金充当・敷金返還請求権の発生時期を弁護士が解説

 

応じない場合はこちらからの法的手続きも取れる

敷金だけでは原状回復費用が賄えないような損傷がある場合、別途入居者に請求することも可能です。ただし、素直に請求に応じてくれない場合も考えられます。

入居者が支払いに応じない場合は、こちらから少額訴訟を申立て、審判によって決めてもらうことができます。

裁判所に「入居者が支払う義務がある」と判断してもらえれば、強制執行手続き(差押え)も可能になります。どうしても原状回復費用を支払ってほしい場合の手段として覚えておきましょう。

もちろんこの場合も裁判所を介した手続きになりますので、賃貸契約書や同意の内容、修繕の内訳などの証拠を揃えておく必要があります。

 

賃貸入居者の故意過失による損傷についてのまとめ

入居者の故意・過失による損傷は原状回復費用として請求することが可能です。ただし、後々のトラブルを防ぐためにも、契約書での明記と説明が必要です。

通常は敷金から差し引く形になりますが、入居者から敷金返還請求をされることもありますし、相手が請求に応じないケースも出てきます。

このようなトラブルに発展するケースもありますので、賃貸借契約書、同意のサイン、原状回復費用の内訳や見積りなど、証拠として残せるものはきちんと保管しておくようにしましょう。

もし原状回復に関連したトラブルなどに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします

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